iCHi's diary~本は読みたし、はかどらず~

主に忘れっぽい私の読書録。最近はもっぱらAudibleで聞く読書

2025-05-01から1ヶ月間の記事一覧

- 『アカシアの道』が描く、毒親とその呪縛

近藤ようこの「アカシアの道」を読んだ。 一言で言うと「怖い」本だった。 別にお化けや幽霊がでてくるわけではないこの話を、怖いと思う人がどのくらいいるのだろうか。 この話はまさにこじれににこじれた母と娘の物語で、母と息子であればこんなことにはな…

「藤子・F・不二雄トリビュート&原作アンソロジー F THE TRIBUTE」

「藤子・F・不二雄トリビュート&原作アンソロジー F THE TRIBUTE」を読んだ。 いやーよかった。悩んでたけどかってよかったわ。 Fの遺伝子(この言い方カッコいい!)を持つことを自認する漫画家達によるトリビュート作品。 トリビュートってなんだっけと思…

村上春樹の『カンガルー日和』と、100%の恋の行方

村上春樹の「カンガルー日和」を読んだ。 とてもおしゃれで都会的なショートストーリー(ただし80年代の) カッコいいんだけど油断するとついていけなくなる。 だってこんなセリフ吐くんだよ。 「私はただの形而上学的な足の裏をもったの女の子なの」 わかっ…

「こうの史代 鳥がとび、ウサギもはねて、花ゆれて、走ってこけて、長い道のり」

「こうの史代 鳥がとび、ウサギもはねて、花ゆれて、走ってこけて、長い道のり」を読んだ。 先日の「口訳古事記」介で紹介した「こうの史代」の資料集というか画業の記録。 デビュー前の可愛い絵柄の漫画(ちょっと手塚治虫っぽいところもあり)から、なかな…

ホラー×ミステリー!『撮ってはいけない家』を一気読み

矢樹純の「撮ってはいけない家」を読んだ。 めっちゃ空目(ご存じ?)で、矢追純一が書いた本だと勘違いして手に取る。UFOとかね、出てくると思ったんですよ。 久しぶりに見たなーとかね。(それもそのはず、現在89歳ですって) UFOは出てこなかったものの、…

「ジャパン・ホラーの現在地」知れば知るほど奥深い

吉田悠軌の「ジャパン・ホラーの現在地」を読んだ。 怪談、ホラーについてかなりアカデミックに(というか小難く)体系化して整理を試みた作品。 その知識の広さに圧倒される。 ホラーが好きでたまらない人たちが寄り集まってひたすら「これってあれだよね」…

「われは熊楠」その奇才と悲哀

岩井 圭也の「われは熊楠」を読んだ。 熊楠は若い頃、何度も脳症で寝込んだり、てんかんを起こしたりしていた。 自分の中に何人かの声がいたという描写もあり、もしかすると彼自身も統合失調症を患っていたのかもしれない。 頑固にも在野で研究活動を続けて…

「ねこおばあさんぼく」飼い方もアップデートしないとね

カメントツの「ねこおばあさんぼく」を読んだ。 猫好きねこ飼いのエッセイ漫画だ。 ある日半野良猫が自宅のベランダにあらわれて驚く作者。 ねこを保護し獣医に連れて行くなどしていたら、飼い主のおばあさんが見つかった。 だが、おばあさんのネコの飼い方…

「動く指」観察する人ミス・マープル

アガサ・クリスティーの「動く指」を読んだ。 ケガをして転地療養が必要になった青年バートンとその妹。 二人が静かな田舎でゆっくりするつもりでやってきた村では、陰湿な誹謗中傷の手紙が村中に撒き散らされ、ちっとものどかでも静かでもなかった。 好奇心…

