第68回江戸川乱歩賞受賞作。
史上最年少、選考委員満場一致。
など、新聞の書評などでみて気になっていた「特殊設定」ミステリー、荒木あかねの「この世の果ての殺人」を読んだ。
というか、Audible(オーディブル)聴き放題に追加されていたので聞いた。
参考:本の虫へのご提案あ~読めないなら読んでもらえばいいのよ~
あらすじ
小惑星「テロス」が日本に衝突することが発表され、世界は大混乱に陥った。そんなパニックをよそに、小春は淡々とひとり太宰府で自動車の教習を受け続けている。小さな夢を叶えるために。年末、ある教習車のトランクを開けると、滅多刺しにされた女性の死体を発見する。教官で元刑事のイサガワとともに、地球最後の謎解きを始める――。
そもそも、あと三ヶ月で小惑星が熊本県に落ちて全員死ぬ、と言うのに福岡県の太宰府で殺人事件が発生。
地球が滅亡することが発表されるやいなや、暴動が起こり、自殺が増え、我先に人がニケ出していく中で、何故殺人が起こるのか、そして犯人は殺人を隠蔽しようとしている。
とにかく極限状態で、色んなところで自暴自棄になったり暴徒化した人々の死体が累々と積まれている。完全な非常事態だ。
絶望した父親が昨日自殺して、その「処理」が大変だったので玄関前に放置せざるを得ないような状態のなか、家には二階に引きこもりの弟が随分前から引きこもる続けている。
主人公はハルはなぜか自動車学校に通い、残った食料をたべ、弟の食事をドアの前に運び、淡々とその日を待つ。
この話は、そんな不思議な設定を土台にしつつも、しっかりと本格ミステリーなところがとてもおもしろかった。
自動車学校に行ってみらたら先生がいたので、教習をうける、というなんだかよくわからない感じで始まるバディ。
ちなみに自動車学校のイサガワ先生は、元警察官で過剰なまでに正義感が強く、腕っぷしもめっぽう強い女性。
一方、生徒は今までの人生にちょっぴり後悔が残っているのか、そこはかとなくどんよりしている(と自分で思っている)23歳のハル
そんな二人はは、明らかに他殺の死体を発見し、犯人を見つけるために捜査を始まる。
どうせみんなあと三ヶ月で死ぬのに、どうして人を殺すんだろう?
そうぼやきつつ、ほどんど人がいなくなった町で事件を解決するために教習車を乗り回し、いつの間にかバンドワゴンのように仲間が集ってくる。
みんないい子だなぁ。
物語の犯人は意外といえば意外な奴だが、動機が、なんというか「単に狂ってる」だけだった。
これを拍子抜けとするか、いやいやだからこそ人生はつじつまがあっているとするかは、受け取り方しだいかな。
ネタバレを防ぐため激しく遠回りな言い方をしてしまった。
犯人はちっとも想像できてなかったんだけど、そもそも「ほどんど人がいなくなった街」という設定なので、
ででてきた登場人物となると、あいつかあいつかあいつ、って感じになる。
それでも、犯人が誰かなんて最後まで(私は)気づかなかったので、作者に上手に騙されて嬉しい。
やっぱり本格ミステリーはこの、そうか!騙された!というカタルシスを味わえる物が良い、そういう意味ではこれはディストピア小説ではなく「本格ミステリー」のくくりで間違いない。
こんな本が好きな人におすすめ
終末小説繋がりといえばやはり、伊坂幸太郎の終末のフール
どうころんでもみんな死ぬのに、でも死ぬまであと数年というこの極限のタイムリミットで、人はどこまで最悪になるのか、そしてその中でどんな良い生き方ができるのか、想像せずにはいられない。
惑星が地球に突っ込んでくる、っていたらこれ。
そして、特殊設定で大真面目に本格ミステリーをやっちゃおうというくくりでは「屍人荘の殺人」シリーズ。
これも面白かったわ~
どうやら、ミステリ界は「特殊設定」ばやりなんですって。
転生したら金田一耕助だった。みたいなやつがで来る日も近いと見た。
(もう出てたりして)