「殿さまの日」は、星新一にしては珍しい、いわゆる時代物だ。
しかし、流石というほかないくらいドライでクールな時代物になっている。
おそらく江戸時代なんだろうけど、なんとなくCGで描かれたEdo cityって感じで、SFぽい空気が漂う。
表題作「殿さまの日」とは別に「吉良家の忠臣」、「紙の城」など11篇からなる短編集。
殿さまの日は、なんという事件も起きないが殿さまの日常が語られる。
殿さまって大変なんだねぇと、同情したくなる事しきり。
暑くても寒くても、余計なことは言わず語らず。
いらん事言えば下々の者の責任問題になりかねず、江戸城に参内した時は少しのミスも許されず…。
これ、奇しくも大好きな漫画家、川原泉の「殿様は空のお城に住んでいる」で同じ苦悩が描かれていて、こちらは藩の不正を知りながら無能のふりをして機を待つ、という話。
川原泉に間違いなし。みんな読んだらいいのにとも思っている。
独自のユーモア、人間観察とマイペースな感じ。飄々という言葉がすごく似合う。
殿さまの日も面白かったけど、最後の紙の城も良かった。
最近、kindle unlimitedで星新一がどかっと追加されたことだし、暑い夏にカラッとした話が読みたい方のオススメ。