石川宗生の「吉田同名」を読んだ。
大真面目に無骨な文章でふざける「大人の本気」みたいな小説で、読んでる間中ちょっとニヤニヤしてしまった。
筒井康隆っぽいと思ったらやっぱりレビューに同じようなことを思った人がいてもうひとニヤリだ。
筒井康隆っぽいけど、もうひとつ思ったのは「とり・みき」っぽいなと。
全然にうまく生成できなかったが、こういうシーンがあるのだ。
とり・みきの画風で脳内再生成お願いします。
ある晩帰宅途中におもむろに増殖した「吉田大輔氏」。
その数は2万人に近くまで膨れ上がり、とうとう自衛隊が出動して同氏を廃ホテルや廃病院などに分散して「収容」することになる。
吉田大輔達は、最初は互いに喋ることもなくひたすらシーンとしていたが、原因も分からずに狭い空間に押し込められ食料や防寒具なども不足しストレスの極みでとうとう、爆発。その後は協調して「社会活動」が開始する。
同じ吉田同士ではあるが、スポーツやゲームで競ったりするうちに、リーダー的存在が出来上がり、最終的には自分たちだけの「言語」作り上げ、極限まで無駄を省いた会話ができるようになる。
上のイラストは、防寒具が不足しすぎてとうとう、マットレスを分解して中の綿を掻き出し、それにくるまり互いにまりものように固まって暖を取りはじめるている様子だ。
まるで、自己が溶け出し、わたしは全体。全体はわたし。のようになるのがある意味「幼年期の終わり」ぽくもある。
最後はどうなるか、めっちゃ気になるでしょ?ぜひお読みください。
じつは、明言されていないんだよね。どうなるんだろうこの吉田の塊。
いっそ作者の名前も吉田大輔にしたら良かったのに。
吉田大輔氏は、一瞬にして19329人となった。
第7回創元SF短編賞受賞、稀代のスラップスティック思弁SF。
「20XX年○月△日19時頃、夏の宵闇垂れ込めるS市K町4丁目の通りで多数の住民が暗色の奔流を目撃した」――3年前、会社から帰宅途中の吉田大輔氏(30代、妻と男子ひとり)は、降りた駅から自宅玄関までのあいだで一瞬にして19329人となった。全員が寸分違わぬ吉田大輔氏その人である。瞬く間に報道され様々な考察がなされるが、もちろん原因は分からず対処のしようもない。200~600人ずつに分けて吉田大輔氏が収容された先は計6県の人里離れた廃病院、廃旅館など。隔離された環境下で果たして吉田大輔氏たちは……。応募総数464作から大森望、日下三蔵、山本弘ら3選考委員全員が絶賛し選出した、稀代のスラップスティック思弁SF。第7回創元SF短編賞受賞作。
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とり・みき自体がSFと親和性が高いのか、ぽん!(膝を打つ音)