iCHi's diary~本は読みたし、はかどらず~

主に読書録。読み終えた本がこのまま砂のように忘却の彼方に忘れ去られるのが申し訳ないので、書き留める。要は忘れっぽい読者の読書日記。

「情無連盟の殺人」まだこんなトリックの余地があったか!

タイトルに惹かれて浅ノ宮 遼、 眞庵の書いた「情無連盟の殺人」を読んだ。

 

読み終わって知ったのだが、二人組の医師によって書かれたミステリー

 

おお。二人組のミステリ作家といえば古くはエラリー・クイーン、新しくは(いや新しくないか)岡嶋二人。二人だからこそ色んな視点からみたプロットとか作れるのかもしれない。

 

さて、このミステリ、ひとりでも頭のいい医師が二人がかりで書いたもんだから確かに超ロジカルだった。

 

密室?の不可能犯罪なんてもう新しいパターンなんて滅多なことではでてこないだろうと思っていたけど、いやーおもしろい。こんな隙間をついてくるのかー。

 

ネタバレにならない程度に言うと、この「情無」という、厄介な病気に掛かった人だからこそ成り立つ犯行なのだ。

 

「情無」は「じょうなし」と読まれていたが、感情が全く消えてしまうなんとも奇妙で厄介な病気。

 

この病気にかかった人は、嬉しいことや悲しいことだけではなく、恐れもない。

ただ、生存本能だけに忠実に淡々と生きていく。

 

彼らは美味しいものを食べたいという気持ちもないので、皆一様にプロテインのような「流動食」を三食たべて、それだと咀嚼能力が落ちるからと食後にはガムを噛む。

適度な運動と平等に割り振られた労働を行いながら、共同生活を送っている。

 

怖いのは、何の感情もないので「自分が死ぬこと」と「他人が死ぬこと」も同列に語るのだ。
病気であることがわかった同居人が今後どうするべきか、という話し合いでは、「自殺に見せかけて殺すのはどうでしょう」などと本人の前で提案したりする。その本人も、自分が死んだほうがよいと理詰めで納得できれば、それも受け入れそうなのだ。

 

この、「情無」達が集まって住む屋敷で起こった殺人事件は、「情無」だからこそのトリックで密室になる。

 

彼らは科学捜査の証拠等よりもあくまで「理詰めでスッキリ説明できるかどうか」だけを重んじている気がする。

 

誰が犯人か、に焦点を絞った犯人当てゲーム何だけど、正直真剣に聞いていたとしても私の頭ではわかんなーい。とさじを投げたくなる。

 

これは、きっと頭の中でチェスができるような賢き者共にしかわからないやつかもしれない。

でも大丈夫、最後はきちんとなるほど!と思える程度には噛み砕いてもらえる。

 

残念ながら、スッキリ解決はしたけど犯人を逮捕することはできなくて、戦いは続く的な終わり方だった。結構いっぱいお亡くなりになったので、もう少し勧善懲悪なかんじでも良かったかも。

 

いやしかし、まだこんなトリックがあるんだーと思うとワクワクする。

(このミスに食い込んでもいいじゃないですかね?これ)

これの第二弾っていうのは難しいかもしれないが、ぜひ二人で力を合わせて次のびっくりを読者に仕掛けてほしい。

 

 

 情無連盟の殺人

あらゆる感情が失われている人々の中でなぜ殺人が起きたのか?
真相は五十七通りの中にある!
現役医師コンビによる、本格ミステリ

徐々に感情が失われていく病「アエルズ」に罹患した、元麻酔科医・伝城英二。空腹は感じるがそれを不快には感じない。うまくもまずくもないので、食べ物にも興味がなくなった。ファッションや人間関係についても同様だ。毎日同じ料理を食べ、人付き合いも最低限にして暮らしていた英二はある日、アエルズ患者八名が共同生活を送る〈情無連盟〉から加入の誘いを受ける。だが英二が泊まりがけで見学に訪れていたさなか、連盟員の一人が殺害されてしまう。不可能状況下、しかもあらゆる欲求を失い、怒りも悲しみも感じない「情無」たちが集う屋敷で、なぜ殺人事件は起こったのか? 現役医師であり、ミステリーズ!新人賞受賞作家である著者が相棒・眞庵と共作した、本格犯人当て長編。

 

次に読みたい本

境界の扉 日本カシドリの秘密 (角川文庫)

 

国名シリーズの内の一冊とな。私エラリー・クイーンちゃんと読んだことないんだよな。国名シリーズの「日本」ということで、なんて素敵な表紙。

 

国名シリーズの日本と言えば、待望の有栖川有栖の火村英生シリーズの方も最近でましたな。わくわく。

日本扇の謎 国名シリーズ (講談社ノベルス)