iCHi's diary~本は読みたし、はかどらず~

主に読書録。読み終えた本がこのまま砂のように忘却の彼方に忘れ去られるのが申し訳ないので、書き留める。要は忘れっぽい読者の読書日記。

「影男」明智小五郎の盟友になりそう

江戸川乱歩の「影男」を読んだ。


読んだことがあるような、ないような、やっぱりあるような。

乱歩先生ったら、鏡の部屋とかパノラマの世界がお好きよね。

 

この作品は完全にエンタメ一直線。途中、迷走しているのかと思うほど影男のエピソー

ドが続く。

けれどそれが胸のすくような活劇であり、勧善懲悪であり、素敵な影男の活躍に――完全に主役の座を食われてしまっている感のある明智小五郎

「いつ出てくるのかな?」と思っていたら、ようやく後半に登場。
そしてスパッと裏をかき、影男や殺人請負会社、恋人誘拐業の男たちを逮捕してしまうのだ。
(ひどい生業があるもんだ)

 

でもね、読んでいるかぎり影男って、ほかの二人に比べてそんなに悪いことしていないんだよね。
むしろ、念入りな人助けのほうが多いような気がする。

 

だからなのか、明智に逮捕されたときも、なんだか嬉しそうだった。
きっとこの二人、気が合うんじゃないかな。

 

この後の展開があるとすれば、影男は軽い罪で済んで、明智と盟友として大活躍――なんてルートもありそう。
ま、乱歩先生はすでに故人なので、今さら続編は期待できないか。
誰か、そういうの書いてないかしら?

 

今回の話でなんといっても圧巻なのは、「パノラマ世界」の描写。
もう「にょたい(女体)」って何回書いた!?ってくらい、にょたいとやららたい(裸体)が登場する。

 

かなり真剣に読んでないと、一体何が起きているのかわからなくなるが――
裸の女性が100人くらい、芸術的装飾となって設えられていて、それが八角形の鏡に囲まれたパノラマの中にある。
まるで“生きている人間の森”。
とはいえ、そこまで刺激が強いわけではないので、ギリギリ子どもでも読める…かも?
R15くらいだと思う。知らんけど。

 

終わるときは意外とあっさり終わってちょっとガクッとなったけど、そこもなんかノリに乗って書いている勢いを感じた。

実際は、↓の赤いカブトムシは読んでいないのだけど「赤いカブトムシ」うーんさては血まみれだな?

 

明智小五郎事件簿 戦後編 IV 「影男」「赤いカブトムシ」 (集英社文庫)

東に人の弱みを探してゆすり、西でネタを拾って小説を書き、南に薄倖の少女を救い、北では美女を侍らせての豪遊……やることなすこと図に当たり意気揚々の影男。しかし殺人請負会社に関わったことから前途は一天俄に掻き曇り、刺客に狙われる破目に。悪党が鎬を削る活劇に快刀乱麻の腕の冴えを見せるは、ご存知名探偵!

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