土屋うさぎの「謎の香りはパン屋から」を読んだ。
読む手を止めるたび、ふわりとパンの匂いが鼻腔をくすぐる気がして、お腹が鳴った。まったく罪なミステリーである。グルテンフリーチャレンジ中の人間が読む本ではない。
「謎の香りはパン屋から」は、主人公・小春ちゃんの視点で進む物語だ。大学1年生で、パン屋でバイトをしながら漫画家を目指している。ひとことで言えば、ほんわかしていて観察眼の鋭い子。だがその洞察力が、バイト仲間の秘密を言い当てたり、おばあさんの記憶の中にしかないカレーパンをみつけたりと、ちょっとした探偵ばりに冴えている。小春ちゃんの探偵気質が発揮されるたび、読者もその場に居合わせたような気持ちになる。
「謎の香りはパン屋から」は、誰も不幸にならないという点が魅力だ。事件は起きるが、死体は出てこないし、登場人物の誰かが破滅することもない。その代わりに描かれるのは、人と人の関係性や記憶、そして食べ物が持つ力だ。とくにパン。香ばしくてあたたかいパンが、ストーリーの要所要所で人をつなぎ、心を溶かしていく。
読後には、幸せな気持ちが残る。読んでいる最中も、読み終わった後も、脳内はパン祭り。バターの香り、サクサクのクロワッサン、具沢山のカレーパン……思わずパン屋に走りたくなる。作者の筆致がやさしく、読者をふんわり包み込むようで、これはミステリーというより“癒し小説”と呼びたくなるほどだ。
また、作中の小春ちゃんが漫画家志望であることに重ねて、土屋うさぎ自身も漫画家志望なのだという。ミステリー作家を目指している者からしたら「ずるい!」と思ってしまいそうだが、いや、なんもズルくなんかない。
それだけの努力と才能が、物語の端々にあらわれている。そもそも、小春ちゃんのような人物を生き生きと描けるのは、作者自身が日常を丁寧に観察し、感受性を大切にしているからだろう。
「謎の香りはパン屋から」は、パンの香りが誘う、小さな奇跡の物語だ。
表紙もズルいよね。なんかジブリっぽいし。
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2025年
第23回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作
クロワッサン、フランスパン、シナモンロール、チョココロネ、カレーパン…
焼きたてのパンの香りが広がる〈日常の謎〉ミステリー!
選考委員絶賛!
「全体を包む空気感が魅力的」――大森望(翻訳家・書評家)
「おいしそうなパンの魅力で読ませる」――香山二三郎(コラムニスト)
「読者のもてなし方を分かっている」――瀧井朝世(ライター)
「決め手は、この味わいの心地よさだ」――吉野仁(書評家)
(あらすじ)
大学一年生の市倉小春は漫画家を目指しつつ、大阪府豊中市にあるパン屋〈ノスティモ〉でアルバイトをしていた。あるとき、同じパン屋で働いている親友の由貴子に、一緒に行くはずだったライブビューイングをドタキャンされてしまう。誘ってきたのは彼女のほうなのにどうして?
疑問に思った小春は、彼女の行動を振り返り、意外な真相に辿りつく……。パン屋を舞台とした〈日常の謎〉連作ミステリー!
次に読みたい本
大丈夫、私には米粉がある。
ちなみに、騙されたと思って、8月からグルテンフリーをしているのだが、まじでお肌の調子がよくて(まあ自己満足何だけど)ほんとにツルツルになったので、みなさんも騙されたと思ってやってみちゃってほしい。
あんまりにも効果を熱く語りすぎて「ツルツルうるせー」と言わしめたほどである。
ちなみに、体重はほとんど減りません。でもまじでツルツルになるから。ツルツルに。

