瀬尾まいこの「ありか」を読んだ。
子どもは、親を簡単には嫌いになれないのだなと思った。
本屋大賞にノミネートされたこの作品は読んでいて何度も胸が塞がる気分になった。
とくに美空の母親を見ていると、どうしてこんなにも「ダメな母親」なのかと考え込んでしまう。彼女にも彼女なりの葛藤や苦しさがあったのだろうし、そうならざるをえなかった事情も、きっとあったのだと思う。
けれど、それにしても、である。子どもに与えられなかったものの大きさは、やはり見過ごせない。
一方で、美空の子育ては感謝に満ちている。
もちろん本人の資質も大きいのだろう。自分の暮らしを、自分で少しずつ幸せな方へ寄せていく力がある。そこは素直に偉いなと思う。
でもそれだけではなく、美空は、周囲の人にとても恵まれているのだ。
義理の弟がいて、職場には気にかけてくれる年上の女性がいて、気さくなママ友もいる。こういう人たちの存在はすごく大きい。
だからこそ思ってしまった。もし美空の母親が美空を育てていた頃、その周囲にもこんなふうに手を差し伸べてくれる人がいたなら、少しは違っていたのではないかと。
もっとも、それも簡単な話ではないのだろう。ニワトリが先か卵が先かではないが、美空の母は、もともとの頑なな性格のせいで人に頼れず、結果としてますます追い詰められていったようにも見える。
助けてくれる人がいなかったのか、助けを受け取れなかったのか。その両方だったのかもしれない。
美空がよかったのは、幼い頃に母親に思いきり甘えられなかったことや、自分の進路を許されなかったことを、怒りだけで処理していないところだと思う。ずっと「責める」のではなく、ただただ「悲しい」と感じ続けていた。
本人は「それでも育ててくれたんだし」と無理やり感謝しようとしていたけれど、いやいや、それはかなりネグレクトに近いでしょう、と読んでいるこちらは何度も思う。
最終的に美空が選ぶのは、完全な断絶ではない。
母親との決別ではあるけれど、もっと正確に言えば、それは卒業なのだと思う。娘としての卒業であり、同時に母親の側もまた、苦しくて仕方なかった子育てから卒業しなければならなかったのだろう。
瀬尾まいこの「ありか」の結末は、手放しのハッピーエンドではない。けれど、あの親子にとって望みうる最高の着地だったのではないかと思う。
願わくば、この先に母子三代が、睦まじく、ときに助け合いながら生きていけますように。
そして、幼いひかりの発言がいちいちキュートでたいへん救われた。
重たい話のなかで、あの無垢さが差し込むたびに、こちらの心まで少しやわらかくなる。ああ、希望ってこういう形でも置いていけるのだなと思った。
文体のやわらかさの奥で、ちゃんと痛みを描ききっていて瀬尾まいこの筆力を感じた。
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愛はここにある。
幸せはここにいる。
「これまでの私の人生を全部込めたと言い切れる作品を描きました」
――瀬尾まいこ
母親との関係に悩みながらも、一人娘のひかりを慈しみ育てる、シングルマザーの美空。
義弟で同性のことが好きな颯斗は、兄と美空が離婚した後も、何かと二人の世話を焼こうとするがーー。
「子育てをしながら自分が受けた恩を思い知って、親に感謝していくのだと思っていた。それが親になった途端、さっぱりわからなくなった。この日々のどこに恩を感じさせるべきところがあるのだろう」
(本文より)
本屋大賞受賞作『そして、バトンは渡された』、ベルリン国際映画祭フォーラム部門正式招待&日本アカデミー賞優秀作品賞原作『夜明けのすべて』など、人々のかけがえのない関係性を紡ぎ続けた瀬尾まいこが描く、あなたの小さな、でも確かな支えとなる感動の物語!
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