谷川 嘉浩 の「スマホ時代の哲学: 「常時接続の世界」で失われた孤独をめぐる冒険
」を読んだ。いや、聴いた。
ゾンビ映画で最初にゾンビにやられてしまう人たちには、ある共通点がある。
「謎にハイテンションで妙に自信満々」。
自分がわけのわからない状況に置かれていることに気づいていないのだ。
自分が迷子だと自覚していない迷子ほど厄介なものはない――
『スマホ時代の哲学』は、「常時接続の世界」で失われた〈孤独〉を見つめ直すための一冊である。
著者は、現代社会に蔓延する“すぐに解決したがる”風潮に対して、「すぐわかろうとしないこと」の大切さを語る。
そのキーワードのひとつが「ネガティブ・ケイパビリティ」だ。いまいちピンとこない概念だったが、本書の文脈では「スッキリしないことも受け止める力」として紹介されていた。
自己啓発書が「答え」や「成長」を求めがちな中で、この曖昧さを抱える姿勢は、実に新鮮。
確かに私っては「スッキリしない」=「つまらない」と思いがちだったと反省。
また興味深かったのが、「自分の中に複数の自分を持つ」という考え方だ。
普通、自分の中にある声は“モノローグ(独白)”であると考えるが、それぞれ異なる視点や立場を持つ「複数の自分」を意識することで、内なる“ダイアローグ(対話)”が生まれるのだという。これは、先日読んだ平野啓一郎の「分人」概念にも通じる発想であり、腑に落ちた。
本書は哲学者の名前が多く登場するが、肩肘張らずに読めるのも魅力だ。語り口がとても柔らかく、「哲学者って怖くないよー、普通の人だよー」と読者に語りかけてくる。
ときおり現れる京都弁もまたいい感じだ。
さらに、驚いたのはエヴァンゲリオンの引用の多さだ。実は私はこの作品をちゃんと観たことがなかったのだが、本書を通じて「エヴァって実は哲学的だったのか」と気づかされた。
ちょっと辛気臭そうだと思って敬遠していたけれど、小説版があるなら読んでみたい(今更?)。
『スマホ時代の哲学』というタイトルのとおり、この本はスマホ時代を生きる私たちが、つながりの中で見失いがちな孤独をどう回復していくかを丁寧に描いている。
すぐに答えを求めるのではなく、わからなさを味わいながら考えること。それが、哲学の面白さであり、この本の核心なのだと思う。
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SNSによって失われたものを、
哲学者とともに取り戻す旅に出る。
そんな素敵な本ほかにないです!
――新書大賞2025受賞『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』著者
三宅香帆氏
即時(アジャイル)で常時(ユビキタス)なスマホ時代に、
超遅効で来る、孤独の消化不良(グルメ)
それでも、尚、「哲学」は美味い!!
高解像度モニターの中に満腹感を探すより
本書の導きとともに、知恵の樹の実の素晴らしき胃もたれにありつけ!
――『チ。―地球の運動について―』作者
魚豊氏
メディアで話題の1冊が、18000字超の増補と改訂を加え、ついに新書化!
■付録 「『スマホ時代の哲学』を実践する人のためのQ&A」
■ドミニク・チェン氏(発酵メディア研究者)による解説「『スマホ時代の哲学』の発酵」
""つながっているのに寂しい、常時接続の世界""を生き抜くための書。
スマホは私たちの生活をどう変えてしまったのか?
いつでもどこでもつながれる「常時接続の世界」で、
私たちはどう生きるべきか ?
ニーチェ、オルテガ、ハンナ・アーレント、パスカル、村上春樹、エヴァetc……
哲学からメディア論、カルチャーまで。
メディア出演続々・新進気鋭の哲学者が、様々な切り口で縦横無尽に問いかける!
「常時接続の世界」において、私たちはスマホから得られるわかりやすい刺激によって、自らを取り巻く不安や退屈、寂しさを埋めようとしている。
そうして情報の濁流に身を置きながら、私たちが夢中になっているのは果たして、世界か、他者か、それとも自分自身か。
そこで見えてくるのは、寂しさに振り回されて他者への関心を失い、自分の中に閉じこもる私たちの姿だ。
常時接続の世界で失われた〈孤独〉と向き合うために。
哲学という「未知の大地」をめぐる冒険を、ここから始めよう。
◆目次
はじめに
第1章 迷うためのフィールドガイド、あるいはゾンビ映画で死なない生き方
第2章 自分の頭で考えないための哲学――天才たちの問題解決を踏まえて考える力
第3章 常時接続で失われた〈孤独〉――スマホ時代の哲学
第4章 孤独と趣味のつくりかた――ネガティヴ・ケイパビリティがもたらす対話
第5章 ハイテンションと多忙で退屈を忘れようとする社会
第6章 快楽的なダルさの裂け目から見える退屈は、自分を変えるシグナル
おわりに
あとがき
増補改訂版 限定付録「『スマホ時代の哲学』を実践する人のためのQ&A」
あとがき――増補改訂版によせて
『スマホ時代の哲学』の発酵(解説:ドミニク・チェン氏)
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