「ヘルンとセツ」— 日本に魅せられた異邦人と強き武士の娘の絆

田渕 久美子の「ヘルンとセツ」を読んだ。 小泉八雲とその妻セツの物語。 次のNHKの朝ドラになるとかならないとか。(いやなるって書いてあった) そうでしょう、そうでしょう。なんかとても胸があたたかくなる展開であった。 明治になり、それまで裕福だっ…

「口訳 古事記」混乱もまた醍醐味

町田康の「口訳 古事記」を読んだ。 いやーめっさ面白かった。脳内が今町田康節に侵されている。 マジですか?マジです。 古事記、マンガ訳とが現代語訳とか色々あるので何度か読んでるんだけど、最初のイザナミ、イザナギの話から、アマテララスとスサノオ…

小泉八雲の「〇〇の話」3選

小泉八雲の「おかめの話」「お貞の話」「蝿のはなし」を読んだ。 どれも10分未満なのでなんとなく一気読み。 明日これを読むので予習。どうやら小泉八雲のお話らしい。 小泉八雲「おかめの話」 作者:小泉 八雲 Audible Amazon おかめの話は、タイトルのおか…

「俺の文章修行」町田康の熱量に圧倒される

町田康の「俺の文章修行」を読んだ。 なんとも勢いのある町田康らしさが爆発した「文章修行」。 簡単に「死ね」とか言っちゃうコンプラ無視の過激さ、でも熱い! 例えば、と紹介したいのに、どこを引用すればいいのか分からなくなる。 読んでも、町田康の劣…

「喪を明ける」哀しみを越えるということ

太田 忠司の「喪を明ける」を読んだ。 初読みの作家さんだが、勝手にミステリと思い決めて読み始める。 ・・・近未来SFだった。 おそらく、現代よりほんのちょっと未来の日本。 疫病、震災、それに連なる発電所の被災などで「東京に人が住めなく」なり、著し…

本屋パトロール「紀伊國屋書店本店」

地下一階から8階まで全て本で埋め尽くされた夢のような場所だった。 まずフロアガイドを見てどこから攻めるか考える。 今回は、下から攻めていくことに。 早速、化石コーナーが良すぎて時間を取られてしまう。 そう今回は1時間という制限時があるのだ。 こ…

「泣き童子」

宮部みゆきの「泣き童子」を読んだ。 読み出したら止まらないのでもはや迷惑だ。 今回も表題作泣き童子を含む6話が収められた短編集だ。 おちかが三島屋に来てもう一年。登場するキャラクターも増えて、ますます変わり百物語も繁盛している。 泣き童子の話が…

「千年後の世界」人工皮膚なら恥ずかしくない。のか?

海野十三の「千年後の世界」を読んだ。 昔の人が未来を描いたSFを読むの面白いよね。 何様のつもりって感じだけど そんな未来なのに、コンピュータから紙テープが出てくるんかーい!とツッコミしちゃう。 バックトゥザフューチャー、みたいに。 あれはなかな…

「本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む~走れメロス・一房の葡萄・杜子春・本棚」

かまど、 みくのしん の共著「本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む~走れメロス・一房の葡萄・杜子春・本棚」を読んだ。 ・・・ものすごくよかった。読書が趣味の人にはぜひぜひ手にとってほしい。今までにない読書の「ライブ」体験ができる。ホン…

「あんじゅう」すべすべでスカスカのおばけ

宮部みゆきの「あんじゅう」を読んだ。 あんじゅうは「暗獣」とでも当てるのだろう。 紫陽花屋敷に住むかわいい妖怪?だ。表紙に描かれているとおり、黒くてすべすべしていて、でも軽くて・・・まるで人が住まない屋敷に出るマックロクロスケをを大きくした…

「センス・オブ・ワンダー」自然との向き合い方

レイチェル・カーソンの遺作『センス・オブ・ワンダー』を読んだ。 彼女の名を聞いてすぐ思い浮かぶのは、環境問題への警鐘を鳴らした『沈黙の春』だ。大学の授業で「必読」と言われながらも、その重さに気後れして手に取ることができなかった記憶がある。 …

