つげ義春の「李さん一家/海辺の情景」を読んだ。
なにかの本かネットの情報かはすっかり忘れてしまったけれど、誰かがこの「李さん一家」のことに言及していてずっと読みたかったのだ。
李さん一家を含むつげ義春の短編集。
つげ義春といえば「ねじ式」のあの一場面が妙に有名だが、というかあれしか知らない人が多いと思うが(私もだ)あの絵柄に行き着くまでにはいわゆる「普通に可愛い」時代が合ったのだ。
いくつか掲載されている話の中でも「古本と少女」「チーコ」が話がまとまっていて絵も可愛らしくてスキ。ほっこり系
一方「李さん一家」は受け止め方がわからなくて、不思議な読後感。なんとも呑気で、ちゃんとしなくても大丈夫、生きていけるのね~と肩の荷をおろしてくれるパワーがある。
一応、李さん一家のあらすじを。と言ってもネタバレを心配するようなストーリーではないのでご安心あれ。
ぼくは、優雅に田舎暮らしでもと思い古いが広い家を借りる。
そこで、畑などつくって自然とふれあいながら生活していると、鳥と喋れる男と出会う。
彼は李さんといって、「子供の頃、心から鳥と話したいと思っていたら話せるようになったが、鳥は馬鹿だから喋ってもあんまりたのしくない」というようなこと言う不思議な人物。
人を食ったような李さんに当てられて、気がついたら李さん一家に住み着かれてしまう。
なんとも不思議な李さん達にうっすら搾取されつつ、そこまで不快感もない僕。
李さん一家、まだいるんだよね、2階に。ってくらいのテンション。
屋根裏にコウモリがすみついちゃったんだよね、くらいのテンションなのがなんだかじわじわくる面白さなのだ。
このじわっと来る感じはやはり読んでもらうしかないかも。
李さん一家以外もいわゆる爆発的な笑いがあるわけでも無く、超感動作があるわけでもないが、シュールな作品あり、フランス映画みたいな叙情的な作品あり、作品ごとに絵柄がガラリと変わっていたり、結構実験的に色々描いていたことがうかがえる。
NHKの朝ドラで「ゲゲゲの女房」を見るまで知らなかったのだが、つげ義春は水木しげるのアシスタントをしていたらしい。
ちなみに演じたのは斎藤工だった。ああ、もう一回みたい。
マンガの歴史を変えたつげ義春『ガロ』時代の幕開け
『ガロ』掲載作を多数収録した「つげ義春コレクション」。
マンガの歴史を変えた、つげ義春と『ガロ』の結節点!後続の作家に大きな影響を与えた「沼」「李さん一家」など18点を収録。解説:夏目房之介
【目次】
古本と少女
不思議な手紙
手錠
蟻地獄
女忍
噂の武士
西瓜酒
運命
不思議な絵
沼
チーコ
初茸がり
通夜
山椒魚
李さん一家
蟹
峠の犬
海辺の叙景
解題:高野慎三
解説「風景にたたずむ「つげ義春」」 夏目房之介
■著者のことば
この全集は全作品を収録したものではなく、初期の貸本時代の作の大半は除いてある。全作をまとめるのは量的に難しいだけでなく、稚拙で未熟な過去を晒すのは気がすすまぬからである。が、旧作は目にする機会が少いとのことで一部をここに収めたが、粗末な作であるのは生活苦による乱作のためばかりではなく、マンガ全般のレベルが低かった時代でもあり、その点を酌量して戴ければ幸いである。後期の作に関しては弁解するところはない。
いやいや、先生ご謙遜を!
次に読みたい本
まさしく、つげ義春といえばこの絵が浮かぶ。
ドラマは(ハンサム過ぎるきらいはありましたが)水木しげるの半生を描いたスバラしい作品だったと思います。アシスタントの一人につげ義春がいた場面も薄っすらしか覚えていないのでもう一度みたいものだ。