iCHi's diary~本は読みたし、はかどらず~

主に忘れっぽい私の読書録。最近はもっぱらAudibleで聞く読書

「ヒロイン」 彼女の選択と、切なさの連鎖

桜木 紫乃の「ヒロイン」を読んだ。

 

1995年に起こったオウム真理教事件を題材にしたフィクションだが、あ、あの人がモデルだなとわかる、そんな小説だった。

あの人、と言いつつ自信がなかったので調べた。そして、この人の年齢とか、無罪が確定していることなどを初めて知り、ますます小説の切なさが身にしみた。

菊地直子 - Wikipedia

ブログもやってるそうなので、探して読んでしまった。

更新も止まっているし内容もとても悲しいものだったのであえてリンクは貼らないでおく。

 

 

親への反発から、高校を卒業してすぐに出家信者として共同生活をしていた啓美。

教団によるテロ活動に何も知らぬまま同行させられ、その日から17年間も流されるように逃亡生活を続けていた。

 

この小説は、啓美の逮捕のシーンからはじまる。

読者は、決して彼女が逃げ切れないことを知りながら、だんだん少しでも幸せになってほしいと思うようになる。

 

なぜ、逃げた?

 

多分彼女の間違いはここなんだと思う。

 

教団に入ったことは、振り返れば間違いだったが、18歳の彼女にとって母親から逃げるためにたどり着いた回答であり、教団の本性を知らなかったのだから、罪じゃない。(と私は思う)

 

愚かであったことが罪である場合もあると思うのだが、彼女は、決して愚かでもなかった。ただ、いくつかの選択の間違いがどんどん後戻りができない状態になってしまうのだ。

 

17年間。
常に怯えながら、それでも彼女を愛してくれた数人の人に助けられて生きてきた。

 

 

本当に愛した男と死に別れた後、身分を詐称するために一緒に暮らし始めた男と「平凡で小さな幸せ」を手に入れたところで、とうとう彼女は捕まってしまう。

 

最後までこの男が彼女を守ろうとしていたことも切ないし、ウィキペディアに依ると本当にその様な男性がいて犯人隠匿で捕まっているというのも切ない。

 

私、今日何回切ないって言ったかしら。っていうくらい切ないのよ!

 

作中で、桐生夏生の「OUT」のことであろう小説について触れているシーンがある。

死体を処理するに弁当工場は最高ってこと。(おしてはかるべし)これも20年くらい前に読んだけど衝撃的で未だに忘れられない。

 

 

 

 

 

 

ヒロイン

世間を震撼させた白昼のテロ事件から17年。
名を変え他人になりすまし、"無実"の彼女はなぜ逃げ続けたのか?

1995年3月某日。渋谷駅で毒ガス散布事件が発生。実行犯として指名手配されたのは宗教団体「光の心教団」の幹部男性と、何も知らずに同行させられた23歳の信者岡本啓美(おかもとひろみ)。この日から、無実の啓美の長い逃亡劇が始まった。他人を演じ続けて17年、流れついた地で彼女が見つけた本当の"罪"とはいったい何だったのか――。

次に読みたい本

 

OUT 上 (講談社文庫 き 32-3)