爪切男の「午前三時の化粧水」を読んだ。
通りすがりの小学生に「太っちょゴブリン」と呼ばれた男が、己の見た目を省みて化粧水を手に取る。
そんな、悲しくも笑える出発点から始まるこのエッセイ「午前三時の化粧水」は、美容に目覚めた中年男性のビフォーアフターを描いた変則的な成長物語だ。
爪氏はかつて「無頼派」を気取っていたという。その彼が、自らを「もち肌つるつるのぽっちゃりおじ」になるほど美容にのめり込んでいく過程が、本作の軸になっている。
しかも、この『午前三時の化粧水』、一見ふざけているようで、読んでいくと意外とエモい。軽妙な筆致の裏に、私小説的な切実さがにじみ出ていて、どういうテンションで読んだらいいのか結構戸惑う。
正直に言えば、私はまだ「昭和のおじさん」的価値観の殻を破りきれていない(おばさんだけど)。
だからこそ、「おじさんが化粧水?シートパック?アイプチ???」とややついていけない部分もあった。
それでも、爪氏の飄々としながらも悪びれず、自分の変化をまるごと肯定する姿には胸を打たれた。美容に性別も年齢も関係ない、自分を大切にするという一点において、すべての人間はフラットであるべきなのだろう。
最初は洗顔後の化粧水だけだった彼が、だんだんと手を広げていくのがまた楽しい。
中でも養命酒のくだりは「案件動画?」と思うほどの激推しで、思わず私も検索しちゃった。
冷え性に効き、シナモン風味でアイスにかけても美味、さらには寝付きまで良くなるとか。なんという万能薬。
それだけでも十分面白いのだが、実はこのエッセイの途中で彼は恋に落ち、同棲を経て結婚までしてしまう。その過程で何度も登場する「彼女のおかげ」や「最愛の妻」といったフレーズが、妙にしみるのだ。
昭和生まれ男子で「最愛の妻」なんて言える人、そういない。彼は本当に一皮むけてんなー
そして最後に添えられた、奥様からのメッセージには不覚にもキュンとしてしまった。ああ、愛とは与えることなのだな。この二人はその真理を、自然と理解している数少ない組み合わせなのだろう。見習え、世の夫婦どもよ。(誰?)
そんなわけで、私も今夜はちゃんとお手入れしてから寝ようと思う。たとえ誰にも見られなくても、自分のために。
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40歳を過ぎた体重125キロの作家が、ひょんなことから「美容」と「健康」生活に目覚めたら……。
肌はもちもちプルンプルン、30キロもやせ(リバウンドも)、そして、最後にはなんと結婚!?ドラマ化された『クラスメイトの女子、全員好きでした』に続く、やさしくて、おもしろくて、ためになって、ときに泣ける、前代未聞の「おじさん美容エッセイ」全37篇。
“美容の師”として尊敬する女優・タレントMEGUMIさんとの特別対談も収録。
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