吉田悠軌の「ジャパン・ホラーの現在地」を読んだ。
怪談、ホラーについてかなりアカデミックに(というか小難く)体系化して整理を試みた作品。
その知識の広さに圧倒される。
ホラーが好きでたまらない人たちが寄り集まってひたすら「これってあれだよね」「そうそうあれの類型であれだよね」みたいに表面上和やか、だがお互いに少しずつ俺知ってるマウンティングし合う?独特の近寄りがたい雰囲気。
章ごとにゲストを呼んで対談形式で話をすすめるのだが、特に面白かったのは
背筋さんが語る『近畿地方のある場所について』制作秘話と
「ぼぎわんがくる」の作者、澤村伊智がゲスト回の「汲めども尽きぬ「民俗ホラー」という土壌」
そして、透明な私 ファウンド・フッテージの作り方 ――梨
怪談とか今流行りのモキュメントホラーについて、真剣に語る様子には
文章を書くときの姿勢やテクニック、何を考えて書いているのか、などいろいろ刺激を受けた。
特に、電化製品の取り扱い説明書を「怪談風に読む」話はめちゃくちゃ面白い。
怪談には、怪談の定型がありそのメソッドに則ることで何でも怪談っぽく語ることができるそうである。
(「こわいはなしはキくだけで」ででてきた平山メソッドとかね)
それから、ホラーとミステリーの関係について語っている部分も腑に落ちた。
私がミステリーが好きなのも最後はスッキリ解決するからで、一方、ホラーや実話系怪談にはその「解決するカタルシス」がない。
同じように謎や不思議を扱うのに、落とし所が鏡合わせのように真逆になっているというのだ。なるほど、大いに膝を打つ!ポンポン!
それにしても、過去のあらゆるジャンルのホラーについて語り尽くす勢いなので、定番のホラー小説とか、インターネットの洒落怖というサイト?とか怪談を語る配信者についてもたくさん紹介されている。
読みたい本や観たい動画がバンバン引用されるので久しぶりにメモを取りながら読んだ。以下は気になったものの備忘録代わりのメモである。後で調べる。びびりなので明るいうちに調べる。
篠田節子「イビス」「聖域」
小池真理子「墓地を見下ろす家」
小野不由美「しき」
坂東眞砂子「やまはは」
ヘンリージェイムズ 「ねじの回転」
葉山嘉樹「セメント樽の中の手紙」
以下キーワードとして
・SCP財団
・八尺様、くねくね、とみだのまたわれ、裏エス区、すぎさわむら
・陽子の話を信じるな
こんな感じで、気になるものがたくさんだ。読むものたくさんで忙しいわ!
今、なにが怖い? 人気作家、TVプロデューサー、映画監督、配信者など、日本のホラー文化最前線のクリエイターたちとともに考える論考集。
目次
1章 今、テレビだからこそ出せる「怖さ」 ――大森時生
2章 『近畿地方のある場所について』が明らかにしたヒットの要件 ――背筋
3章 文字の怪談、声の怪談 ――黒史郎
4章 インターネットで語られる怪談 ――かぁなっき 煙鳥
5章 回帰と拡散のホラーゲーム 2015-2024 ――向江駿佑
6章 汲めども尽きぬ「民俗ホラー」という土壌 ――澤村伊智 飯倉義之
7章 ほんとにあった! 心霊ドキュメンタリーの世界 ――寺内康太郎 心霊ビデオ研究会
8章 透明な私 ファウンド・フッテージの作り方 ――梨
9章 ブームからリバイバルへ ホラー漫画の40年 ――緑の五寸釘
次に読みたい本
なんでも教養としなくてもいいのに!と思いつつ
読みたい。古事記から、ティック・トックまで。どっちも大好きよ。