溝渕久美子の「神の豚」を読んだ。
近未来?いや、未来とも言えない。むしろ、私たちが今住む世界の並行世界のような物語だった。
主人公の私は、アーガとダーガという二人の兄がいる。普段は別々に暮らしていたが、ある日突然「ダーガが豚になった」という信じがたい連絡が入る。驚きと戸惑いの中、兄の家を訪れると、そこには確かに台湾には存在しないはずの豚と、もう一人の兄がいた。
この世界では、豚由来のE型インフルエンザが猛威を振るい、感染拡大を防ぐために国中の豚が処分されてしまっていた。豚肉を愛する台湾の人々は、食料としては「代用肉」を口にするが、本来の豚が持つ精神的な意味までは代用できない。彼らにとって豚は単なる食材ではなく、文化や信仰の中心にある大切な存在だったのだ。
毎年、地域の祭りでは立派な豚を神に捧げていた。しかし疫病の影響で、去年はカップヌードルを豚の形に積み上げることで祭りをしのいだものの、今年こそは本物の祭りを行いたい――そう願う人々のキティ(主人公の友人)が、物語を大きく動かしていく。
そこで「兄だったかもしれない豚」をどうするのか……と
いう恐ろしい展開にはならないので、ご安心を。
結局、彼女たちは代用肉を作るプリンターのような装置を使い、実際に豚を生み出すことに挑戦することになる。
カフェを経営する若い女性が、伝統を守りながら新しい技術を駆使し、祭りを続けていく姿も見どころだ。
SFなのか?と問われれば、少し曖昧な気もする。しかし、ミステリーでもなければ時代小説でもない。やはりこれはSFと呼ぶべき作品だろう。
第12回創元SF短編賞優秀賞を受賞作品。
疫病に見舞われた台湾。
突然「兄が豚になった」
と連絡を受けた末の妹は、
故郷に帰ることに。
第12回創元SF短編賞優秀賞受賞作。
次に読みたい本
豚といえば・・・
この本おもしろかったなー
中島らもってこれしか読んだことなんだよなー
ちなみに、今日読んだ「神の豚」で検索するとめちゃくちゃ美味しそうなチャーシュ^が一番にでてきます。