iCHi's diary~本は読みたし、はかどらず~

主に読書録。読み終えた本がこのまま砂のように忘却の彼方に忘れ去られるのが申し訳ないので、書き留める。要は忘れっぽい読者の読書日記。

ポラリスってなんだ?「きみはポラリス」

ポラリスってなんだ?!(ポラリスとは北極星のことらしい)で始まるこの本は、三浦しをんさんの書いた恋愛小説短編集。

といっても、少々ひねってあって広い意味での愛というか、様々な「関係」が描かれています。なるほど、変わらず輝き続ける星だね。

例えば、幼なじみの大学生同士の一方的な感情。さらに言えば同性同士だが、これは彼女の本を読んでいればあんまり珍しくないな~ っと思っていたら、

例えば母親と息子の関係。姉と弟の関係や、女の子同士、猫と飼い主、亡き恩師との関係、フリーターの彼氏との関係。
列挙すると、とんでもないタブーを書いた小説みたいですが、ぜんぜんさわやかでございます。

「裏切らないこと」では母と息子の関係は父親の視点から語られます。

息子が生まれて何となく疎外感を抱く俺。
母親にとって息子は特別な存在なのかな?とそれなりに愛されていたはずなのに、愛情の配分が変わり、なんだかいつまでたっても「心を許した他人」から昇格できないような気分がしています。
この気持ちよく分かるわ~。私の母親も、私よりも弟の方がより執着、というかより世話をやきたくなるようで、死んで守護霊になったら息子側にいくような気がする。

そして、私も長男がチョコレートとかもらってきたらどう対応するか、とか嫁がイヤなやつだったらどうしよう。などと今から心配してしまう。

ちなみに息子はまだ生後四ヶ月だ。

一方、娘達が「この人と結婚します」と連れてくるのは、いい人だといいナ 位だ。

なんなんだこの差は?

旦那の娘達に対する甘すぎる対応を見てても、肉親で異性というのがミソなのだろうと思う。でもこの本の主人公俺は最後にこう思う。

……(略)俺は自分がどうすればいいのかを、もう知っているから大丈夫だ。
君たちを決して裏切らない。だから安心して、きみたちもだれかを愛すればいい。裏切られ、傷つくことがあっても、恐れずに他者を愛するといい。俺は態度で、俺の大切な家族にそう示しつづけるだろう。

全11編あるこの短編集ですが、どれも読後感がさわやかで、前作「秘密の花園」なんかとはぜんぜん雰囲気が異なります。

最後に「優雅な生活」という、玄米食にヨガやって、ロハスな生活をしようと考える「さより」とフリーライターで居候の「俊明」の話から、一番笑っちゃった一文をご紹介

「(略)白米にかける男の意気込みって、あれいったいなんなの?」

きみはポラリス

きみはポラリス

著者:三浦 しをん

きみはポラリス