iCHi's diary~本は読みたし、はかどらず~

主に忘れっぽい私の読書録。最近はもっぱらAudibleで聞く読書

「鈍色幻視行」曖昧さを受け入れる余裕

恩田陸の「鈍色幻視行」を読んだ。

 

一つの「呪われた小説」に関して関係者を一同にあつめた豪華客船でその小説について語り合うというなんだか一人や二人死人が出てもおかしくないシュチュエーション。

 

物語は、小説家の妻とその夫の二人の視点から交互に語られる。

互いにバツイチで前の結婚で傷ついている二人は互いに少しの遠慮と前のパートナーへの軽い嫉妬を抱えながらも、表面的にはその仲は良く何の問題もないように見える。

 

さて、この話。読み終わった後に「あー面白かった!スッキリ!」という感じの小説ではない。読者に「カタルシス」を与えない。

そういう意味では「面白かったー!」と叫ぶことはない作品だ。

 

幻の小説を書いた「飯合梓」とは何者なのか。生きているのか?死んでいるのか?男なのか女なのか?それどころか、複数人いるのではないか?

 

結局、逃げ場のない船の中で皆でおのれの経験と考察を述べ合うだけなので、足で捜査をして犯人を見つける様な話ではなく、正解かどうかわからないけれど、一番確からしい解釈がされるだけだ。

 

タイトルの「鈍色(にびいろ)」は空と海の境界が曖昧に霞むあのぼやけたグレーのことだろう。

大人とはこの曖昧さに耐えなければいけない。すぐにわかってしまうようなシンプルな人間関係など、本当はこの世の中にはないのだから。

 

恩田陸は実際にこの小説のなかで取り沙汰される小説「夜果つるところ」も刊行している。なんとも大仕掛けな。

 

読む順番は「鈍色幻視行」→「夜果つるところ」らしい。

 

良かった今回は読む順番を間違えなかった!

 

鈍色幻視行 (集英社文芸単行本)

謎と秘密を乗せて、今、長い航海が始まる。

撮影中の事故により三たび映像化が頓挫した“呪われた”小説『夜果つるところ』と、その著者・飯合梓の謎を追う小説家の蕗谷梢は、関係者が一堂に会するクルーズ旅行に夫・雅春とともに参加した。船上では、映画監督の角替、映画プロデューサーの進藤、編集者の島崎、漫画家ユニット・真鍋姉妹など、『夜~』にひとかたならぬ思いを持つ面々が、梢の取材に応えて語り出す。次々と現れる新事実と新解釈。旅の半ば、『夜~』を読み返した梢は、ある違和感を覚えて――

次に読みたい本

夜果つるところ (集英社文芸単行本)