iCHi's diary~本は読みたし、はかどらず~

主に忘れっぽい私の読書録。最近はもっぱらAudibleで聞く読書

2025-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『よって件のごとし 三島屋変調百物語八之続』耳で味わう怪異と人情の長編三本立て

おちかが嫁に行ってしまい、なんとなくやきもちを焼いていた小旦那・富次郎。そんな彼もようやく胸のつかえが取れ、おちかの夫・勘一とも以前のように付き合えるようになった――そんな変化が描かれる第八巻。 今回は「賽子と虻」「土鍋女房」「よって件のごと…

『二人の誘拐者』地に足のついた警察小説の醍醐味

翔田寛の「二人の誘拐者 日下警部補シリーズ」を読んだ。 今回も10年前に起こった犯罪の再捜査。 今回も、10年前に起こった犯罪の再捜査がテーマ。確か、前に読んだ『人さらい』も同じく過去の事件を掘り返す展開だった気がする……。 なぜにそこまで寄せたか…

「難問の多い料理店」──これは回答ではなく“解釈”です!?

結城真一郎の「難問の多い料理店」を読んだ。 ゴーストレストランのシェフが安楽椅子探偵として謎を解き明かす?そんな一風変わったミステリー。 ウーバーイーツならぬ「ビーバーイーツ」の配達員が集めてきた情報をもとに、シェフが事件の真相を解き明かす…

「魂手形 三島屋変調百物語七之続」

宮部みゆきの「魂手形 三島屋変調百物語七之続」を読んだ。 変わり百物語ももう7巻目になったのか~ 表題作「魂手形」の他にも「火焔太鼓」「一途の念」の3つの物語。 「火焔太鼓」は、火の神とされるUMAがでてくるのだけど、わたしのイメージでは、おじゃ…

メガネ壊れて我泣き濡れて寝る

さあてそろそろブログでも書くか。と寝転がっていた私が身を起こそうとしたら、お腹の下でパキッと破壊音。 なんとまあ、メガネをやってしまった。 外れたとかではなく根元で折れていますなぁ。 一応形ばかりのブログ毎日更新をしてふて寝します。 こんな日…

『ポトスライムの舟』と私が働く理由

津村記久子の『ポトスライムの舟』を読んだ。 ユーモアの底に、じっとりと怖さがへばりついているような作品だった。 主人公のナガセは、30歳目前の女性。多くは語られないが、新卒で就職した会社をパワハラで辞め、しばらくの休業を経て工場に勤務している…

『私とは何か ― 個人から分人へ』複数の私で、ちゃんと私になる

平野啓一郎のエッセー『私とは何か ― 個人から分人へ』を読んだ。 「分人」とは、「個人」の対義語のようなニュアンスを持つ、彼の造語である。最初は面食らったものの、読み終えた今では、腑に落ちた。 私たちはよく「本当の私」は内側にあって、対外的には…

「今夜すべてのバーで」ミルク・ストレート!

中島らもの『今夜すべてのバーで』を読んだ。 中島らものいまさらことを見直した。ずっと“サブカルの人”という漠然としたイメージしかなかったけれど、この作品はヒリヒリとした肌触りの私小説。 読んでいるうちに「ああ、これが“らもワールド”か」と腑に落…

「深淵のテレパス」理不尽で終わらないところが良き!

上條 一輝 の「深淵のテレパス」を読んだ。 「このホラーがすごい!2025年」で第1位に選ばれていたことを本屋で知り、これは読まねばと。 物語は、小気味よい先輩社員の晴子さんと、自己評価が低い「僕」、そしてやり手の営業部長・カレンさんの視点で交互に…

豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ

倉知淳の『豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件』を読んだ。 なんとも人を食ったタイトルである。 あっ、よく見たら——ただの白い表紙かと思いきや、豆腐の角にうっすら血糊が…やるな! 豆腐では凶器にならないはずだが、密室状態の部屋の中で男が死んでい…

