iCHi's diary~本は読みたし、はかどらず~

主に忘れっぽい私の読書録。最近はもっぱらAudibleで聞く読書

「ハイパーたいくつ」いわゆる怪作

松田いりのの『ハイパーたいくつ』を読んだ。

ギャルに筒井康隆が乗り移ったかのようなハイテンション小説。

なんだかとんでもないものを読んだ気がする。


会社に行きたくなくてしょうがない「私」は、通勤路で何回も投石などのたちの悪いいたずらを行い、事実上二度と通れない道がある。そのせいで、会社までの通勤時間が前よりずっと長い。

しかも仕事でも、信じられないような大ポカをして大迷惑をかけている。
自分で「迷惑系給料泥棒」と宣言するほどだ。

そんな彼女に、チームリーダーの女性はいつまでもやさしく接してくれるが、その他の同僚の目は冷たい。


ある日、チームリーダーが彼女のジャケットを予備動作なしに「素敵ね!」と突然はおり、ふざけてランウェイを歩く真似をし始めたところから、物語はどんどん暴走し始める。

チームリーダーはジャケットのボタンを弾け飛ばし、そのボタンを飲み込み呼吸困難になって救急車で運ばれる――のだが、翌日、病院から寝間着のまま出社。

そして「私」に向かって「ペンギンに似ててかわいい!」と、ペンギンのドキュメンタリー番組を見せてくる。

そこに映っていたのは、ちゃんと大人になりきれず、頭だけが雛鳥の産毛で、身体は大人になっている不格好なペンギン。「あなたにそっくり」と言い出す。そしてそのペンギン、ペンペンは、はじめての海で頭が重すぎて、そのまま死んでしまうのだ。


陰湿ないじめのようにも、そうではないようにも見えるが、とにかく「私」もチームリーダーもどんどん常軌を逸していくので、どっちもやばい人たちでよくわからん。

最終的には、大人になりきれていない「私」が、大人になんてなりたくないと「僭越ながら」思うのだが――

一方の不死身チームリーダーときたら、首にテントのポールが刺さった状態で、同僚のタンクトップマッチョおじさんの肩に乗って現れる。

人という字に横棒を足して、「大」。そしてその下に人。合わせて「大人」を体現しているのだ。


というわけで、僭越ながらAIに描かせてみたら、勝手に自主規制して「コミカルかつ不気味になりすぎないよう配慮」してくれた。

とにかく語り口が弾丸で、リズミカルで、コミカルで、面白い。
ラッパーの人たちが大絶賛しているのがよく分かる。


仕事って、こういう気持ちで取り組むのも、ありやねー。

 

 

大人

 

ハイパーたいくつ

迷惑系給金泥棒として職場で疎まれている「ペンペン」。鬱屈した毎日がついに限界を迎えたとき、壊れた言葉が壊れた風景を呼び起こす。リリカル系日常破壊小説、爆誕! 第61回文藝賞受賞作。

【選考委員 小川哲・町田康角田光代村田沙耶香、笑撃!】

『これは面白い』と感激した。物語がどんどん加速し、最後まで可笑しさや面白さが減速しないまま走りきっている。」――小川哲
「身体が変調する感覚、言葉への妄執、不潔への恐怖、狂気の反転、言葉による魂の放恣な垂れ流れ。
恐怖と笑いが同時に腹の底からせり上がってくる。」――町田康
こちらの予想をかんたんに裏切ってくる独創性がどんどんスパークしていく、その意外性がおもしろかった。」――角田光代
発狂ぎりぎりで瞼の裏側に現れる万華鏡のようで、どんどん鮮やかになっていく作品世界にのめりこんだ。」――村田沙耶香

【俳優・仲野太賀、ラッパー・TaiTan、激賞! 各界で話題沸騰!】

「壊れた感情が、もの凄い速度で事故ってる。
読後感は"瀕死"だった。
なんとか生きてる、まだ人間やれてる…

空いた口から出てきた言葉は『速すぎて、止まってみえる…即ちハイパーたいくつ…!?』」
――
仲野太賀(俳優)

言葉が勝手に“来る”。
読み手の眼球を突き破って“来る”。

その速度と乱暴さが気持ちいい。
超、面白いです」
――
TaiTan(ラッパー・Podcast「奇奇怪怪」パーソナリティ)

【日常から退屈を引き剥がすつもりが、なぜか服も人生もすべてボロボロに――】

職場では1000倍の支払いミス。私生活では高額な衣服の買いすぎでクレカ借金。62万円課金したジャケット姿は無様なペンギンに似ているから「ペンペン」呼ばわり。そんな日常がひたすら退屈。
「私は大人になれるだろうか。大人になれなければせめてペンペンとして溺れる姿をみんなに見せなくてはならないのだろうか――」
鬱屈アンド窮屈な現実がついに崩壊するとき、壊れた私の壊れた言葉が、壊れた風景を呼び起こす。
言葉が現実を食い破る、超現実アルティメット文学!

次に読みたい本

ここは退屈迎えに来て