赤川次郎の『別れ道の二人』を読んだ。
私が小学生の頃から活躍していた作者は、一体今いくつ?と気になって調べてみたら、77歳。今でも現役バリバリで、2025年現在も複数の連載を抱える人気作家とのこと(下世話な興味で申し訳ない)。
それにしても、この人ほど息が長いわりに、なんとなく軽んじられている大作家はいないのではないか?
赤川次郎=サラッと読む、みたいな図式があるような。
でも、それも50年続けられたらたいしたもんだよね。この軽い、口当たりのよさで今までずっと売れ続けてきたんだから。やっぱり「分かりやすさ」って、エンタメにおける最大の強みなんじゃないかな。
難解な本を読んでいるほうが賢そうではあるけれど、無条件に楽しい読書は三毛猫ホームズで、ってなるよね〜。
ちなみに、赤川次郎は未だに原稿はすべて手書き、とのこと。ちょっと意外。
さて、オーディブルで何読もうかな〜。
『国宝』読みたいけど、長いしな〜。ちょっと気軽なものないかな〜と思って、久しぶりに赤川次郎でも、と聞き始めたこの本。
なんか、昭和のメロドラマみたいな(事実、携帯電話が普及していない時代の)お話。
出た、記憶喪失!って感じ。
親からずいぶんと年上の男との結婚を強要された紀久子は、それを嫌がって、付き合っていた栄治と駆け落ちをする。19歳と17歳である。
無計画に飛び出してきた二人は、道中で運よく(か、運悪くか)同じく逃亡中の母息子二人組と一緒に逃げることになる。紀久子は母親と親子のふりをして、栄治は息子と兄弟のふりをして。
だが、駅のホームで追手に気づき、思わず上りと下り別方向の電車に飛び乗ってしまう。
携帯電話がないのでお互いの行き先を確認できず、間の悪い事故が重なりまくって、二人は巡り合うことができず、7年もの歳月が経ってしまう。
スマホって、私たちに便利を与えたけど、ドラマを奪ったんだなぁ。
栄治が死んだと思い込んだ紀久子は、捨て鉢な思いで60過ぎのおじいさんの妾となる。
年上の男との結婚を嫌がって逃げたんちゃうんかい!とツッコミたくなるが、そこは――
いろいろな弱みに漬け込まれたのと、
「栄治が死んだなら、私も死んだも同然だ」とすべてを受け入れたからで、許してやってほしい(誰に?)
はぐれてしまった二人は、最後にやっと出会うのだが……私はてっきり、栄治の記憶が戻って、お互いにハグ!かと思いきや、なかなか思い通りにはいかず。
駆け落ちするほど愛してたけれど、今は別の道を歩み、互いに愛する者ができてしまった。お互いに今愛する人を大事にしようと約束して、ちゃんとお別れする。
良いエンディングであったと思う。
私なんか、クライマックスで栄治の妻子が逃げ回っている殺人犯に殺されて、栄治フリー!になるのかと勘ぐっていたのに。
勘が外れてよかったわ。
駆け落ちの最中に、思いがけずはぐれてしまった栄治と紀久子。栄治は不運にも事件に巻き込まれ、生死の境をさまよった結果、記憶を失ってしまい、別人としての人生を送りはじめる。
紀久子は一人の権力者に見初められ、断ることも出来ずその男に嫁ぐことになり、やがて男との間に子を成して母となる。
すっかり別々の道を歩むことになった二人だったが、やがてその道は再び交わることになり……。
運命に翻弄される男女の人生を描く、長編サスペンス。
