「美人は得か?」という、昭和の喫茶店トークのようなテーマに、ガチの脳科学で切り込んでいくその姿勢にまず驚いた。
今や「見た目」や「ルッキズム」に関する発言は慎重さが求められる時代である。それでもなお、「咒(まじない)の脳科学」では、この問いを科学的に導いていく。
なるほど、美人には得なこともあれば、損なこともある。例えば、知らない男性からの親切を受けやすいのは圧倒的に美人。しかし、仕事となると話は別で、意外にも「美しさ」は足を引っ張る要因になりうるという。
これは同性からの厳しい視線や、能力に対する過小評価が影響しているらしい。「バリバリ仕事ができる美人」は、どこかで誰かの反感を買ってしまうのだ。
そして、面白かったのは「イケメンの方がお得度が高い」というくだり。罪を犯しても「きっと事情があったのだろう」と好意的に解釈される率が高いという。さらには、受刑者に整形を施すと再犯率が下がるという、倫理的にギリギリな話も紹介されていた(※今ではたぶん倫理委員会通らない)。
そして本書のもうひとつの大きなテーマが、「言葉の力」だ。タイトルにある「咒(まじない)」とは、まさにその象徴である。人は言葉で傷つき、また言葉で立ち上がる。自分にかける言葉こそが最大のまじないであるという考え方は、スピリチュアルというよりも、むしろ現実的で日常的な提案に感じられた。
ただし、文章の言い回しはやや難解で、ときおり本気なのか皮肉なのか分からない箇所もあり、読み手としてはやや戸惑う。だが、その“棘”こそが著者・中野信子のスタイルでもある。彼女のビジュアルを知っている人なら、その知的な美貌とのギャップに、より一層パンチを感じるだろう。
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なぜ、私たちは、周りの言葉にこんなに苦しんだりするのでしょう? 人を息苦しくさせる――SNSにあふれる呪いの言葉、病気にもしてしまう暗示。刷り込まれる負けグセ。 脳を中毒にする――イケニエを裁く快楽、罰を見たい本能や正義という快感。ウソつきの遺伝子がモテる。 知りたくなかった現実――男のほうが見た目で出世、女はここまで見た目で損をする。脳に備わっていたルッキズム。 私たち人間の社会は咒(まじない)でできていると言って過言ではないのです。 なぜなら言葉が、意識的と無意識的とにかかわらず人間の行動パターンを大きく変えてしまう力があるから。 人間関係や仕事、人生の幸不幸も、あなたを取り巻く社会の空気さえ。 そして今SNSがひとりひとりを孤立させ、言葉はいっそう先鋭化しています。 正義や快楽に中毒する脳そのものが、そもそも人間社会を息苦しくする装置です。 本書の役割は、脳にかけられた咒がどのようなものかを知らせ、解放することにあります。
【著者より】 本書では、ネガティブなイメージだけを扱うのではなく、ポジティブな想念を含む言葉の力についても光を当てたいと考え、あえて「まじない」に「咒」という文字を使用することにした。 私たちは物理世界に存在している生物ではあるが、認知という観点から見れば、言語の海の中に生きる存在である。 私たちは、誰かの発する音声に左右され、他者が何気なく書いた言葉を目にして一喜一憂する。励まされて生きる活力を得ることもあれば、死を選ぼうという気持ちにさせられることもある。これらは言葉の力である。現代特有の現象などではなく、古来より洋の東西を問わず、言語を用いる技術に長けた者が、意図的にその力を運用してきた歴史がある。 脳科学を中心とした知見をもとに、その力の一端を繙いていこうという本書の試みが、読者の向後に資することがあれば望外の喜びである。
【本書の内容】
序章 咒―言葉の隠された力
第1章 呪い―悪意の影響力
第2章 快楽―脳が制御できない中毒
第3章 ルッキズム―例外なく脳は美醜に囚われる
第4章 社会がかける咒―安寧のための代償
終章 咒がかなうとはどういうことか
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