近藤ようこの「アカシアの道」を読んだ。
一言で言うと「怖い」本だった。
別にお化けや幽霊がでてくるわけではないこの話を、怖いと思う人がどのくらいいるのだろうか。
この話はまさにこじれににこじれた母と娘の物語で、母と息子であればこんなことにはならないのではないかと思う。
ひとり親家庭で、厳格な母を愛せなかった娘。
ようやく母から開放された気でいたが、まだ若い母がアルツハイマーで近隣に迷惑をかけているとのことで、介護のために家に戻ることになる。
介護のために仕事をやめざるをえないなんて恐ろしすぎる。
自分の身に引き換えて考えるとそれはホラーでしかないほど恐ろしいのだ。
だがあえて母親の目線からも言わせてほしい。
子供の頃愛されなかったと感じさせたのは、たしかに良くなかったかもしれない。
だが、多分母親も限界ギリギリだったのだ。
一人で子どもを育てるって、やっぱり不安だと思う。
まして、教師という職業上、子育てでヘルプを出しづらかったんじゃないかな。
それに、一人親って他人の目がないので、家の中で王様になってしまうよね。
自分のストレスをぶつけてしまう、それをこらえるためのストッパーとしての他者がいないので、どんどんエスカレートするんだと思う。
かばうわけれではないけれど、この話は「娘視線」の物語であり、おそらく母親から語らせたらもう少し違うストーリが聞けるはずである。
だが、母親はすでに正気の人ではないのだ。今から昔のことを二人で話あって和解するという選択肢がないのは残念すぎる。
悲惨な結末しか予想できないようにみえたが、意外にも娘はある種の落ち着きを手に入れる。
そして、昔、母親に教えてもらった花の名前「アカシア」を、現在の母に教えてあげるシーンで幕が降りる。
このシーンも実は彼女にとってはいい思い出はなかったが、それでも母に向かってやさしく花の名前を教えてあげられたことで、おそらく娘は自分で自分を救えたのだと思う。
いやー、娘には読ませたくない本。
毒親って言葉大嫌いだけど、そんなふうに思われてたら嫌だなー
そして、自分の正気が保てなくなって当時のことを弁明できなくなるのも嫌だなー
「母がしかたなくわたしを育てたように、わたしもしかたなく母の世話をするのだろうか。いつまでーーーー」
高齢化社会と共に浮かび上がる介護問題。親の介護は子供の責任、という図式にはめ込もうとする世間。しかし親子だからこそ複雑に絡み合う葛藤にお互い奈落の底まで追い詰められて行く。親の介護、その先に希望は見いだせるのか…。
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