大学を休学し、伯父の古書店に居候する菅生芳光(すごう よしみつ)は、ある女性から、死んだ父親が書いた五つの「結末のない物語(リドルストーリー)」を探して欲しい、と依頼を受ける。調査を進めるうちに、故人が20年以上前の未解決事件「アントワープの銃声」の容疑者だったことがわかり――。五つの物語に秘められた真実とは? 青春去りし後の人間の光と陰を描き出す、米澤穂信の新境地。精緻きわまる大人の本格ミステリ。
どのようにも受け取ることのできる終わり方というか、結末を読者にゆだねる物語をリドルストーリーというらしい。
正直、ストレスがかかるのでやめてほしい気もするが。
この小説はなんと5つの作中作がすべてリドルストーリで、どのようにも受け取れるその小説を探す古書店の青年の話。
その青年がまた辛気臭い事この上ないというか、単純な人には少し難しいというか、ちょっとひねってひねってひねり上げた作品というイメージだ。
だからと言って、面白くなかったわけではない。後半は一気に読み終えた。
父の死で学費を工面することができなくなった青年「芳光」は、大学を休学し叔父の古書店を手伝っている。
しかし、積極的に仕事を覚える気もなく、かといって復学の目途も立たず、常にタイムリミットがあるような焦りを抱えていて鬱々としている。
くらい。兎に角くらい。
当たり前のように大学受験というけれど、お金がなければ学ぶこともできないわけで、なまじ優秀な大学に入ってこれから、という時に休学しなくてはならなくなったら、そりゃ暗くなるわなぁ。
無軌道に犯罪を繰り返すよりよっぽどいいけども。
さて、芳光は「全く小説謎書きそうにない亡き父が書いたとされる小説」を探すよう、ある女性から頼まれ、一つ一つそれを見つけていくわけだが、その小説には仕掛けがある。
小説家は、結末だけを自宅の文箱に隠していたのだ。
結末の一文のみがわかっている小説を一つ一つたどりながら見つけていく古書探しのミステリー
誰かが殺されたり派手なアクションがあるわけでもないが最後まで結末がわからず(というか、正直読み終わってもいまいちわからず)面白い。
そう来たか、と思うはず。こんな謎の仕掛け方もあるのだなと。
そして、読み終わったとき本を閉じながら結局すっきりしなかったと私は思うのだ。
この作者の話はいつもそうだ、とも思う。面白かったんだけど最後に突き放されるというか。
なんというか、シンプルじゃないんだよな。そこがきっと人気の秘密だと思う。
読書の秋、チョイっとひねった話が読みたい方におすすめ。
買ったのは夏だが(ナツイチフェアで買った。そして買うときは勝手に死体を切断するミステリーだと思っていた)私もたいがい心が汚れているなぁ。