最東対地 の「耳なし芳一のカセットテープ」を読んだ。
物語の主人公は、怪談師の馬代(ましろ)。
彼はとある有名な怪談を追っている。それは「深夜のラジオから、突然『耳なし芳一』の琵琶語りが流れてくる。その音声を録音したカセットテープを聴くと、聴いた人に次々と不幸が降りかかる」というもの。
特に、目を負傷する、という怪談のディテールが「耳なし芳一」の物語と重なって、なんとも不気味。
しかし、馬代がこの怪談を調べれば調べるほど、奇妙な事実に突き当たる。
一時期はテレビでも特集されるほど有名だったはずなのに、この話を知っている人が驚くほど少ないのだ。まるで何者かの意思によって、情報が消されてしまったかのように。この「作為」めいた気配こそが、物語のゾクゾクするポイント。
生きている人間が怖い……?
主人公の馬代は、霊的な現象には常に懐疑的で、いつも軽口を叩いている飄々とした人物。
「幽霊よりも生きている人間の方が怖い」と嘯く彼ですが、この怪談に隠された、とてつもない悪意にロックオンされてしまい、びびりあがる。
マシロの超クセ強なキャラクターが怪談なのに笑えて魅力的にしている。
特に印象的なのが、彼のチョコレート好き。「私も!」なんて生半可なレベルではない。晩御飯がチョコモナカジャンボとガルボだ、なんていうのだ。
ちなみにAudibleで聞くとカセットテープを再現した部分が聴くのを公開するほど迫力ある。「ほ~いち~、ほ~いち~」と亡霊が芳一を探して歩くシーンとか、夜中にあまり聞きたくない感じ。
なんで誰も、この話(怪談)を知らないんだ?
これは、実話を元にしたホラー……。
1980年代、人気ラジオ番組を録音していた男子高校生のラジカセから突然流れてきた、「耳なし芳一」の琵琶語り。その後このカセットテープを聞いた人には、次々と不幸が訪れた――。【耳なし芳一のカセットテープ】は、テレビでも取り上げられたほど有名な実話怪談のはずだった。なのに、誰も知らない。不思議に思い調べ始めた怪談師・馬代融が出会うのは、奇妙な偶然、とある冥婚の風習、そして強烈な悪意。果たして、この物語の行きつく先とは?
現実と物語が交差する、最恐の読書体験。
次に読みたい本
耳なし芳一は誰もそんなにひど目には合っていない、という一節を聞いて目からウロコ。
確かに芳一は耳こそ持っていかれたものの、その後「あの有名な耳なし芳一」として大人気琵琶法師となったらしいし。