村田 沙耶香 の「信仰」を読んだ。
なんだかこわい本。しばらく読んであの「コンビニ人間」の人と気づいて通りでともおもう。狂気と日常が同居している感じがとても恐ろしい。
興味深いのは、小説と見せかけて突然挿し込まれるエッセイのような文章たち。ジャンルの境界線を軽やかに飛び越えるその構成にも、またぞくりとさせられる。読んでいると、これは本当にフィクションなのか、それとも彼女の実体験なのかと混乱してくる。村田沙耶香という人には、現実と虚構のあいだに明確なラインが存在しないのでは?と思わせる瞬間が何度もある。
表題作「信仰」はあまりに現実的なことばかり言って人から夢や楽しみを奪う女の話。
「こんなの原価◯円くらいじゃん、馬鹿らしい」が口癖。
これ、確かに言っちゃいがちではある。一瞬同調しかけるが、それを言っちゃあ夢の国などは特に成り立たない。
そう、人はその商品に素敵さや夢の価格を織り込んで購入しているのである。
しかし、現実的すぎた彼女は周囲から距離を置かれ、自分を変えるために選んだ道が、よりによってカルト宗教への入信だったという皮肉。極端から極端へ振り切れる真面目さが、恐怖でもあり、村田作品に通底するテーマでもある。これはまさに、「コンビニ人間」を読んだときの恐怖と通じている。
一方で、「信仰」には意外にもSF的な短編がいくつも収録されている。
特に「書かなかった小説」は印象的。
自分のクローンをヨドバシカメラで購入できる世界で、4体のクローン家電と共同生活を送るうちに、そのうち2体が恋愛関係となり自分を含めて三角関係となり、ドロドロの人間関係が繰り広げられる。なんというか地続きにある不安定感にゾットする。
自分は宇宙人だ、と告白するような「彼らの惑星へ帰っていくこと」もエッセイかと思った。エッセイなのかもしれない。その語り口が、あまりに自然で、現実とフィクションの境界が曖昧になる。
総じて「信仰」は、全体的に薄ら寒い読後感が漂う短編集だった。どの話も奇抜だが、不思議と「わかる気がする」部分があり、それがまた怖い。この感覚こそ、村田沙耶香の魅力だと思う。
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「なあ、俺と、新しくカルト始めない?」
好きな言葉は「原価いくら?」
現実こそが正しいのだと強く信じる、超・現実主義者の私が、
同級生から、カルト商法を始めようと誘われて――。世界中の読者を熱狂させる、村田沙耶香の11の短篇+エッセイ。
表題作は2021年シャーリィ・ジャクスン賞(中編小説部門)候補作に選ばれました。文庫化にあたり、短篇小説「無害ないきもの」「残雪」、エッセイ「いかり」を追加。
書き下ろしエッセイである「書かなかった日記――文庫版によせて」を巻末に収録。〈収録作〉
「信仰」「生存」「土脉潤起」「彼らの惑星へ帰っていくこと」「カルチャーショック」「気持ちよさという罪」「書かなかった小説」「最後の展覧会」「無害ないきもの」「残雪」「いかり」
次に読みたい本
先日からひどい風邪を引いて、典型的な風邪の症状「頭痛、鼻水、鼻詰まり、咳、そして発熱」をコンプリート中である。
ただの風邪でもこんなにつらいんやー(ただの風邪と言い張っている)
