小原 晩の「これが生活なのかしらん」を読んだ。
若い女の子が「まだ何者でもない」希少な時期をすくい取ったかのようなエッセイだ。
時系列はバラバラだが、
勉強ができなかった学生時代。
先生に片思いをしていた高校3年生。
そして、家から出たいばかりに選んだ就職先と寮生活。
友達とのルームシェア、彼氏との同棲。
夢のように楽しいばかりではないが、もちろん悪いことばかりでもない。
誰にでもあるその時代を切り抜いてきちんと箱にしまったそんな作品。
だからこそタイトルの「これが生活なのかしらん」が光る。
ちょっといいこともがっかりすることも、禍福は糾える縄の如し「これが生活なのかしらん」
彼女はこのエッセイの最後に、長い低迷期を迎える。
その中で時間を掛けて自分が何をしたいのかじっくり見極めるシーンが有る。
自分に問い続けた「私はなにかやりたいの?」に答えたのは幼子のような自分声で「書きたい」だった。
普通の女の子のエッセイに見せかけて、才能の塊だと感じるのはこういうところだ。
彼女は、このあと自費出版でエッセイ本を出し、その本が異例のヒットとなったらしい。
みんなが感じているけど言葉にできないような、ふわふわしたあの「エモい」感じを少しのおかしみでくるんで追体験させてくれる。
おかしみとかなしみ、おしゃれさと必死さのさじ加減が絶妙だ。
爆笑エッセイでもないし、泣かせにかかるいい話系でもないんだけどなんだが応援したくなるんよね。元気だせよって言ってこっちもちょっと元気になるというか。
なんか面白いエッセイないかなーと思っている人には響くと思う。
まさかこれが自分の生活なのか、とうたがいたくなるときがあります。
それは自分にはもったいないようなしあわせを感じて、という場合もあれば、
たえられないほどかなしくて、という場合もあるのですが、
それはもちろん自分の生活であるわけです。その自分の生活というものを、つまりは現実を、
べつだん、大げさにも卑屈にもとらえず、そのまま受けいれたとき、
みえてくるのは「ほのおかしさ」ではなかろうかと思います。ままならない生活にころがる「ほのおかしさ」を私はずっと信じています。
次に読みたい本
同じ作者のデビュー作、自費出版で出した本が異例の大ヒットしたらしい。
「ここで唐揚げ弁当を食べないでください」ってどういう状況や!?