伏尾美紀の「百年の時効」を読んだ。
100年ってどういうことだ、と思うタイトルである。けれど読み終えると、この「百年の時効」という題名以外ありえない、と妙に納得してしまう。
最初の事件から数えれば、本当に百年かけてようやくたどり着いた決着なのだ。そんな長すぎる時間を相手にして、それでも捜査の火を消さない警察の執念に、まずぐっときた。
この「百年の時効」でいちばん胸を打たれたのは、一人の名刑事がすべてを解決する話ではないところである。むしろ逆で、自分の在職中に解決できなくても、後輩へ引き継ぎ、事件を終わらせない。ひたすら渋い。
警察小説の面白さはここだよなあ、としみじみ思った。
名探偵が颯爽と現れて真相を暴くのではなく、地味で、報われるかどうかも分からない仕事を、誰かが黙々とつないでいく。「百年の時効」は、その積み重ねそのものがドラマになっている。
中でも象徴的なのが、五十年も前の血痕の染み込んだ衣類を保管し続けたくだりだ。いまは無理でも、いつか科学捜査が追いつくかもしれない。
その“未来への期待”に賭けて証拠を残すのである。ロマンと言うと軽いが、これはもう執念に近い。目の前で解けない謎を、未来の誰かに託す。その気の遠くなるような仕事が、のちの解決にちゃんとつながるのがたまらない。
そして最後のバトンを受け取るのが若い女性刑事というのも、とてもよかった。昭和の時代ならまず想像しにくい立場の人物が、新しい感性と科学捜査を武器に最後の一手を打つ。とはいえ、それは彼女ひとりが天才だからではない。これまで何十年も積み重ねられてきた捜査が土台にあって、ようやく時が満ちたのだ。
実にいい。
しかも、その最後の刑事が、最初の刑事とはまるで正反対のタイプであることにも感動した。捜査というのは、一人でプレイするものではないのだ。
いろいろな刑事の思い入れがたっぷり詰まった捜査ノート。それを受け取った最後の花序が見つけた最後のライン。
全部がつながって、やっと一つの事件が終わる。
「百年の時効」は、まさに警察という組織の力強さを描ききった小説だった。
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刑事たちの昭和は終わらない。
真犯人が見つかる、その日まで。1974年に起きた一家惨殺事件。
未解決のまま50年――。
アパートで見つかった、一体の死体によって事件の針は再び動き出す。嵐の夜、夫婦とその娘が殺された。現場には四人の実行犯がいたとされるが、捕まったのは、たった一人。策略、テロ、宗教問題……警察は犯人グループを追い詰めながらも、罠や時代的な要因に阻まれて、決定的な証拠を掴み切れずにいた。50年後、この事件の容疑者の一人が、変死体で発見される。
現場に臨場した藤森菜摘は、半世紀にも及ぶ捜査資料を託されることに。上層部から許された捜査期間は一年。真相解明に足りない最後の一ピースとは何か? 刑事たちの矜持を賭けた、最終捜査の行方は――。
感動、スリル、どんでん返し……。エンタメの妙味が全て詰まった、超ド級の警察サスペンス
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