辻村深月の「きのうの影踏み」を読んだ。
実話系怪談風創作ファンタジー?で読みやすかった。
全部の話ではないけれど、作中で、辻村さん本人が登場し、妊娠出産そしてこどもが幼稚園へ入った話などが語られていて、実話っぽさが強調される。
特に、夜中に目覚めた赤子をそっと暗闇であやして戻ると、ベッドに我が子が眠っていた。では、この腕の中のものは一体・・・という話は夏目漱石の夢十夜のようでなかなかよかった。
いや、これが実話なら良くはないか。腕の中の赤子が怪しいのか寝床の中の赤子が怪しいのか・・・考えたくないよね。
でもこれ、SF作家ならば並行世界がうっかり混線して現れた、別の世界線の我が子に感じるのかもしれない。そう考えると面白いよね。(やみあかご)
最初の「十円参り」からガツンとファンタジー系ホラーだった。
特に一昔前の団地の集会所の空気感がよかった。小学校の頃住んでいたマンモス団地を思い出す。
人気のない神社の賽銭箱を壊してしまう二人の少女。そこまで追い詰められたんだ想像するとゾワゾワする。
そして、この話なにが怖いって人間が怖い「ヒトコワ」系なんだよなー
怪談なので、オチが無く不自然に終わってしまってもしょうがないのだが、そこはそれ、人気ミステリー作家(ファンタジー作家かも)なので、いくら実話系ホラーでも読者を置いてきぼりにしない。
変な言い方かもしれないが、スッキリと終わる。いや、そうでもないのもあるか(ころしたもの)(ナマハゲと私)
特にナマハゲと私は、あれを思い出したよ・・・筒井康隆の「鬼」の話
あとは、「だまだまマーク」が良かったな。
幼い声で可愛らしく「だまだまマーク」という息子。微笑ましくおもっていたら・・・という話。これとかはホントに聞いてる耳がいやーん、って思うようなストーリーだった。(audibleなので今日も読み上げ読書)
目次
十円参り
手紙の主
丘の上
殺したもの
スイッチ
私の町の占い師
やみあかご
だまだまマーク
マルとバツ
ナマハゲと私
タイムリミット
噂地図
七つのカップ
あるホラー作家のもとに送られてきた手紙には、存在しない架空の歌手とラジオ番組のことが延々と綴られていたという。編集者たちの集まりによると、チェーンメールのように、何人かの作家にも届いているという。
かくいう私にもその手紙は届いていた。その手紙のことを調べるうちに、文面の後ろのほう、文字が乱れて読み取れなくなっていた部分が、徐々に鮮明になってきている……。
ある日、友人作家が手紙のことで相談があると言ってきた。なんと、その手紙、サイン会で手渡しされたという。誰がその人物だったかはわからない。けれど、確実に近づいてきているーー。(「手紙の主」)。
その交差点はよく交通事故が起こる。かつてそこで亡くなった娘の霊が、巻き添えにしていると、事故死した娘の母親は言っているという。
その娘が好きだったという「M」の字の入ったカップがいつもお供えされていた。
ある雨の日、そのおばさんがふらふらと横断歩道にさしかかり……。死が母娘を分かつとも、つながろうとする見えない深い縁を繊細な筆致で描く「七つのカップ」。
闇の世界の扉を一度開けてしまったらもう、戻れない。辻村深月が描く、あなたの隣にもそっとそこにある、後戻りできない恐くて、優しい世界。
次に読みたい本
今回の収録作があるのかどうかはしらないが、アンソロジーだといろんな作者と比べられていいよね。