横溝正史の「悪魔の設計図」を読んだ。
角川文庫の横溝正史シリーズといえば杉本一文の表紙絵だが、今回は群を抜いて目立つ!遠目にはグロテスクだけどよく見ると美女が苦悩している。よく見てもグロテスクかな。
庭の隅に立つ大木に、セメントでギッチリ充填された洞がある。そこには一握りの長い髪が生え出し、冷たい秋風にバサリバサリと揺れていた。すぐに発掘が始まり、やがてそこから女の真っ白な脛が…。役者殺しを皮切りに、たて続けに殺人が起きた。事件解決に乗り出した由利先生と三津木俊助は、被害者が一様に或る大富豪の隠し子である事実をつきとめた。だがその時、最後の遺産相続人である盲目の娘に、犯人の魔の手が! サスペンス豊かに描く本格推理小説。表題作ほか2篇を収録。
どうやら、由利先生登場の一編のようで「由利先生がいかに探偵になったのか」が書かれています。この部分だけでも必読かと。
私が一番最初に読んだ「蝶々殺人事件」では、由利先生ったら美人の奥さんをお貰いになったばかり、という設定だったため、今回の寂しいやもめ暮らしの描写に驚いた。
初の由利先生シリーズ「蝶々殺人事件」 - iCHi's diary~本は読みたし、はかどらず~
悪魔が計画通りに殺人を行うことを設計図、と言ったのだが、この犯人はクレイジーなので親子との情とか全くない。
我が子を計画通りに粛々と手にかけていくのだから、ひどい。とってもねちっこい性格で、なんでそんな酷いこと考えつくかな、と思うほどの奴だ。
ネタバレで申し訳ない。
由利先生は、一発で変装を看破したかと思えばあっさり犯人に出し抜かれたりして忙しい。
それにしても美しい盲目の少女が助かってよかった。
表題作他ニ編は次の通り。
「石膏美人」
由利先生の相棒、三津木俊介の恋人とその家族の話。これかなり面白かった!
男の人同士の過剰なまでの友情に、最後鼻がつーんとした。
執着が強すぎて憎さ百倍と犯行が起こるのだが、犯人が疑っていたことは全て誤解、悪意のない1人の人物が原因で人生が狂ってしまっただけだったのだ。
最後の最後に誤解がとけるのだけど、由利先生は犯人の自決を止めなかった。
そっちの方がどれだけ優しいか、と。
今だったら、日本推理協会のコアコンプライアンスに違反しそうだ。あるのかどうか知らんけど。
この話、最後我らが三津木俊介、振られてしまうのであります。可愛そう〜〜
「獣人」
これはもうアレですね、江戸川乱歩のジュブナイルかって感じの話。
ゴリラのような獣のような正体不明の生き物の恐怖。
若返るため理性を捨てた1人の学者ホラーのようなサスペンス。
ただ、由利先生がまだ若い学生の頃のお話なので、貴重と言えば貴重かも。
その頃からなかなか頼りがいのあるナイスガイだったよ。
由利先生の若い頃を知りたい方におススメ!