横溝正史ミステリ大賞優秀賞受賞「悪い夏」を読んだ。
読後感は決して良くないのに、途中で読むのをやめられなくて一気だった。
佐々木守という、とっても人の良いというか真面目なだけが取り柄で彼女もいない、なんとなく公務員になって、運悪く生活保護のケースワーカーに配属されている男がいる。それでも、彼なりのできるかぎりの誠意をもって仕事をしていた。
同僚が生活保護の打ち切りをちらつかせて、シングルマザーの女性に肉体関係を迫ったり、お金をゆすりとろうとしていることを知り、彼女の家を訪問する。
そこには4歳の娘みそらがいて、ついついクレヨンを買ってあげる約束をしてしまう。
守はその約束のために再訪した彼女の家で図らずも恋に落ちてしまう。
そう、このときは二人の恋は本物だったのだ。
本当にこの二人と家族になるつもりだったのに、ヤクザとその中途半端な手下と、レディース上がりのヤクザの女が、二人の間にぐいぐい割り込んできて、結局「なんにも悪いことはしていないのに」望んだ幸せの10倍くらいの不幸に襲われる。
本当にヤクザって怖いのね・・・
それは、力が強いとか武器を持っているとかそういうレベルではなく、どんな人間でも食い物にするし、容赦なく追い込みをかけるし、やさしい言葉もお金も全てはその場限りのもので全く心がない。つまり、私達が思っている常識が通じない。
謝ったって許してくれるとかないのだ。
私この小説途中から読むのが辛かった。
愛することを知らずに育った彼女が、守とおままごとのような家庭を作りはじめてぎこちなく笑えるところで終わればよかったのに。
その後は、どんどん悪い方へしか行かないの。
生活苦で自殺する母子も出てくるしさ・・・
生活保護については、確かに不正受給者は存在するんだろう。
真面目に年金を収めた人の老後より生活保護のほうが金額が高くなるなんて確かに意味が解らない。
だが、セイフティーネットだからなぁ。もらっている人がずるいとか悪いではなくて、年金のほうが少ないことに怒るべきだし、何でもかんでも自己責任という国の仕組みもどうかとおもうよね。
ベーシックインカムも悪い話じゃないとおもうなー
最低限お金がもらえたら、働かなくなる人もいるけど退屈だから働くっていう人もいると思う。嫌な仕事をする人がいなくなるかなー
社会に出てそろそろ30年、これだけ長いあいだ働いて収めた税金が、本当に困っている人を救うのに使われるのであれば、私は文句言わない。ただ、正しくあってほしいと思う。
26歳の守は生活保護受給者のもとを回るケースワーカー。同僚が生活保護の打ち切りをチラつかせ、ケースの女性に肉体関係を迫っていると知った守は、真相を確かめようと女性の家を訪ねる。しかし、その出会いをきっかけに普通の世界から足を踏み外して――。生活保護を不正受給する小悪党、貧困にあえぐシングルマザー、東京進出を目論む地方ヤクザ。加速する負の連鎖が、守を凄絶な悲劇へ叩き堕とす!
この本、私の中で綾野剛で映画化されているとばかり想っていたのだが、ちがった。先程見たら、映画化決定しただけで、公開は2025年とのこと。およよ。
ちょっと調べたら、これと混同していることが判明。
「悪」という一文字しか被ってないのに。
次に読みたい本
夏つながりで。2巻まで娘が買ってたので早く続きを買ってくれないかなーと。