昭和初期に活躍した「無頼派」の代表的作家である坂口安吾の小説。初出は「肉体」[1947(昭和22)年]。通る人々が皆「気が変になる」鈴鹿峠の桜の森。その秘密を探ろうとする荒ぶる山賊は、ある日美しい女と出会い無理やり妻とする。しかし、それが恐ろしくも哀しい顛末の始まりだった。奥野建男から「生涯に数少なくしか創造し得ぬ作品の一つ」と激賞された、安吾の代表的小説作品。
前回、桜の樹の下には死体が埋まってるを読んだあと、なんかもやもやしていたのだが、多分2冊の本の記憶がごっちゃになっていたからだ。
いや、坂口安吾さんは美しい女性には恨みでもあるんかいな。
小説の舞台はおそらく室町時代とかのあたり。
満開の桜は不思議な魔力を持つとされ恐れられていた時代の話しだ。
無茶苦茶な山賊がある日一人の美しい女性を強奪してくるのだが、それが恐ろしい女だったという話。
女はその男にたくさんの人々の首を持ってこさせ、その首で人形ごっこして遊ぶのだ。
そこら辺の描写がグロテスクすぎてうへぇとなりがちだが、とにかくひどい。
最後、結局男は女が鬼だと気付き桜の木の下で絞め殺してしまうのだが、絞め殺した死体は鬼ではなくやはり女だったのだ。
女が鬼だったのか、それとも桜が鬼に見せていたのだろうか。
何かを考えることをいつも途中であきらめてしまう男は、これからどうなっちゃうのだろうか。
十分悪逆非道なことをしてきたのだからしょうがないんだけど、知らなかったことを知ってしまったがゆえに男は不幸になったのだろう。
桜にまつわる2冊の本だが、梶井基次郎の桜は透明感のある怖さ。
坂口安吾の方は血なまぐさい、こってりした怖さがある。
何にせよ桜は怖いのである。
花の下で宴会をするようになったのは江戸時代かららしい。