阿津川 辰海の「透明人間は密室に潜む」を読んだ。
初読みの作家さんだが、最近よく名前をみかけるなーと思っていた。
透明人間による不可能犯罪計画と、意外すぎる動機。裁判員裁判×アイドルオタクのアクロバティックな法廷ミステリ。録音された犯行現場の謎と、新米探偵のささやかな特技。クルーズ船内、脱出ゲームのイベントが進行する中での拉致監禁――。一編ずつ、異なった趣向、違った設定で作り上げられた、絢爛多彩、高密度の短編集。『紅蓮館の殺人』のスマッシュヒットで注目をあつめた新鋭が、本格ミステリの魅力と可能性に肉薄する。
今年の「このミステリーがすごい!」の国内第2位。
4つの短編からなる本なのだが、とにかく表題作「透明人間は密室に潜む」
はそのまんま、透明人間がいる特殊設定世界でいかにロジカルに犯行を暴くかの話。
実際には、透明人間がいる、のではなく人体が透明化する病気が蔓延した世界。
私だったら透明人間なったら、誰からも見咎められないのをいいことに、ケーキ屋だのなんだの入り込んで無銭飲食する、ただで映画をみる、心ゆくまで立ち読みをするなど軽犯罪くらいしか思いつかない。男湯も女湯も見たくないしなぁ。
しかし、よくかんがえればわかることだが、透明なのは身体だけ。
好き放題できると思ったら大間違いで、服を着ていれば透明人間の利点などないから、まず全裸で移動しないといけない。
そして人体以外は透明化しないので体内の食べ物が徐々に消化されるながら出口に向かってに流れていく様子は丸わかり。
全てを消化して、全裸になってやっと見えない状態になるが、物理的に存在していることには変わりないので、車には轢かれる危険性もあり、人混みは危なくで歩けない。
というわけで、特殊設定でありながらもその病気が蔓延していること以外は極めて真っ当で、ファンタジー要素はないのだ。
(むしろ、犯罪を企ててでもいない限り透明は不便でしょうがないらしい)
いや、しっかりしている!透明人間とか言い出してるくせに説得力があるというか。
それ以外の短編も、アイドルオタクばかりの陪審員とか、耳がものすごくいい新米探偵、そして、クルーズ船で行われる脱出ゲームなど、
内容的にはお笑い要素アイテムが集まっていて、コミカル路線になりがちなのに、なぜか全体的にまじめな語り口なので、これって笑っていいんだよね?と周りを見渡したくなるような話。
不思議な読後感なんだよあー
というか、表紙のイメージが固すぎないかなー
もう少し砕けたPOPなイメージで売った方がいいんじゃないかなー
いや、ギャップも狙っているのかしら?
さすがこのミス2位!面白いのに少しもったいないと思ったのだった。
おこもり年末年始にみなさまもぜひ。