田丸雅智の「憂鬱探偵」を読んだ。
タイトルも装丁も、ち素敵な一冊。
しかし中身はミステリーの皮をかぶった、なかなか風変わりなファンタジー短編集であ。
誰も死なないし、誰も傷つかない。けれど、心が温まるかというとそれもまた微妙。
不思議な読後感が残る。
主人公は、探偵とは名ばかりで、探偵事務所は閑古鳥が鳴いており、ランチ代を浮かせるために毎日カップ麺を食べているような冴えない男だ。
そこに突然元気花丸印、底抜けに自己中心的な女子大生が「給料はいりませんから働かせてください!」とやってくる。
何しろ、自己中心だけど底が抜けているで、ゼロ磁場が発生しているのか、全く嫌味がない。不思議な無敵感がある。
通常ならそんな二人の間にちょっとしたラブの予感?みたいなものが漂いそうだが、それもない。
物語は「電車に乗るたびに足を踏まれるんです」といった、探偵に頼むにはあまりに小さすぎる依頼をきっかけに動き出す。普通なら門前払いされるところだが、この女子大生は「そこにこそ、何か秘密があるはずです!」と前のめりで受けてしまう。毎回毎回、少しだけ憂鬱な事件を、少しだけ非現実的な方法で解決していくのが、この「憂鬱探偵」のスタイルだ。
面白いのは、解決の鍵がほとんどファンタジー寄りである点だ。
タイトルに「探偵」とあるからといって、ミステリーだと思うなよ!(誰向けの発信?)
文章は軽やかで読みやすく、各話の長さもちょうどよい。サクサク読めて、息抜きにぴったりな一冊である。
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「情熱大陸」出演で話題!
現代ショートショートの旗手、最新作。
月曜日は気分が沈む……
注文した料理がなかなかこない……
スマホの充電がすぐなくなる……
「そんな依頼はおれにまかせ――
ないでほしい。ぜったいに。」
「憂鬱な出来事」の裏にひそむ“秘密”をイヤイヤ暴く!
どこか冴えない探偵のショートショート。
【収録作品紹介】
足を踏まれる
「私、電車でよく足を踏まれるんですよ」「お気持ちはお察ししますが、あいにく私は探偵でして……」――気乗りしない依頼のはずが、ある組織の存在が浮き彫りに……。
料理がこない
「自分よりあとに注文した人の料理がいつも先にくる」――どうにかできる問題ではないはずの依頼に困惑するも、陸上のユニフォームを着た若者が暗躍しているのを見つけ……。
ジャンケンでいつも負ける
「完全にたまたまでしょ」――しぶしぶ調査に乗り出した先には、怪しい闇賭博場が。
そこには、あいこにすら一度もならず、すべての相手に勝ちつづける男がいて……
靴下をよくなくす
「とにかく、気をつけるしかないんじゃないか」――そう思われた矢先、「うちの家は昔からやんちゃだからよくなくなります」と、謎すぎるコトバを口にする女性と出会い……
スマホの充電がすぐなくなる
「なんでこんなに減るんだろうって、毎日すごく憂鬱なんです」――どこから突っこんでいいものかと思い悩んだが、ある大学教授のスマホの使い方に愕然とし……
――など、誰にでもある「憂鬱な出来事」の裏側にある秘密を“意外な視点”で暴く。
「情熱大陸」出演で話題の、現代ショートショートの旗手による9篇を収録。
次に読みたい本
今回の本は私の中の「いろんな探偵がいておもしろいリスト」に追加できる良いタイトルだった。
何でも探偵をつけていこうぜ!
