iCHi's diary~本は読みたし、はかどらず~

主に読書録。読み終えた本がこのまま砂のように忘却の彼方に忘れ去られるのが申し訳ないので、書き留める。要は忘れっぽい読者の読書日記。

2024-09-01から1ヶ月間の記事一覧

「満潮に乗って」

アガサ・クリスティの「満潮に乗って」を読んだ。 クリスティのタイトルの中ではあまり有名な話ではないとおもうが、しびれるくらい大どんでん返しだった。 相変わらず、最も犯人っぽくない犯人だったがとみせかけて、そのさらに裏をかく、みたいな。 とにか…

「ツミデミック」

直木賞受賞、一穂ミチの「ツミデミック」を読んだ。 面白かったーーー!さすが。 物語は独立した5つの話からなる短編集だが、すべての話には「コロナ禍、パンデミックで人生を狂わせられた人」というテーマが根底にあって、タイトルのツミデミックは「罪✕パ…

夢野久作の世界感を頑張って閉じ込めようとした漫画「脳Rギュル」

佐藤大のコミック「脳Rギュル」を読んだ。(ノアール)と読むらしい。 先日古本屋で出会ったこの漫画。いつもならあまり手を出さない系のコミックだが原作夢野久作、を見て購入。 古典作品のコミカライズって大好きなんよ。 どうやら、夢野久作の「人間レコ…

「悟浄出立」いつまでも脇役と思うなよ。

万城目学の「悟浄出立」を読んだ。 期待していたぶっ飛びファンタジーかと思いきや、中国古典を題材にした4つの短編集。そのどれも、今まで脇役だったものを中心に据えた物語。 意外、でも読みやすかった。 目次 悟净出立趙雲西航虞姫寂静法家孤憤父司馬遷 …

「強制除霊師・斎 (14) 消された陵」怖い話を嗜むのがオトナ

小林薫(監修・斎(いつき))の漫画、「強制除霊師・斎 (14) 消された陵 (あなたが体験した怖い話) 」を読んだ。 オカルト好きが高じてたまにこういう漫画を読むのだが、このシリーズはなかでも私のお気に入りだ。 推し霊能者の斎さんが相談を受けた心霊…

猫にマウスを枕にされた

お陰で今日はブログが更新できないかもしれない。 まいったなあ。なんてったてうちの猫は神ネコ、じゃなくて噛むネコなんだよなぁ。 今朝なんて目覚ましが鳴る10分前から酷く噛みおる。 布団にくるまって攻撃を避けるのだが、本気のココホレニャンニャンぷり…

「准教授・高槻彰良の推察」都市伝説の謎を解くイケメン准教授

澤村御影の「准教授・高槻彰良の推察」を読んだ。 そもそも、ドラマ化されているのを軽い気持ちで見て、(それはそんなに面白くはなかったのだが)気がついたら意識にある時間ずっと「准教授・高槻彰良シリーズ」をゴリゴリ消化中。(ただいま全10巻中7巻目…

「青い壺」親子、嫁姑、夫婦。関係のあるところに物語あり。

なんか、リバイバルブームが来ている?書店で度々見かけるので読んでみた。 物語は、駆け出しの陶芸家が思わぬ良い出来の青磁の壺と作ったところから始まる。 この青い壺がまさしく「数奇な縁」でいろんな家庭を渡り歩くのだが、行く先々での物語が不連続に…

「自分とか、ないから。 教養としての東洋哲学」なんも悩まなくていいのだ

しんめいPの「自分とか、ないから。 教養としての東洋哲学」をよんだ。 「神童と呼ばれ東大を卒業したが、自分でもびっくりするくらい仕事ができず、離島教育を志すも挫折、芸人になろうとするも挫折、離婚、実家に戻って引きこもり中」のしんめいP。 凡人が…

