iCHi's diary~本は読みたし、はかどらず~

主に忘れっぽい私の読書録。最近はもっぱらAudibleで聞く読書

2025-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『桐島、部活やめるってよ』17歳の息苦しさを見事に閉じ込めた作品

朝井 リョウ の「桐島、部活やめるってよ 」を読んだ。 17歳の真っ白いキャンバスを持った5人の高校生たちが、それぞれの視点で独白をつないでいく構成が絶妙だった。「桐島、部活やめるってよ」は、桐島という名前の存在が空白であることで、逆に彼の不在が…

「サロメの断頭台」大正時代の芸術家たち

夕木 春央の「サロメの断頭台」を読んだ。 読み終わってなお、なんと言ったらいいか書きあぐねたので、迷うことなくみんなのレビューを見る。 うわー、好きと嫌いが完全に二分割・・・しかし、「夕木 先生だから」とか「夕木作品なのに」的な言葉も目立つ。…

「孤独まんが」わかりやすい漫画ばかりではない。

山田 英生 編の「孤独まんが」を読んだ。 わかりやすい漫画ばかりではない。 どっちかというと、文学的というか、物語る漫画ばかりだ。 しかもこれは「孤独」をテーマに集められた漫画ばかり(でなんで私こんなの買ったんだろう) でも、1話目が「諸星大二郎…

『そうです、私が美容バカです。』美しさのためには多少の痛みなど気にするな

まんきつの『そうです、私が美容バカです。』を読んだ。 「まんきつ」……どこかで聞いたような?と思って調べてみたら、かつては「まんしゅうきつこ」というペンネームで活動していた方だった。ああ、なるほど。あの個性的な名前、記憶に残っていたわけだ。 …

『月の裏側』これはホラーかSFか

恩田陸の「月の裏側」を読んだ。 シリーズを逆流して読み、ようやく第1巻にたどり着いたわけだが、えーーーって感じ。 SFやん、ホラーやん!3作目の世界感と全く違う。 物語は、街全体を包み込むように忍び寄る正体不明の“何か”によって始まる。その“何か”は…

『一橋桐子(76)の犯罪日記』から考える“無敵の人”

原田ひ香 の「一橋桐子(76)の犯罪日記」を読んだ。 いやー、老人になるのが怖くなる本。 (おそらく、歳を取るのもそんなに悪くないよね、と伝えたいのだとは思うが・・・いやいや、これはもう、笑えない。 超がつくほどいい人そうな桐子(76)は、同居…

「デジタル原始人」カーラ先生のコミックエッセイ

川原泉✕福田素子の「デジタル原始人」を読んだ。 川原泉が大好きだ。大学時代からずっと愛読していて多分全部持っている。 唯一持っていなかったこの本をようやくゲット。 (最近寡作でとてもさみしい・・・新作でないかなー) 内容は、手首を骨折してしまい…

『憂鬱探偵』探偵なのにミステリーじゃない!?

田丸雅智の「憂鬱探偵」を読んだ。 タイトルも装丁も、ち素敵な一冊。 しかし中身はミステリーの皮をかぶった、なかなか風変わりなファンタジー短編集であ。 誰も死なないし、誰も傷つかない。けれど、心が温まるかというとそれもまた微妙。不思議な読後感が…

『不連続の世界』おじさんたちの絆

恩田陸の『不連続の世界』を読んだ。 「塚崎多聞シリーズ」の第2作である。……と自信をもって書けるのは、前回『珈琲怪談』を読んだときに「シリーズ第3作だった」と知ってショックを受けたからだ。 順番を無視してシリーズの途中から読み始めた挙句、今回は…

「まず良識をみじん切りにします」突き抜けた狂気と常識

浅倉秋成の「まず良識をみじん切りにします」を読んだ。 良識とか、常識とかを蔑ろにしていく過程が面白かった~まさしく最初に切り刻んじゃってるね!ちょっと、筒井康隆のSFを思わせるような突き抜けた不条理が最高。 5つの話が収められた短編集で、どれも…

塩田武士『踊りつかれて』正義とは何かを問う骨太社会派小説

塩田 武士の「踊りつかれて」を読んだ。 黒一色の表紙に「踊りつかれて」の文字だけが浮かぶデザイン。それが、逆に目を引く。中身の重さを予感させるような静かな迫力がある。 本作は2025年上半期の直木賞候補作。惜しくも受賞は逃したが、そのテーマ性と構…

「本なら売るほど」読みたい本リストが増える増える

児島青の「本なら売るほど」を読んだ。 若くして古本屋を営む青年の物語。 この時代に個人経営の古本屋を東京神田以外で回転するのはかなりのチャレンジだ。 本を愛する青年とそこにやってくるお客さんたちのエピソードが、麗しい絵で綴られうストーリー。 …

今日はデジタルデドックス

と言いつつスマホで更新してますが。 キャンプにきて、もはや缶ビールを開けてしまった。 楽しい!

