iCHi's diary~本は読みたし、はかどらず~

主に忘れっぽい私の読書録。最近はもっぱらAudibleで聞く読書

『かわいそ笑』不誠実な語り手のせいで考察必須のホラー

梨 の「かわいそ笑」を読んだ。

 

読後にイヤー!と叫びたくなる一冊。

 

何が怖いって、読んだ自分も知らぬ間にこの呪術的な仕掛けに加担していたかもしれないという点だ。

 

そう、梨の「かわいそ笑」は、読む者の無意識をじわじわと巻き込み、読後になってようやくその仕掛けの存在に気づくような、極めてメタで実験的なホラーモキュメンタリーなのだ。

 

一見すると、ネット怪談を下敷きにした怪異の再構成。だがこれは、ただの創作では終わらない。語り手が提示する“地の文”には、冒頭でくどいほど「これはすべて筆者=梨が書いた部分」と念押しされる。

 

ところが、この“語り手”が実は極めて不誠実な存在なのだ。

情報を選別し、時に意図的に伏せ、読む側に“真実”を委ねるようでいて、まるで最初から読者を罠にかけるために構成されたような文章になっている。

 

「かわいそ笑」は、その語りのスタイル自体が仕掛けの一部であり、読者もまた“実験”に参加させられている。

 

読者の記憶力、読解力が試される結構読み返し必須本。

 

そしてなにより厄介なのは、この本が「ノンフィクション風」を装っていることだ。地の文が信頼できないとなると、引用された証言や登場人物の言動すら、どこまでが虚構でどこからが真実か、曖昧になる。

 

その情報に少しは元ネタがあるのかそれとも全オリジナルなのか?不気味で、読後感は決してよくない。でも、それがこの作品の醍醐味である。

 

ホラーに耐性がある読者向けかも。ネット怪談にある程度なれた者たちにとってお約束的語りも多い。

素人は「何か変なものを読んでしまった」という不穏な後味を残す。

 

いやー、難しかった。これは考察も進むと思う。

考察を何件か読んでもう一回読むくらいがちょうどよいかも。

 

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かわいそ笑

「死んだ人のことはちゃんと可哀想にしてあげなきゃ駄目でしょう。」
一度読んだら引き返せない、怪異が侵食する恐怖のネット怪談。


インターネット上に伝わる多くの怪談。
その中に何故か特定の「あの子」が被害にあう奇妙な怪談が出回っていた。

とある掲示板のQRコード、インタビューの書き起こし、出典不明な心霊写真、匿名のメールデータ。
筆者がこれまでに収集した情報をもとに怪談を読み解く、読者参加型のホラーモキュメンタリー。
一見バラバラに見える情報から、浮かび上がってくる「ネット怪談の裏側の物語」とは。


──「もうやり直せないよ 残念でした」

【目次】
第一話 これは横次鈴という人が体験した怪談です.docx
第二話 behead-コピー
第三話 受信トレイ(15)
第四話 ##name1##
第五話 0x00000109

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梨氏のイメージは難解で理論派。