なんか、リバイバルブームが来ている?書店で度々見かけるので読んでみた。
物語は、駆け出しの陶芸家が思わぬ良い出来の青磁の壺と作ったところから始まる。
この青い壺がまさしく「数奇な縁」でいろんな家庭を渡り歩くのだが、行く先々での物語が不連続に語られていく。
なにしろまだ、「値打ち」が決まっていないものだから
デパートで2万円(戦後の話なので今でいうと3.4倍のイメージなのか?)で売られ、贈られた先から知り合いの女性に譲られ、その女性は母親の目をなおしてくれた医者に「贈り」、医者は空き巣に盗まれ、京都の蚤の市で高齢の婦人がそれを「買って」孫に土産にし、孫は祖国に帰るスペイン人の尼僧に「プレセント」し、価値が分からずに売られ、海外旅行中の校名な美術評論家がみつけて「購入し」日本に持ち帰ってくる。
ああ、長い。そして、何が面白いのか説明できないのだが面白い。もちろん壺はなんにも喋らないのだけど、どんな家庭にも語るべき物語があるんだなぁと思う。
ワタシ的に2つ目の「デパートでこの壺を会社の上司に贈答用に購入する」家庭が大変面白かった。
勤続40年の旦那が定年退職で家に居続けるストレスにブチ切れ寸前の妻の話だ。
旦那が会社に行っているときは、昼ご飯は昨日の残りものか漬物で済ますことができたのに、一日3食全部ちゃんとしたものを作らねばならぬこのストレスよ!という話。
わかるわーーーー在宅勤務の昼ご飯なんて、9割納豆だもん。血液サラッサラよ。
卵とネギが加わったらおごちそうですよ。
だが人が増えたらそうはいかないもんね。毎日納豆は言い出しにくいかも知んない。この私ですら。
おまけにこの旦那、趣味の一つもないらしい。本も読まなきゃ将棋も囲碁も魚釣りも何一つしないらしい。もはや存在が軽いホラー。
あ、ついつい熱くなってしまったが、こんな感じで大きな事件はないけれど、それぞれの家庭が持ついろんな話が詰まっていて、気がついたらグイグイ引き込まれる。
不思議な感覚。
ちなみに、やっぱりAudibleで聞く読書だったのだがナレーター声がレトロなこの小説のイメージぴったりで、初手から思わず歓声を上げてしまった!ぶらぼー
読めばハマる有吉佐和子。幻の名作長篇
無名の陶芸家が生んだ青磁の壺が売られ贈られ盗まれ、十余年後に作者と再会した時——。人生の数奇な断面を描き出す名作、復刊!
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