「ぼくらの to be continued」―有名人とは何かを考える

表紙に惹かれておおはらMEN の「ぼくらの to be continued」を読んだ。 おおはらMENとは、有名なゲーム配信者なのだそうだ。 全く予備知識がないし、ゲーム実況も見たこともないのだが、こどもに聞いたら有名な人だよと。 こんなふうに、ゲームをしたりライ…

「おそろし 三島屋変調百物語事始」

宮部みゆきの「おそろし 三島屋変調百物語事始」を読んだ。 三島屋百物語シリーズの最初の1巻、まさしく事始め。 このシリーズはずっと追いかけていたのだが最近オーディブルでも聞けるようになったので、最初から、と思って再読した。 アマゾンで開いたら「…

「神の豚」兄が豚になった?

溝渕久美子の「神の豚」を読んだ。 近未来?いや、未来とも言えない。むしろ、私たちが今住む世界の並行世界のような物語だった。 主人公の私は、アーガとダーガという二人の兄がいる。普段は別々に暮らしていたが、ある日突然「ダーガが豚になった」という…

黄土館の殺人ー推理のための物語

阿津川辰海の「黄土館の殺人」を読んだ。 館四重奏シリーズの第3弾、各巻は色にちなんだタイトルがついており、紅蓮(赤)、青海(青)と続いて、今作は黄土(黄色)となる。 次は何色かなー 紅蓮館の殺人が結構衝撃的で面白かったのだが、今回は地震による…

「よむよむかたる」こんなフレッシュな老人になりたい

朝倉 かすみ の「よむよむかたる」を読んだ。 超がつく高齢者たちの「読書会」に、都会から来た「デビュー後2冊めが続かない小説家」の若者が入会し、お互いによい影響を与え合い、奇跡のような空間を作り上げる物語。 読書会って一体どんなことをしているの…

「死に髪の棲む家」紙の本の醍醐味—帯の髪の毛にニヤリ

織部 泰助の「死に髪の棲む家」を読んだ。 先日、久しぶりに天神(福岡の中心地)の書店へ行くと、この本がやたらとおすすめされていた。 よくよく見ると、なんと著者はこの本屋で働く書店員さんとのこと。これは気になる。郷土の星と呼ぶにふさわしいではな…

『独裁者ですが、なにか?』独裁者の心を想像するというチャレンジ

荒木源 の「独裁者ですが、なにか?」を読んだ。 表紙を見れば一目瞭然だが、この小説は某国の独裁者が主人公の一人称物語である。 想像以上にクレバーで繊細な心を持つ金正恩を模した「ジョンウイン」。あえて変名にする必要がないほど、習近平やトランプ大…

「六色の蛹」色と謎が交差する、エリ沢泉の推理に惹かれる理由

櫻田智也の『六色の蛹』を読んだ。 去年の「このミステリーがすごい!」第10位にランクインしたこの本、タイトルの意味がとっつきにくく感じて後回しにしていた。(もちろん、読み終わった今ではこのタイトルこそがしっくりくるのだけれど!) 本作に登場す…

「蔦屋 」人と人とをつなぐプロデューサー

谷津矢車の『蔦屋』を読んだ。 今、NHKの大河ドラマで放映されている『べらぼう』の原作だ。とはいえ、私はドラマを見ていないので、熱く語ることはできない。(ただ、この小説とはずいぶん違うのではないかという気がする。なんだか、サラッとしすぎている…

「コワい話は≠くだけで。」ホラーモキュメンタリーという世界

景山 五月の「こわい話は聞くだけで」を読んだ。全三巻、完結まで読んだので感想を書こうと思う。 まず、仕掛けがすごいのよね~ それもそのはず、原作者に「梨」の文字が。 あらすじにあるように「巻き込み型ホラー」。 今流行りに流行っている「モキュメン…