梨氏が描くメタな世界「SCPって何ですか?」

梨 (著), 三山高 (著), ハチフン (著)の「SCPって何ですか?」を読んだ。 梨氏原作の漫画。(いつもは呼び捨てだが、梨だとなんだかわかんないのでね) なんとも説明がしづらいが、表紙に書かれているのが、登場人物の漫画家(の卵?)MとH。 黒髪のMはおそ…

境界線は冷たくない――『人間関係に「線を引く」レッスン』を読んで

藤野 智哉の「人間関係に「線を引く」レッスン 人生がラクになる「バウンダリー」の考え方」を読んだ。 「バウンダリー」という言葉を聞いたとき、正直最初はアーティスト名か新しいお笑いコンビかと思った。(Vaundyと混同) 本書で語られる「バウンダリー…

『ボタニストの殺人』英国ミステリの香りに酔う

M・W・クレイヴン の「ボタニストの殺人」を読んだ。 毒と皮肉の香りがただよう、心弾む英国ミステリー。 冒頭からして惹き込まれる。テレビ番組の収録中、女性蔑視発言で悪名高いコメンテーターがその場で毒殺されるのだ。誰もが見守る生放送中の事件、し…

「カラマーゾフの兄弟」1年3ヶ月かけて読了

ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」を読んだ。 いや~長かった。 調べてみると一年と3カ月かかっていた。 一応毎日読もうという目標を立てていたけど、途中でしばらく放置。 面白くてページをめくる手が止まらない、というより義務感で一日半ページ位…

『かわいそ笑』不誠実な語り手のせいで考察必須のホラー

梨 の「かわいそ笑」を読んだ。 読後にイヤー!と叫びたくなる一冊。 何が怖いって、読んだ自分も知らぬ間にこの呪術的な仕掛けに加担していたかもしれないという点だ。 そう、梨の「かわいそ笑」は、読む者の無意識をじわじわと巻き込み、読後になってよう…

『その噓を、なかったことには』どんでん返しの波状攻撃

水生大海 の「その噓を、なかったことには」を読んだ。 「どんでん返し」の爽快感を味わいたい読者にはたまらない、5つの短編が収められた一冊である。 ただし、甘いだけの展開では終わらない。最初の数話で「いい話かな?」と油断していると、後半でしっか…

龍神のすごい浄化法

SHINGOの「龍神のすごい浄化術 邪気すらスーッと消えていく!」を読んだ。 最近、龍にちょっとアンテナが立っている私。 友達がだんだんスピリチャルなことを言い出す、また、スピリチャルなことへの許容度が上がっている気がする。 これは私がそういう年齢…

爪切男『クラスメイトの女子、全員好きでした』にじみ出る優しさ

爪 切男の「クラスメイトの女子、全員好きでした 」を読んだ。 なんともパンチのあるタイトルだが、それ以上に気になるのが筆者の名前。 どうしてこんなペンネームにしたのか?爪 切男。爪さんと及びすれば良いらしい。 苗字なんだね。 このエッセイ集「クラ…

夏の終わりの本屋パトロール

博多駅近くの本屋「HMV&BOOKS HAKATA」をパトロール。 ここは、じわじわと本のスペースが縮小されCDやグッズなどの販売コーナが充実していく本屋。紙の本の苦境が目の当たりにされる。 若者が多いイメージ。 竹書房の怪談コーナー 怪談師ぁみと、声優井澤詩…

『朝が来る』奔放に生きられなかった少女の痛み

辻村深月の「朝が来る」を読んだ。 出だしから心をつかまれる。静かなのに、胸の内にざわざわと波紋が広がっていくような物語だ。「朝が来る」は、ミステリーのように緻密な構成を持ちながら、圧倒的に人間ドラマである。 物語の軸になるのは、子どもを授か…

「どうせそろそろ死ぬんだし」館ミステリとみせかけてからの~

香坂 鮪 の「どうせそろそろ死ぬんだし」を読んだ。 いやー面白かった!このミス大賞、ということでみんな期待値が高いのか、結構レビューでは辛辣なコメントもあったけど、私は大いに満足。 視点がくるくる変わる構成は、一見稚拙に見えるかもしれないが、…

「殺人事件に巻き込まれて走ってる場合では無いメロス」

五条 紀夫の「殺人事件に巻き込まれて走ってる場合では無いメロス」を読んだ。 恐れ多くも太宰治の走れメロスを下敷きにしたユーモアミステリーだ。 何が面白いって、古代ギリシャの人の名前がどうせ覚えられないだろうと言うことで、めちゃくちゃわかりやす…

『世界の一流は「休日」に何をしているのか』休日は戦略だ

越川 慎司 の「世界の一流は『休日』に何をしているのか」を読んだ。 「一流」とは、必ずしも四六時中働き詰めの人のことではない。むしろ、自分 のリズムで休み、充電し、パフォーマンスを高める術を知っている人こそが「一流」なのだそーだ。 著者・越川慎…

『まんまこと ああうれしい』麻之助、今日ものらりくらり

畠中 恵 のまんまことシリーズ「ああうれしい」を読んだ。 冒頭からして麻之助の語り口がイメージ通りで、思わずニヤリとさせられる。これはもうAudibleっしか勝たんと言っていい一冊だ。語りの力がキャラクターに命を吹き込むとはこのこと。 今回も麻之助が…

『咒の脳科学』言葉はまじない

中野信子の「咒(まじない)の脳科学」を読んだ。 「美人は得か?」という、昭和の喫茶店トークのようなテーマに、ガチの脳科学で切り込んでいくその姿勢にまず驚いた。 今や「見た目」や「ルッキズム」に関する発言は慎重さが求められる時代である。それで…

『ゴリラ裁判の日』ローズが教えてくれる“人間性”とは

須藤 古都離 の「ゴリラ裁判の日」を読んだ。 人間とはなにか。そんな根源的な問いに、真正面から、けれど決して重たすぎずに向き合わせてくれる一冊だった。 本作「ゴリラ裁判の日」は、手話を使い人間と会話ができるゴリラ、ローズ・ナックルウォーカーの…

『雨乞い庄右衛門』旧友・左馬介に名刀を渡す話

池波正太郎の「雨乞い庄右衛門(鬼平犯科帳より)」を読んだ。 読み疲れた夜や、長編小説の合間にちょっと何かを読みたくなることがある。 今回は、鬼平こと長谷川平蔵の出番が控えめで、その代わりに旧友の左馬介が大活躍する。渋くて骨太な物語の中に、旧…