今更だけど、2015年のこのミステリーがすごい 海外部門1位の「その女アレックス」を読んだ。(5年前か~)
なんか表紙の絵が怖くて、絶対残虐なシーンがありそう、と自主規制してたのだが、この間セールになっていたので3冊まとめ買ってみた。
(そういえば、そろそろこのミス発売じゃないかしら。年末のお楽しみ。
→調べたら12月頭発売の模様)
英国推理作家協会賞を受賞した大逆転サスペンス。貴方の予想はすべて裏切られる!
おまえが死ぬのを見たい――男はそう言って女を監禁した。檻に幽閉され、衰弱した女は死を目前に脱出を図るが……。ここまでは序章にすぎない。孤独な女の壮絶な秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進する。「この作品を読み終えた人々は、プロットについて語る際に他の作品以上に慎重になる。それはネタバレを恐れてというよりも、自分が何かこれまでとは違う読書体験をしたと感じ、その体験の機会を他の読者から奪ってはならないと思うからのようだ」(「訳者あとがき」より)。未曾有の読書体験を、貴方もぜひ!
いやーさすが史上初6冠だわ。面白かった。
敬遠せずに読めばよかった。久々にアップダウンの激しい楽しい読書体験だった。
アップダウンが激しい、というより物語の視点が章ごとに犯人からの視点、警部からの視点、くるくると入れ替わって忙しい。
しかも、フランス語の名前でさーぞや読みづらかろう、と思いきやこれが本当にわかりやすくて驚く。
(とはいえ、残念な私の脳はルイ=類、アルマン=有満、マレヴァルに至っては前原とかってに脳内命名して乗り切ったのだけど。)
さて、「話題作のその女アレックスの前に、悲しみのイレーヌを読むべし」
読めばよかった!
出版順が逆やんけ!
などのレビューを読んでいた私はきちんと、悲しみのイレーヌから読んだ。
週刊文春ミステリーベスト10 2015年海外部門 1位!
コニャック・ミステリ大賞など4つのミステリ賞を受賞!
異様な手口で惨殺された二人の女。カミーユ・ヴェルーヴェン警部は部下たちと捜査を開始するが、やがて第二の事件が発生。カミーユは事件の恐るべき共通点を発見する……。ベストセラー『その女アレックス』の著者が放つ衝撃作。あまりに悪意に満ちた犯罪計画――あなたも犯人の悪意から逃れられない。
これね、タイトルがあかんと思うのよ。それから、表紙こわすぎ!
イレーヌは、主人公カミーユの妻の名前なのだが、とても魅力ある女性。
でもタイトルにある通りこの人がきっと酷い目に遭うのかな、と思ってしまう。
彼女が魅力的に描かれていればいるほど、いつ悲劇が訪れるのか予感しながら読むしかなくなってくる。
この話も壮大な仕掛けがあって、ネタバレしようにも難しいというか・・・
もう一度読み返したくなること必須なのである。
ここから先はネタバレなので未読かつ記憶力の良い方はこの一文は読まずに飛ばしてください。
犯人が誰かわからない、のはミステリーなのだから当たり前なんだけど、それにしても後半からのぬぐえぬ違和感。
なんと、今までの物語の一部は小説家の犯人の書いたものだったのだ。
どこからどこまでが、犯人の書いた物語なのか読み返せばきっとわかるのだろうけど、とにかく、今まで読んでいた感じの良い女性のイレーヌと憎めない男カミーユもすべて「本当の」イレーヌとカミーユではないと明かされるのだ。
読みながら二人のことが好きになっていた読者はものすごくはしごを外された気分を味わう。
とにかくパンチのある後半戦のためにぜひご一読を。としか言いようがない。
そして、「その女アレックス」
こちらも、章ごとに語り手が変わっていくので、視線がポンポン変わる。
この物語の秀逸なところは、アレックスという女が
被害者→加害者→被害者と変わっていくところ。
これ、少々ネタバレになってしまうのだが、私の説明する力が拙いだけではなくて、どんだけネタバレをしても、読んだら衝撃を受けると思う。
とにかく、最初誘拐されてひどい目に合うアレックス(結構残虐シーンありでこわい)がかわいそうでしょうがない。
でも、だんだんアレックスの賢さと強靭な精神力に舌を巻き始める。
そして、脱出に成功した後のアレックスは警察に通報するでもなく不可解な行動に出る。
それから、だんだん怪物のような背景が立ち現れるのだが、それはすべて意味のある行動であったことがわかる。
それにしてもアレックスの過去はかわいそうでしょうがない。
こんな終わらせ方を選んだ彼女は本当に賢い女性であったろうと思う。最善ではなかったかもしれないが。
すべて、意味が、あった。
読了後、こんなため息がでる作品だった。あんまりおもしろかったので、3部作の最終話も読んだ。
週刊文春ミステリーベスト10 2016 海外部門1位!
カミーユ警部の恋人が強盗に襲われ、瀕死の重傷を負った。一命をとりとめた彼女を執拗に狙う犯人。もう二度と愛する者を失いたくない。カミーユは彼女との関係を隠し、残忍な強盗の正体を追う。『悲しみのイレーヌ』『その女アレックス』の三部作完結編。イギリス推理作家協会賞受賞、痛みと悲しみの傑作ミステリ。解説・池上冬樹週刊文春ミステリーベスト10 2016 海外部門1位!
カミーユ警部の恋人が強盗に襲われ、瀕死の重傷を負った。一命をとりとめた彼女を執拗に狙う犯人。もう二度と愛する者を失いたくない。カミーユは彼女との関係を隠し、残忍な強盗の正体を追う。『悲しみのイレーヌ』『その女アレックス』の三部作完結編。イギリス推理作家協会賞受賞、痛みと悲しみの傑作ミステリ。解説・池上冬樹
カミーユは、この三部作の主人公。腕利きの刑事だが140センチ台の身長しかない。
事件で最愛の妻を亡くし、息あう捜査班のメンバーもとうとう二人も減ってしまい意気消沈中。
いきなりアルマンが死んでしまったのはびっくりした。
しかも冒頭から病死の葬式シーン。犯人に撃たれたとかじゃないから。
アルマンがいないことで、捜査能力が下がるっていう伏線なのか?今回の事件の捜査も超難航。
それにしても、カミーユがかわいそうすぎるでしょ。
犯人も、それはひどすぎるでしょ、と思った。
この事件の真犯人はカミーユのことを過大評価、というかお父さんだと思っているね。
お父さんならこれくらいわかってくれる、お父さんなら、おとうさんなら・・・というコンプレックスのせいで「大人は傷つかない」と思っている子供のようにカミーユを傷つけた。
いやー、3部作の最終話ということでこれも期待を裏切らぬ面白さだった。
三冊連続読めば間違いなくこのちょっとひねくれた、絵のうまい、背の低い、はげかけた(でもちょっといい男の)カミーユのことが好きになってしまうに違いない。
やっぱり、このミス1位はおさえとくべきだったな。と改めて思い知った。
毎年買ってはいるんだけど、今年も買うしかなかろーもん!
きゃー今年はコナン君が表紙だ。予約完了~