朝井 リョウ の「桐島、部活やめるってよ 」を読んだ。
17歳の真っ白いキャンバスを持った5人の高校生たちが、それぞれの視点で独白をつないでいく構成が絶妙だった。「桐島、部活やめるってよ」は、桐島という名前の存在が空白であることで、逆に彼の不在が全員の青春に影を落とし、物語を立体的にしている。
高校時代はずいぶん遠くなってしまったけれど「創作ダンスの授業」で「自由に班を作って」と言われたあのなんとも言えない気持ちは今でもくっきり覚えている。
創作ダンスなんて、普通の人間がすることだろうか。
かなり納得いかずにふてくされてたなぁ。
あの時に、そつなく踊っていた、今で言うヒエラルキー上位の人達を本気で呪っていたけど、ふりかえってみると、体育のダンスの時間に踊って呪われたんじゃ申し訳ないな。
でも、世界と自分との相対的な大きさを測りかねているあの年代の子どもたちに創作ダンスはきついと思う。せめてなんか他のものとの選択にしてほしかった。
「桐島、部活やめるってよ」は、そんな高校時代の息苦しさや不条理を、時代を越えてリアルに突きつけてくる。創作ダンスに対して感じた「なんで女子だけ?」という不満も、作品を読んでいると当時の自分の小さな怒りが、あの頃の世界の縮図だったように思えてくる。
この小説では、桐島本人の語りは一切出てこない。彼が戻ってくるのかもわからない。桐島が語らないことで彼の不在がより鮮明になる。
「何かに全力になるのはダサい」と思ってしまう年頃。その裏には、全力でぶつかって、全力で失敗することへの恐れがある。たぶん、本当はみんな、本気を出してみたいんだと思う。傷ついても、笑われても。
愛おしいなぁ。
がんばれ、君たちは失敗し放題だ。
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バレー部のキャプテン・桐島の突然の退部が、5人の高校生達に波紋を起こして……。至るところでリンクする、17歳の青春群像小説。第22回小説すばる新人賞受賞作。(解説/吉田大
神木くんで映画化もしているようだ
次に読みたい本
映画化された、この「ジョゼと虎と魚たち」が作中に何回か出てくる。
原作読んだけど、映画の評判がすごくいいよね。



