柳広司の「パンとペンの事件簿」を読んだ。
1910年、刑期を終えて出獄した堺利彦が、ある団体の設立を宣言する。その名も「売文社」。無実の罪で極悪人と謗られ、まともな職に就くことができない社会主義者たちのために創られた、文章制作を請け負う新会社だ。社の理念は「パンとペン」。新聞雑誌の原稿に、慶弔文、翻訳、手紙の代筆など。売文社は生活費のパンを得るためなら、ペンで解決できるあらゆる問題を引き受ける。ひょんなことから売文社一味と行動を共にするようになった“ぼく” は、社に舞い込む奇妙な依頼や謎を一緒に解決することになるが――。世の不条理にユーモアで立ち向かった実在の人々をモチーフに描く、傑作連作短編ミステリー。
Audibleオリジナル作品は、音読ありきで書かれているのでとても読みやすい、というか聞きやすい。
てっきり、コミカルなフィクションかと思っていたが、先程調べたら「売文社」もその社長の「堺利彦」も実在していた。
物語の語り手は運悪く解雇された、というと簡単すぎるか、社内の人達と労働待遇改善を申し出る予定だったのが、いざとなると皆知らん顔、ひとりだけボコボコにされて冬の路地裏に放り出された青年の「僕」。
そこにちょうど堺とその娘、それから売文社のメンバーが通り掛かり、次の仕事が見つかるまで居候させてもらうのだが、その短い間にいくつかの事件を解決する。
ペンは剣よりも強し、とはよく言われるが、ひとが生きていくためにはパンも必要、売文社はペンでパンを買うために堺がつくったいわゆる代書屋だ。
社会主義者に対する弾圧がひどいこの時代、一度主義者とみなされたらまず仕事にありつけない。そんな食べていくのに困った社会主義者たちの生計を立てるための売文社だが、なかなか個性的なメンバーが集っている。
主義者でもなんでもないノンポリの「僕」だったが、みなの朗らかさによって社会主義者への差別が間違ってたことに気づいて、一緒にいくつかの事件を解決したりしながら、自分の居場所を作っていく。
ふんふん、と軽い気持ちで読了したがこの、明治から大正、昭和初期に渡る時代の背景、確かに学生の時に勉強したはずなのに「大逆事件」も「大正デモクラシー」も記憶の底の方に単語としてあるようなないような・・・くらいの知識の無さ。
教養がないとエンタメも心から楽しめない!
今からでも遅くないのでちょっとだけ調べた。
・大逆事件は、1910年(明治43年)に発生した日本の近代史上最大の政治的弾圧事件です。幸徳秋水ら12名が死刑とされましたが、現在ではこの事件の大部分が政府による政治的でっち上げだったとされています。
・大正デモクラシーは、1910年代から1920年代にかけて日本で起こった民主主義的・自由主義的な思想や運動を指します
・堺利彦は社会主義思想の普及と労働者の権利向上のために尽力し、日本における社会主義運動の父と呼ばれるようになりました
久しぶりに日本史の動画とか見ちゃった。近現代史ってあんまり面白さを感じないのは私だけだろうか?
江戸時代とかは忍者とかいて楽しそうじゃん?
でもここらへんは所詮ひいひいばあちゃんが見てるくらいなので、歴史ロマンというより古いニュース感ががあるからじゃないかしら。
私が一番惹かれるのは古事記あたりかなーもはや歴史物というより、伝説。
しらんけど。
次に読みたい本
小説の中にもこの大きなリボンをつけた娘さんがでてきます。