「闇をわたる:警視庁特別対策捜査官」

堂場瞬一のAudibleオリジナル作品「闇をわたる:警視庁特別対策捜査官」を読んだ。 朗読は谷山紀章だ。(私知らなかったのだが、大人気の声優さんらしい。文豪ストレイドッグスで中原中也役をしている人とのこと) 確かに良い声だったが、Audibleの読み上げ…

「淋しい夜にはペンを持て」孤独な夜に立ち向かう本

古賀史健 の「淋しい夜にはペンを持て」を読んだ。 最初の1/3は、ちょっと幼稚な感じがして読むのやめちゃおうかな、ともおもっていたのだが、だんだんと、あ、これはこども向けではあるけどかなり的をいた文章術の本だとわかってからは、ぐっと興味が出てき…

「朝日新聞ウェブ記者のスマホで「読まれる」「つながる」文章術」

「朝日新聞ウェブ記者のスマホで「読まれる」「つながる」文章術」を読んだ。 いわば、ネットで文章を発信し続けたプロ中のプロが書いた文章術の本。 私の「正しい」と思っていたお作法が結構古くなっていることを知りびっくりだった。 例えば、私が正しいと…

「プロジェクト・ヘイル・メアリー」胸が熱くなるSF

アンディウィアーの「プロジェクト・ヘイル・メアリー」を読んだ。 Audibleでリリースされたときから目をつけていたのだが、上下巻(そう読み上げ時間が20時間超え)に恐れをなして躊躇していた。 ちなみに、Audibleでは読み上げ時間が10時間を超えるとファ…

Audibleで聞ける小泉八雲三選

今日は満月。中秋の名月は昨日だが満月は今日らしい。 残念ながら雲に隠れて見えないが、この季節の月はチーズのように黄色のはなぜだろう。 今日は趣向を変えて読み聞かせてもらえる怪談の魅力を伝えたい。 茶碗の中 ナレーター:鬼城院護 強そうな名前のナ…

「きのうの影踏み」ホラーとファンタジーの境界線

辻村深月の「きのうの影踏み」を読んだ。 実話系怪談風創作ファンタジー?で読みやすかった。 全部の話ではないけれど、作中で、辻村さん本人が登場し、妊娠出産そしてこどもが幼稚園へ入った話などが語られていて、実話っぽさが強調される。 特に、夜中に目…

「笑うマトリョーシカ」若き官房長官は傀儡なのか?

初読みの作家、早見和真の「笑うマトリョーシカ」を読んだ。 今までにあまり読んだことのないジャンル(政治とジャーナリズム)の話だったが、とっつきにくいなんてこともなく一気に読んだ。 物語は若くして官房長官にまで上り詰めた「清家一郎」という男は…

「夫婦善哉」夫婦って本人達にしか分からん

織田作之助の「夫婦善哉(めおとぜんざい)」を読んだ。 織田作之助、名前だけは知っていた(文ストで)が初めて読んだ。そして、本当にお恥ずかしいことに「ふうふぜんざい」と読んでいた。 途中、このタイトルの意味はなんだろうねぇ、善哉って私達が食べ…

「わたしは孤独な星のように」本人朗読で光る作品

池澤春菜の「わたしは孤独な星のように」を読んだ。 前から、「池澤夏樹の娘」で「SFクラブの会長」で「声優」となんだか才気の塊みたいな人やなと思っていたが、実際にこの人が書いた本を読むのは初めて。 アマゾンでもタイトルリストがでていなかったので…

「魂婚心中」SFなんだ!?

芦沢央の「魂婚心中」を読んだ。 まさかのSFだった。いや、(イヤ)ミステリー作家の印象が強かったからさ・・・ 本人もあとがきで「私がSF書いていいんですか」と書いていたけど、ちゃんとSFだったし、スリリングな展開はさすがという感じ。 SFと言っても宇…

「団地のふたり」令和の中の昭和のオアシス

なんともいえぬほんわかした話で、ある意味理想郷を描いた作品。藤野千代の「団地のふたり」を読んだ。 「団地のふたり」の二人は、ジャスト団塊ジュニアで私も同世代。 最初から最後まで事件らしい事件もなく(あるとすれば5日で仲直りする喧嘩くらいか)仲…

「一生頭がよくなり続ける もっとすごい脳の使い方」よく寝て動け!