「鬱ごはん6」ホラーにかじきり

施川ゆうきの「鬱ご飯」6を読んだ。 今回は鬱野さんが、創作怪談を書く回があったのだがそれをXに投稿してちょっとバズる。 「才能を感じる」というコメントをもらってニヤけるというシーンがあるのだが、人がものを作り始まる時ってこんな感じなのかなと思…

「影男」明智小五郎の盟友になりそう

江戸川乱歩の「影男」を読んだ。 読んだことがあるような、ないような、やっぱりあるような。 乱歩先生ったら、鏡の部屋とかパノラマの世界がお好きよね。 この作品は完全にエンタメ一直線。途中、迷走しているのかと思うほど影男のエピソー ドが続く。 けれ…

『幸せな人は知っている「人生を楽しむ」ための30法則』の教え、3日で忘れるけれど

小林正観 の「幸せな人は知っている「人生を楽しむ」ための30法則」を読んだ。 小林正観といえば、「掃除・笑い・感謝」が幸せを導くと説く『「そ・わ・か」の法則』で有名な人物だ。彼のプロフィールを見ると、「コンセプター」やESP研究いった肩書きが並び…

「ヒロイン」 彼女の選択と、切なさの連鎖

桜木 紫乃の「ヒロイン」を読んだ。 1995年に起こったオウム真理教事件を題材にしたフィクションだが、あ、あの人がモデルだなとわかる、そんな小説だった。 あの人、と言いつつ自信がなかったので調べた。そして、この人の年齢とか、無罪が確定していること…

『ほしとんで』最終巻まで読了!

本田の俳句マンガ「ほしとんで4巻5巻」を読んだ。 2020年に1巻をよんでからしばらく離脱していたが、ようやく最終巻まで読了。 俳句をメインテーマにした学園コメディ。とても珍しいんじゃないだろうか。 俳句というと、雅な世界をイメージしがちだが、本作…

映画化してほしい!「黒武御神火御殿 三島屋変調百物語六之続」

宮部みゆきの「黒武御神火御殿 三島屋変調百物語六之続 」を読んだ。 おちかからいとこの富次郎へと聞き手が代わり、語られる話の内容も変化してくる。「若い女の子には聞かせにくい」類の話も紛れ込み、百物語の場が少しずつ様変わりしていく様子が興味深い…

『ダンス』「いい30代だったんだね」

竹中優子の「ダンス」を読んだ。 新入社員の「私」が配属された5人の部署は、係長と先輩3人。 その3人の先輩たちが三角関係で泥沼だった。 自分では気づいていないのだが、係長に呼び出され、「仕事を覚えるよりも、みんなと馴染むことを優先してくれていい…

『夜明けの花園』――理瀬シリーズの読む順番について

恩田、陸の「夜明けの花園」を読んだ。 『理瀬』シリーズの一冊とは知らずに読み進めたら、時々意味がわからなくなる。こんなことなら、ちゃんと順番通りに読めばよかった!と少し悔しい。 というわけで今更ながらちょっとリサーチをした。 第1作『三月は深…

「コーヒーにミルクを入れるような愛」寝る前にゆったりよむべし

くどうれいんの「コーヒーにミルクを入れるような愛 」を読んだ。 最近本屋で可愛い表紙がきになってた作家、くどうれいん。始めて読んだ。 男性かも?とおもっていたが若い女性であった。 爆笑おもしろエッセイでもなく、かといって堅苦しいわけでもない、…

容疑者は怨霊!? 『怪談刑事』の異色ミステリー

青柳 碧人の「怪談刑事」を読んだ。 表紙のイラストがなんとも言えずいかがわしい。(褒めてる) 思わず「市川友章」で検索する。ふむふむ、怪談絵本とか描いている。クセ強め~すきだ~ 話が逸れたが、本作は青柳碧人の得意とする おもしろミステリー×怪談 …

