iCHi's diary~本は読みたし、はかどらず~

主に忘れっぽい私の読書録。最近はもっぱらAudibleで聞く読書

2025-03-01から1ヶ月間の記事一覧

「出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと」

花田菜々子の「出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと」を読んだ。 離婚前に家を飛び出しどん底だった著者が、実際にやった武者修行の記録。 タイトルから鼻の下を伸ばした方、眉をひそめた方、色々いそうだけ…

「時をかけるゆとり」大学生の日常と成長を綴った爆笑エッセイ

朝井リョウの「時をかけるゆとり」を読んだ。 史上最年少で直木賞を受賞した朝井リョウは、エッセイもまた名手である。 エッセイは、ゆとり三部作と呼ばれ、以下の通り3冊刊行されている。 時系列的に読みたいならこの順番で。 時をかけるゆとり(2012年刊行…

「夏期限定トロピカルパフェ事件」小市民という言葉に隠れたトゲが…

米澤穂信のの「夏限定トロピカルパフェ事件」を読んだ。 甘い感じのタイトルに反して、わりとシリアスな物語。 春限定いちごタルト事件のときののどかさに比べてしっかり刑事事件が絡んできている。 最初の話こそ小佐内さんより1つ多くケーキを食べちゃった…

本日は手術のためお休み

一年前に骨折した手首の鉄板を外す手術。 あらかじめ医師にマーキングをされたが、そんなにゴロゴロ腕を並べてやるわけじゃあるまいし、 あ、これは明日の腕だ、あっぶねーみたいな展開があるのか? ちなみに、左側には明日針を刺す場所にバッテン入れられた…

「ショートケーキ」は日本発祥

坂木司の「ショートケーキ」を読んだ。 いちごがちょこんと乗ったショートケーキを軸にした、連作短編集だ。 読めば読むほど、ケーキが食べたくなる大変罪作りな本だった。 そして、あの見るからに洋風のお菓子は、日本発祥のスイーツらしい。 あんぱんやカ…

お勝手のあん

柴田よしきの「お勝手のあん」を読んだ。 あれ?この人ミステリー作家のイメージだったけど、と思って調べてみたら過去作品がめちゃくちゃあった。筆が早いタイプの作家さんなのか? 確か昔読んだ気がするーとずっと作品リストを追っていたた「猫探偵シリー…

「私はチクワに殺されます」オンリーワンな作品

五条 紀夫 の「私はチクワに殺されます」を読んだ。 「前代未聞のチクワサスペンス」と銘打たれたこの物語は、序盤こそ荒唐無稽なホラー(というよりホラ話)かと思いきや中盤でミステリ要素が加わり、最後には再びホラーに戻るという不思議な構成の作品だっ…

「落ちぬ椿~上絵師 律の似面絵帖~」

知野みさきの「落ちぬ椿~上絵師 律の似面絵帖~」を読んだ。 初読みの作家さんだ。 タイトル通り、女ながらに上絵師として生きようとする律のお仕事小説。 絵がうまいことを見込まれて似顔絵(当時は似ヅラ絵とよんでいたみたい)を描く、という性質上、律…

「なめらかな世界と、その敵 」SF愛好者の試金石

伴名練の「なめらかな世界と、その敵 」を読んだ。 久しぶりに「少し不思議な話=SF」ではなく、スペースファンタジーの方の「しっかりしたSF」の傑作短編集だ。 表題作「なめらかな世界と、その敵」は誰もが自在に並行社会を飛び回ることができる世界。 嫌…

「世界の納豆をめぐる探検」納豆と私

高野秀行の「世界の納豆をめぐる探検」を読んだ。 子供向けの絵本、たくさんのふしぎ傑作選だ。 納豆を食べているのは日本人だけ?とまでは思ってなかったけど、よもやアフリカ大陸でも食べられているとは驚きだ。 そもそも、納豆についてそこまで深く考えた…

「Aではない君と」家族が加害者になったとき

薬丸岳の「Aではない君と」を読んだ。 少年犯罪とその更生をテーマにした骨太の物語だった。 この人の小説は「少年犯罪」という重厚なテーマが多そうで、心して読まないと沈んでしまいそうと、今まで手を出せなかった。 タイトルは、犯罪加害者の未成年の呼…

「うつくしが丘の不幸の家」びわが食べたい

町田そのこの「うつくしが丘の不幸の家」を読んだ。 陸の孤島と言われるほど辺鄙な場所にある新興住宅地「うつくしが丘」。 そこに建つ大きな枇杷の木を持つ家を中心にした連作短編集。 その家に住んだ数組の家族、を現在から未来へかけて追いかけていく構成…

「ゼロ時間へ」複雑すぎる人間関係、その先にあるもの

アガサ・クリスティーの「ゼロ時間へ」を読んだ。 物語の核となる老弁護士の言葉… 〝推理小説はいつも殺人が起きたところから始まるが、物語はその遥か前から始まっている。様々な要素が重なり合ってゼロ時間へ集約されるのだ…〟 最初に老弁護士がこう告げる…

「不思議な図書館」ドーナツしか頭に残らない

村上春樹の「不思議な図書館」を読んだ。 図書館に囚われてしまった少年の物語。 騙されて図書館の地下に閉じ込められるのだが、足枷をつけられてはいるものの、こじんまりした部屋に快適そうなベッド、揚げたてのドーナツ、 何より「本を読むだけ」の時間が…

このプリン、いま食べるか?ガマンするか?