一万人以上の脳を見た作者加藤俊徳が書いた「一生頭がよくなり続ける もっとすごい脳の使い方」を読んだ。 以前読んだ、一生頭が良くなり続けるすごい脳の使い方の続編だ。 表紙が、オレンジになって更に煽ってきている。 ichi-z.com 前回読んだときも驚いた…

「刑事何森孤高の相貌」なに森じゃなくいず森です!

初読みの作家、丸山正樹の「刑事何森孤高の相貌」を読んだ。 なにもり、ではなく、いずもりと読ませる孤高の刑事が活躍する連作短編ミステリ。 おふざけ要素なしハードボイルドな警察小説だ。 孤高すぎて、回を重ねるごとにどんどん降格されてゆく主人公。 …

「天駆せよ法勝寺」仏教スペースオペラ!?

八島 游舷の「天駆せよ法勝寺」を読んだ。 あらすじをみて、まず「仏教スペースオペラ」!?とびっくりするとおもうが、確かにスペースオペラだった。 SFと仏教の組み合わせを考えついた時点でもう優勝って気もする。 物語は、仏教が世界を席巻している未来…

「好きを言語化する技術」ありきたりに逃げるな!

三宅香帆の「好きを言語化する技術」を読んだ。サブタイトルは「推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない 」だ。 わかっかる~。 私のブログも自分の読んだ本を、つらつらとおすすめする文章だけど、書けば書くほど「よかった」とか「すご…

「偉大なる、しゅららぼん」龍の声が聞こえる姉弟

万城目学の「偉大なる、しゅららぼん」を読んだ。 案に違わず大変「万城目学」らしい、大ぼらスペクタクルファンタジーだ。 映画化されているので、ご存知の方も多いだろう。 私も、「濱田岳」が赤い学ランを着て出演していることだけは知っていた。 琵琶湖…

「サンギータ」

アマサワ トキオの創元SF短編賞受賞作、「サンギータ」を読んだ。 イラストに惹かれて読んだがSFのようなファンタジー古代ロマンのような(実際には近未来が舞台だけど)壮大な話だった。 最初のうちはちょっと硬めでとっつきにくいかな?と思ったけど、無免…

「吉田同名」吉田による吉田のための吉田同盟の設立

石川宗生の「吉田同名」を読んだ。 大真面目に無骨な文章でふざける「大人の本気」みたいな小説で、読んでる間中ちょっとニヤニヤしてしまった。 筒井康隆っぽいと思ったらやっぱりレビューに同じようなことを思った人がいてもうひとニヤリだ。 筒井康隆っぽ…

「地面師」ドラマみたいなノンフィクション

森功の「地面師」を読んだ。 ほんとにこんな話あるの?え?ドラマじゃなくてノンフィクションだよね? と耳を疑う話だった。 最近私の会社では異常に地面師が流行っている。 どうやらネットフィリックスでドラマがあってるみたいで、面白くて一気に観た派と…

「杉の柩」ポアロの友だちには泥棒がいるらしい

アガサ・クリスティの「杉の柩」を読んだ。 エルキュール・ポアロが最後の最後に華麗に解き明かした犯人はまさかのあの人。 全く予想していなかった人物がまたしても犯人なんだけど、とは言え既視感もある。 これとかね。とは言え結局毎回騙されるんだけどね…

「忠五郎の話」小泉八雲のイヤミスならぬイヤ怪談

小泉八雲の「忠五郎の話」を読んだ。 とても短い話だ。忠五郎ったらかわいそうに。 美しい女の魔物に魅入られて死んでしまうのだが、正体ががっかりすぎるのである。 特筆すべきは、女に連れて行かれる場所が「水の中」であるところ。 水の中なのに苦しくも…