花まんまで直木賞を受賞した朱川湊人の「いっぺんさん」を読んだ。
タイトル作を含む、ノスタルジックな雰囲気のホラー短編集。
タイトル作「いっぺんさん」は一回だけならどんな願いでも叶えてくれる神様の話。
主人公は小学生のころ親友しーちゃんとこの神様に願掛けに行くのだが、しーちゃんの願いは「早く大人になって白バイ隊員になりたい」だった。
「白バイ隊員になりたい」というユメを持っていたしーちゃんだったが、父親に前科があると警察官になれないという話を聞き、いっぺんさんのところへ向かうのだが、その前に「早く大人になって」がつくのは、彼の父親があまりにもだらしがない人間で、家族に手を上げるような男だったからだ。
だが、しーちゃんの欲張りなお願いは叶わない。
悲しいことに、しーちゃん自身がおとなになること無く病気で倒れてしまうのだ。
僕は必死でしーちゃんにお願い事を「元気になりますように」に変えることを勧めるが、間に合うこと無くしーちゃんは亡くなってしまう。
死者を生き返らせることだけは、流石のいっぺんさんでもできないとされていたが、そんな僕は禁を破ってしーちゃんにもう一度会いたいと望む・・・
これ以上はネタバレになってしまうので控える。
ホラー短編集とは言えしーちゃんがゾンビになって蘇るなんて話ではないのでご安心を。
読了後感動で目が潤む事間違いなしのよい話だった。
いっぺんさんはやっぱりみんなの願いを叶えてくれていたんだな、というのがわかる。
タイトル作もよかったが、磯幽霊、八十八姫(やそやひめ)もよかったなー
ホラー成分が強いのは磯幽靈。実話系怪談と思いきや、ヒトコワだった、みたいな。
初めて「朱川湊人」の本を読んだけどなんだか怖い本を書く人、という印象は間違ってなかった。
全体を流れる昭和っぽさがたまらない。
何度読んでも涙がこぼれる
感動の名作。
願いは必ず叶う。
いっぺんだけなあ―
一度だけ何でも願いを叶えてくれるという神様を探しに友人のしーちゃんと山に向かった少年は神様を見つけることができるのか、
そして、その後しーちゃんに起きた異変に対してとった少年の行動とは…(「いっぺんさん」)。
『花まんま』の直木賞作家が贈る、ノスタルジーと不思議が融和する朱川ワールド傑作集。
書き下ろし掌編「八十八姫の村」特別収録。
〈目次〉
いっぺんさん
コドモノクニ
小さなふしぎ
逆井水(さからいみず)
蛇霊憑き(じゃれいつき)
山から来たもの
磯幽霊
磯幽霊・それから
八十八姫(やそやひめ)
八十八姫の村
どうやら、花まんまの映画化が決まったらしい。
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