柿内尚文のこのプリン、「いま食べるか?ガマンするか?」を読んだ。 美味しそうなプリンの表紙ばかりに目が行き.なかなかタイトルを覚えられない。 いつもお忙しく暮らしている我々のために書かれた時間術の本だ。 作者は、時間を4つに分類している。 幸福…

「今日もネコ様の圧が強い」ねこを崇めよ

うぐいす歌子の「今日もネコ様の圧が強い」を読んだ。 うちのコもキジネコなので「ひょっとしてグミ(うちのネコの名前)なのか?」をおもってしまう。 この人の絵柄は、漫画なのにちょっと日本画のようで風流だ。 人間は所詮ネコ様の下僕、ねこ様に使えるた…

「死ぬならば、死にたいときに」本当にそうですか?

辻堂ゆめの「死ぬならば、死にたいときに」を読んだ。 まるで藤子不二雄のSF短編みたいなお話。 サックっと読めてしまう長さだが、星新一ならこの5分の1の長さで同じようなものを書いたかもしれない。 安楽死をテーマにした少々ブラックなお話だ。 死ぬとき…

「三十の反撃」

ソン・ウォンビンの「三十の反撃」を読んだ。 本屋大賞翻訳小説部門第1位と聞いて、期待と読みこなせるかの不安をおぼえていたが、やっぱり本屋大賞って裏切らないなー タイトルの三十は年齢のこと。 二十代の後半に誰もが覚える、自分に対する期待と失望を…

「ころころ手鞠ずし 居酒屋ぜんや」江戸時代の一刻館かもしれない

坂井希久子の「ころころ手鞠ずし 居酒屋ぜんや」を読んだ。 シリーズ3巻目。ちょっとつかれた時に開くのがちょうどよい本。 若後家のお妙が営む居酒屋「ぜんや」 丁寧に作られた、ちょっと目新しい料理が美味しいのと、お妙の美しさで大繁盛している。 1話に…

「思い出トランプ」向田邦子の生活者としての視点

向田邦子の「思い出トランプ」を読んだ。 私はこの人のことをエッセイストだと思っていたのだが、脚本家というのが正しいらしい。流石にリアルタイムでは観ていないが「寺内貫太郎一家」などはうっすら覚えている。 どおりで、文章が映像的しかも昭和のドラ…

「ほどける骨折り球子」

長井短(ながいみじか)の「ほどける骨折り球子」を読んだ。 タイトルも著者名も表紙のイラストもすべて「なんだか普通じゃない感じ」だ。 初めて読む作者「長井短」はモデル、俳優、そしてエッセイや小説も書くマルチな才能が光る女性。筆名は落語の「長短…

「全員犯人、だけど被害者、しかも探偵」アクロバティックなミステリー

下村 敦史の「全員犯人、だけど被害者、しかも探偵」を読んだ。 そんなことありえない!と思ったけど、 なるほど、かなりアクロバチックだけどもこうすればありうるのか。 ただし、前提というのがかなり危ういので、これ、本当にみんな信じてしまってるのか…

「鏡は横にひび割れて」悪意なき親切が招く悲劇

アガサ・クリスティーの「鏡は横にひび割れて」を読んだ。 今回もアガサ・クリスティの術中にまんまとハマってしまった。 まさかあの人が犯人だったなんて…! この文句、クリスティの感想文で毎回書いている気がする。私の語彙力の問題もあるがそれほど彼女…

「新釈遠野物語」ホラ話が紡ぐ新たな民話

井上ひさしの「新釈遠野物語」を読んだ。 柳田國男の「遠野物語」をベースに、新しく井上ひさしが「ホラを吹いた」連作短編集だ。 いくつかの話はすぐに「遠野物語」をベースにしているとわかるが、最後まで元ネタがわからないものもある(もっとも、これは…

本屋パトロール紀伊國屋書店

久々の本屋パトロールに行ってきた。 紀伊國屋書店博多店 キノベスは紀伊國屋書店員の推薦によるベストテン。 第一位は、朝井リョウの生殖記。なかなかドキッとするタイトルだ。 生殖記 作者:朝井リョウ 小学館 Amazon 本屋大賞と結構重複していた。 あの手…

「カナダ金貨の謎」アリスと火村のミステリー放浪記

有栖川有栖の「カナダ金貨の謎」を読んだ。 記念すべき国名シリーズ第10弾とのことで、本家エラリークインを超えたそうな。 (実は本家はまだ読んだことがない) 表題作「カナダ金貨の謎」を含む、火村英生と有栖川有栖が登場する中短編が5つ収録されていい…

「仮面」ディスクレシアについて考えた

伊岡瞬の「仮面」を読んだ。初読みの作家さんだ。 ---人間をいたぶるのは以外に疲れる という独白をする犯人。サディスティクで最悪だ。 物語の中盤ですでに犯人は分かっているが、分かってからが長い。今度はなぜそんな犯罪を?がターケットになる。 意外と…

「モノグラム」

江戸川乱歩の「モノグラム」を読んだ。 失業中の栗原一蔵と田中三郎のふたりは 浅草公園で偶然隣り合わせる。 「どこかでお会いしたとはありませんか?」 なんだか見覚えがあるのだが、どうしてもどこであったか思い出せない。 思い出せないながらも喫茶店へ…

「なんかいやな感じ」平成を振り返ってみる

武田砂鉄の「なんかいやな感じ」を読んだ。 おもしろエッセイと思い込んでよんだら、案外硬派な内容で驚く。 令和になって振り返った、近未来ならぬ近過去としての「平成」に起こったことを自なりに振り返る内容。 私より10年年若い彼が「13歳の時、酒鬼薔薇…

「ダブルマザー」娘たちと母たち

辻堂ゆめの「ダブルマザー」を読んだ。 初読みの作家さんだが、恐ろしげな表紙にビビってしばらく手をつけられないでいた。 怖いけど最後は良い話だった、、、とみせかけてやっぱり怖い話だった。 あ、でも決してホラーではない。怨念や怪異などは出てこない…