レイチェル・カーソンの遺作『センス・オブ・ワンダー』を読んだ。
彼女の名を聞いてすぐ思い浮かぶのは、環境問題への警鐘を鳴らした『沈黙の春』だ。大学の授業で「必読」と言われながらも、その重さに気後れして手に取ることができなかった記憶がある。
この作品でカーソンが語るのは、自然に対する神秘的な驚きや感動、すなわち「センス・オブ・ワンダー」だ。
幼い子どもたちは皆、初めて見るものに驚き、心を動かされる。この感性が、大人になっても失われることなく生き続けてほしい――そんな願いが、おっとり(そういう表現が似合う)語られている。
私たち大人にできることは、子どもたちに自然と触れ合う機会をできる限り多く与えること。
鳥のさえずりに耳を澄ませたり、夜空の星の瞬きをじっと見つめたり、海辺で波の寄せる音に心を委ねたり。
何かを教えようと肩に力を入れる必要はなく、ただ一緒にその瞬間を楽しめばいい。
カーソンは、「鳥の名前を知らないから子どもに何も教えられない」と思う必要はないと言う。
むしろ、名前や分類よりも、まずは自然そのものに心を開くことが大切なのだ。
その後、興味を持ったら図鑑を開けばいいし、詳しく知りたくなったら調べればいい。
大切なのは、目の前の景色に息をのむ瞬間、その感動を分かち合えることなのだと思う。
私は幼い頃「センス・オブ・ワンダー」を存分に味わったのだろうか?
私の子どもたちには味あわせていたかな?
今からでも遅くない、自然を存分に味わい尽くせる人間になりたい。
雨のそぼ降る森、嵐の去ったあとの海辺、晴れた夜の岬。そこは鳥や虫や植物が歓喜の声をあげ、生命なきものさえ生を祝福し、子どもたちへの大切な贈り物を用意して待っている場所……。未知なる神秘に目をみはる感性を取り戻し、発見の喜びに浸ろう。環境保護に先鞭をつけた女性生物学者が遺した世界的ベストセラー。