明智小五郎の恋!? 「魔術師」

江戸川乱歩の「魔術師」を読んだ。 明智小五郎が、後に妻となる文代さんと出会う話。 復讐に燃えた、ほんっとにしつこい犯人と明智小五郎の知恵対決。 犯人は、幼い頃から復讐の大事業に専念して己を鍛え上げてきた。 手品師に弟子入したり、毒薬の勉強をし…

『念のため』GOATシリーズ創刊号より

芦沢 央 の「念のため」を聴いた。Audibleに「GOAT」シリーズとして一気に追加されていたので、読んだことのある作者を選んでみた。 GOATはこの出版不況に発刊した文芸誌とのことで、確かに本屋で見た事あるわ。 人目を引くおしゃれな表紙。しかも、破格の50…

『下町サイキック』読まず嫌いやったわ~

吉本ばななの『下町サイキック』を読んだ。 吉本ばななといえば『キッチン』しか読んだことがなく、ずっとそのイメージに囚われていた。でも、今回のようなSFチックな話も書くなんて思ってもみなかった。 もっとずっしりと重たく、距離のある物語かと思って…

『こうやって頭のなかを言語化する。』の3ステップで考えを整理できる?

荒木 俊哉 の「こうやって頭のなかを言語化する。」を読んだ。 最近、言語化自体が流行り言葉みたいになっているけど、この本は表紙の絵がいい感じに力が抜けていて好感触。 内容もとてもわかりやすくてよかった。 簡単に書くと(かけるか、私?) 自分に自…

終末のジェットコースター『歪曲済アイラービュー』、一気読み必至!

住野よるの「歪曲済アイラービュ」を読んだ。 帯に“著者暴走”と書いてあったが、まさにその通りだった。 超ハイテンションの配信者「こなるん」の一人語りから始まるこの物語。 特徴的なタイトルで始まる全11篇の中編集。 最初は物語のつながりがわからなか…

- 『幽霊』を読んで思い出した、名探偵・明智小五郎の魅力

江戸川乱歩の「幽霊」を読んだ。 憎い男が死に、ようよう一安心と胸を撫で下ろしてた平田氏は、 やつの葬式の数日後に恐ろしい手紙を受け取る。 「生きているうちはカタキが取れなかったが、死んで魂になったからには、もうどこにでもいける。きっとお前を殺…

「ウは宇宙船のウ」マンガだからこそ伝わる魅力

萩尾望都の「ウは宇宙船のウ」を読んだ。 先日のブックオフでの戦利品だ。 原作は、レイ・ブラッドベリが書いた「R is for Rocket」だそうで、いかしたタイトルだと思うのは私だけだろうか。 表題作「ウは宇宙船のウ」を含む8本収録されていた。 全般的に、…

心温まる怪異譚「三鬼 三島屋変調百物語四之続」

宮部みゆきの『三鬼 三島屋変調百物語四之続』を読んだ。 やっぱり面白い。 いままでおちかの仄かな恋のお相手だった青野利一郎があっさりと去ってしまい、代わりに貸本屋の若旦那、勘一が登場する。 書いているうちに「こいつじゃないな」と思ったんだろう…

「とらすの子」を聴く――オーディブルの臨場感が怖すぎる!

芦花公園の「とらすの子」を読んだ。 表紙の「の」の字が反転していて、おしゃれ?なのか、おどろおどろしいのか、判断に迷う。 なんとも不穏なデザインだ。 タイトルからして謎めいているが、まずはこの公園みたいな名前の作家は何者なのか?と思い調べてみ…

警察小説と思いきや『首木の民』で学ぶ経済の裏側

誉田哲也の「首木の民」を読んだ。 このタイトルにこの表紙、さては民俗ミステリー系かしら?と大期待をし読み始めたが、私の勘は当たらず、社会派警察小説(そんな派閥あるか知らんが)だった。 だが、社会派といっても重苦しいお硬い感じではなく登場する…