塩田武士「存在のすべてを」を読んだ。骨太の良い作品だった。
「罪の声」がすごく良かったので期待をしていたが、前作に勝るリアリティで、
あーこれもまた映画化されちゃうんじゃない?
さすが本屋大賞ノミネート!
ちなみの罪の声はあの「グリコ森永事件」の作者なりのアンサー。
これを読んだらだいぶんスッキリしちゃって、もうこれが回答でいいんじゃないか、未解決事件終了という気がした。こちらも本当にオススメ。
あの事件の最中小学生だった私はこの劇場型犯罪に夢中であった。
平成3年に発生した誘拐事件から30年。
当時警察担当だった新聞記者の門田は、旧知の刑事の死をきっかけに被害男児の「今」を知る。
異様な展開を辿った事件の真実を求め再取材を重ねた結果、ある写実画家の存在が浮かび上がる――。
質感なき時代に「実」を見つめる、著者渾身、圧巻の最新作。
新聞記者の門田目線のストーリーと、銀座の小さな画廊を父娘で経営している「みほ」誘拐の片棒を担がされることになったまさひこから見たストーリー。
誘拐犯に連れ去られたまま、3年後、7歳で戻ってきた「りょう少年」はその間のことを一切語らない。ただりょうが「愛されてきちんと育てられた」ことがうかがえる。
誘拐犯はなぜ「りょう」を育てて祖父母の元に返したのか?
この謎に30年越しで挑む者たちの物語。
社会派ミステリーの側面と、純文学みたいな愛の物語。
画才があり、こつこつと絵をかきながら生活をしていた「貴彦」と妻の「ゆみ」は、犯罪を犯した兄の「まさひこ」に騙されて、誘拐してきた子ども「りょう」を預かることになる。
もちろん、子どもを返そうとす貴彦だが、りょうの母親のネグレクトを知って子どもを返すことをあきらめて、りょうと一緒に犯罪者として追われながら生きることを選ぶのだった。
何より、貴彦はりょうの画才に気づいて、育てたくなったのだと思う。
芸術家の性だ。出会いは犯罪だったけど、天才が天才と出会ったのだ。
りょうにとってもたとえ誘拐されたとしても、育児放棄をしている母親の元に帰るよりも、子どものいない若い画家夫婦のもとで、1日中絵の指導をしてもらいながら成長するほうがありがたい。これは互いに幸福な出会いだったのだ。
だが、貴彦にとってはこの子を育てている限り、日の当たるところにはでられない。
外側から見た「誘拐事件」の物語と、日本の画壇やネグレクトの問題について話が膨らむ。
切ない。
次に読みたい本
幸せな破滅が描かれている、といわれて作中に紹介されているこの本。タイトルだけは聞いたことがあるけど。
罪の声、のコミカライズあるのでこちらを紹介。
最後の雑談
それにしても、今日は西日本は台風で開店休業状態でしたね。
今回の台風は「サンサン」というなまえでジョギング並みのゆっくりペースですすんでいるらしい。先程息子が「今回の台風は一周回ってもどってくる」という噂を披露していた。なんでも米軍発表の天気予報ではそうなっているらしい。
そんあことあるん?