本屋大賞・翻訳小説部門一位のの話題作「ザリガニの鳴くところ」を読んだ。
ノースカロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。6歳で家族に見捨てられたときから、カイアはたったひとりで生きなければならなかった。読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、彼は大学進学のため彼女を置いて去ってゆく。以来、村の人々に「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれながらも、彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと思いをはせて静かに暮らしていた。しかしあるとき、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づく……みずみずしい自然に抱かれた少女の人生が不審死事件と交錯するとき、物語は予想を超える結末へ──。
いや、これ良かったわ~
ミステリー要素もあるけれどメインは湿地の少女と蔑まれた女性の生き様が美しい文章で綴られていて感動する。
正直、あの男は死んで正解みたいなところがあるので全然「予想は超えない」。
なぜ彼が殺されたか動機は分かるし、誰が殺したかもわかった。
でもどうやって彼が殺されたかはわかんないまま終わるし、真相は死人の心の中のみ。
そのせいでらもしかしたらミステリーとしては凡作と思う人もいるかも知れない。
この本の読みどころは多分そこではなく、差別というものの根深さと怖さ。
主人公カイヤの成長と、湿地の美しさ、生き物の多様性などだろう。
カイヤの周りにはいい人は少ない。ただ、いい人の顔は見えているが彼女を攻撃する悪い人たちはもやもやと、あまり個性がない。というより村全体の悪意、みたいなものを感じる。
最後、霧が晴れるように彼女のことを見て見ぬふりができなかった良心のある人たちが明らかになる。
カイヤは美しい白人女性だ。アメリカの黒人差別の問題は深刻だが、まさか白人間にも格差があったとは。まずそこが驚き。
まあ、多様性が少ないと思われている日本に住んでいても、あからさまなものから陰湿なものまでたくさんの差別があるのだから、驚くことも無いのかもしれない。
とにかく、少女時代から家族から見放され、1人で貝などを売って生き延びてきたカイヤ。
そんなカイヤに文字を教え、生物学への彼女の興味を後押ししたテイト。
本当に、何度もここでこの話が終わってくれればいいのに思う。
テイトと出会ったとき、カイヤの才能が認められ本が出版されたとき、兄が帰ってきたとき、テイトがもう一度やり直そうと言った時、
たくさん幸せになれそうな分岐点があるのにその度、無情にも殺人事件のパートに押し戻される。
でも、最後の終わり方はすごく良かった・・・
翻訳っぽい持って回った言い方とかも少なくて、とても読みやすく美しい文章で
湿地の生き物に対する描写も繊細で美しい。
作者や本物の生物学者だ(さもありなん)
今回は、オーディブルの無料お試しキャンペーン(2回めだけど)で読んだ。
というか聞いた。
やっぱり耳で聞くならKindle読み上げよりオーディブルよね。
場合によっては単行本一冊より安いからコスパは思ったやり悪くない。
Audible (オーディブル) - 本を聴くAmazonのサービス
声優の池澤 春菜さんの落ち着いた声もすごく良かった~~
この人、池澤夏樹さんの娘さんなんだねぇ~ふむふむ繋がりますなぁ
なんと、第20代日本SF作家クラブ会長ですって。