芦沢央の「汚れた手をそこで拭かない」を読んだ。
もうやめて……ミステリはここまで進化した!
第164回直木賞候補作。
ひたひたと忍び寄る恐怖。
ぬるりと変容する日常。話題沸騰の「最恐」ミステリ、待望の文庫化。
5つの短編からなるミステリー。
もうねー怖いっ!この人の本ほんと怖い。
お化けとか、怪異の怖さじゃない。
リアルに明日私にも起こりうる怖さだ。
どんな人も生きていれば一度や二度、と言わず間違った選択をしてしまうことがある。
もっと言うなら、軽犯罪にあたる?かな?くらいのレベルのことをしてしまうことだってある。
そんな時、誤魔化そうとしたり、ただ黙っていたりすることは誰にだってあるだろう。
それらが全て裏目裏目に出て、取り返しがつかなくなるとしたら、、、
きっかけが誰にでも起こりうることだけに、我が身がいたぶられるような恐怖がここにはある。
もうやめてーと何度口の中で呟いたことか。
読むのをやめたくなるが、ここで辞めても後味が悪すぎて辞められない。
このなんとも言えない怖さは私だけが感じたものではないらしく、レビューを見てもみな口を揃えるように、怖い怖いと書いている。
同士たちよ。
以下の5つの短編からなる本だ。
ただ、運か悪かっただけ
余命僅かな妻が名探偵だった話。
怖さ控えめ、良い話です。
埋め合わせ
ちょっとしたミスを、最初に報告して置けば良かったのに、気がつけば報告どころか、何とか隠蔽をするために四苦八苦。他のことで埋め合わせようとしただけなのに、より悪賢いやつに利用されてしまう話。
嘘がバラバラと剥げていく様はスリリング。人が死ななくても十分ミステリーは作れるのだな。追い詰められて行く気持ちがいたいほどわかる。
忘却
妻の認知症が徐々に進行する中、隣人が熱中症で亡くなる事故が起こった。
どうやら電気代を滞納で止められたためクーラーが切れてしまったようなのだが、これは督促状の誤配を隣に届けるのを忘れていた、妻の責任なのか?思い悩む夫。だが本当の理由はもっと別のところにあった。
お蔵入り
映画監督が、薬をやっている俳優をつい死なせてしまう話。
俳優の薬物疑惑が本当であればせっかく撮影した映画がお蔵入りしてしまう。そうならないためには、という話なんだけど、これも、罪を犯したことよりも、何とかしようと足掻く描写が続いて、胸が苦しくなる。
ただ良い映画を公開したいだけなのに、という気持ちがわかるだけになぁ。
ミモザ
この話が一番怖い。そして1番おすすめ。
なんでみんながこの小説が怖い怖いと言っているかがわかると思う。
元彼が数年ぶりに現れた。今の彼女は仕事も順調、愛する夫もいる。
見返すような気持ちもあり、成功している自分ならお金くらい貸せる、という所を見せたくて男の借金の申し込みを受けるが、借用書を盾に脅迫をされ始める。
メールを無視していたらなんと自宅にまで押しかけてきて…と、
この男ほんとに腹立つーーー!
と思うが、解決能力が無さすぎる主人公にもハラハラしっぱなし。
嗚呼なんであなたは、そう悪手ばかりを選択したの!
なぜこんなことをするの?ー女
悪いことをしたから悪いことが起こるとは限らないー男
酷いや!その理不尽が怖さの所以だろうか。
最後頼みの綱の夫も化けの皮が剥がれて、ほんとに怖っ!
まとめ
このタイトル、どこから来たのかなー
生きてるなら、全てが綺麗なままではられない。
手を汚すこともあるだろう。その汚れた手をここで拭かない。と言ってるのではないだろうか。
全てお見通しのお母さんのような感情で迫って来る感じ?
次に読みたい本
残念ながら、汚れイコールそれは人間ってくらい痛いところを責められた気分。
汚れつながりで「汚れっちまった悲しみに」が読みたい。