有栖川有栖の「マレー鉄道の謎」を読んだ。
スウェーデン館に続き、火村シリーズ二つ目の長編。
流石に長編は読み応えがある。
大学時代の友人がやっているホテルに訪れた二人。
大きな鉄道事故の車内から瀕死の男が電話をかけてくるところから物語は始まる。
せっかくの?海外だが登場人物は半分以上日本人のため、名前がわかんなくなった!とかがなくて大変読みやすい。
そして出てくる日本人は皆、どことなく怪しいそぶりを見せるのである。
それにしても今回の密室はなかなかの大物というか大掛かりというか、反則スレスレというか、さすが海外というか。
スケールがデカすぎてとても日本の街中でできる密室ではない。
そして犯人も、計画的に練り上げた犯行ではないくせに、何というか悪の反射神経が抜群に良いようで、やっちゃってから何とかしたというか。
帰国までのタイムリミットのある二人が、事件を解決できるのかハラハラしながら読んだ。
冒頭の死に面した男の最後の電話がこの時事件の口火となっているのだけど、そこはちょっとしたひっかけ、使用人はカウントされないの法則を逆手に取った伏線の始まり。
英国から来た作家という男も、良いとこなしで割と細やかで優しい有栖にすら見放されててちょっと笑った。
これも、そういう本格とされるミステリへのささやかな反抗なのかな?笑
これぞ、新本格?なのか。後書きで有栖はそんな括りはもう関係なくなったとつぶやいていたけれど。
確かに、もう新本格とか言われなくなった気がする。むしろ大御所やん!
あー面白かった。あんまり難しいこともなくて一気読みやったよ。
タイトルに入れた「鳴かぬ蛍が身を焦がす」は作中に出てきたフレーズ。
片思いをしている有栖たちの友人を評した都々逸から撮られた言葉。
粋だねぇ。