iCHi's diary~本は読みたし、はかどらず~

主に忘れっぽい私の読書録。最近はもっぱらAudibleで聞く読書

「うつくしが丘の不幸の家」びわが食べたい

町田そのこの「うつくしが丘の不幸の家」を読んだ。

 

陸の孤島と言われるほど辺鄙な場所にある新興住宅地「うつくしが丘」。

そこに建つ大きな枇杷の木を持つ家を中心にした連作短編集。

 

その家に住んだ数組の家族、を現在から未来へかけて追いかけていく構成になっており、それぞれの状況は違えどとてもあたたかい気持ちになる。

 

ただし、周りから見ると住人がコロコロ変わる不幸な家に見えているようで、そのせいでタイトルは「不幸の家」になっている。

 

どの話も面白かったけど親になるとはどういうことか、親離れと子離れをテーマにした「ままごとの家」が良かった。

 

同世代の母親の話だからかもしれない。

 

高3の息子が彼女を妊娠させてしまい、父親である旦那は勝手に「大学を出るまで親が面倒を見る」と決めてしまう。

 

親であれば、子どもの背負った荷が「重かろう」と肩代わりをしてしまいがちだ。

 

だがそのせいで背負える荷物も背負えない、いつまでも甘えた子どもになってしまう。それを思い知る話。

 

確かに、いつかは巣立たねばならない子どもたちを、ちゃんと見送れるように親こそ覚悟をしなければならない。

 

実は私もこの春、娘二人を同時に家から出すのだが、独立と名ばかりで移動の手配も新生活の準備も何から何まで心配。

なんなら、バイト先も親に相談してと言ってしまったほどだ。

いやかなり親馬鹿になってたわ。反省。

 

「さなぎの家」も良かった。

自分の母親にすら見捨てられるこんなクズ男いるのかね~

自分の母親や祖母の様子をみていた幼い娘は「女の墓  地獄行き」と落書きをする。
ゾットするエピソードだけど、今を生きる者がその慣習を勇気を持って断ち切らねばならない。親世代が押し付けたどうしょうもない縛りを幼い子どもに渡してはいけない。

 

本書では、一貫してその家と隣に住む隣人の女性が出てくるのだが、もう一つ出てくる物がある。それは「枇杷の木」。

 

今私は、全然季節じゃないのにびわが食べたくてたまらない。

しかも、びわの種焼酎も作りたくてしょうがない。

 

 

うつくしが丘の不幸の家 (創元文芸文庫)

それでもわたしたち、
この家で暮らしてよかった。
人生の喜びも悲しみもすべて包み込む、
本屋大賞受賞作家が贈る傑作家族小説。


海を見下ろす住宅地『うつくしが丘』に建つ、築 21 年の三階建て一軒家を購入した美保理と譲。一階を念願の美容室に改装したその家で、夫婦の新しい日々が始まるはずだった。だが開店二日前、偶然通りがかった住民から「ここが『不幸の家』って呼ばれているのを知っていて買われたの?」と言われてしまい……。わたしが不幸かどうかを決めるのは、家でも他人でもない。わたしたち、この家で暮らして本当によかった──。「不幸の家」で自らのしあわせについて考えることになった五つの家族の物語。本屋大賞受賞作家による、心温まる傑作小説。

【目次】
第一章 おわりの家――美容室開業に選んだ家を「不幸の家」と言われた女性。
第二章 ままごとの家――不仲の夫、家でした娘、反抗的な息子、迷える妻。
第三章 さなぎの家――男に騙された女性と、幼い娘を抱えたシングルマザー。
第四章 夢喰いの家――不妊治療がうまくいかず、離婚届を書いた年の差夫婦。
第五章 しあわせの家――恋人が置いていった子供と、かつて父に捨てられた私。
エピローグ

 

次に読みたい本

見晴らしガ丘にて 完全版

近藤ようこの漫画。読後感はちょっぴり似ているかもしれない。