横溝正史の「真珠郎」を読んだ。
鬼気せまるような美少年「真珠郎」の持つ鋭い刃物がひらめいた!浅間山麓に謎が霧のように渦巻く。無気味な迫力で描く、怪奇ミステリーの最高傑作。他1編収録。
美しすぎる美少年、名前は真珠郎。
彼は、世を拗ねてN湖のほとりに暮らす鵜籐(うどう)氏が、生涯をかけて復讐のために生み出した人間ウイルスという設定。
ありとあらゆる残虐な殺害方法を教え込まれた真珠郎は今でいうサイコパス、次々と起こる殺人は彼の仕業・・・なのか?という話
主人公、というか語り手はザ、好青年という感じの山名耕助(金田一とおんなじ名前や!)そして、探偵は由利先生こと、由利鱗太郎。
今回は蝶々殺人事件の時のようなワトスン役がいないからかなんだか由利先生の存在感が薄い。
初の由利先生シリーズ「蝶々殺人事件」 - iCHi's diary~本は読みたし、はかどらず~
最後もいいとこなしな感じで終わるしね。
とにかく耽美で、美しい風景の中でおこなわれる陰湿な殺人なんだけど、最後の締めくくりはこうなるしかないとはいえ、まったくハッピーエンドじゃなくて残念だった。
語り手の山名耕助が、かなり序盤からああ惚れちゃったな、ってわかってですね。
で、あの娘も多分惚れてるよね?それなのになぜ別の男と結婚しちゃうの?
しかも目に見えて不幸そうになっている彼女をどうすることもできずもんもんとする耕助。
ああ、もう少しだけ早く耕助が勇気を出していたら一連の事件そのものがなくなっていたかもしれないのに。
彼女と結婚した別の男こと「乙骨三四郎(おつこつさんしろう)」は「君を血旅行に誘わなければよかった」とのたまう。
この乙骨がなかなかひどい奴で、彼女と結婚したくせに全然幸せにしない。釣った魚に餌をやらないというか、まごうことなきクズ野郎。
営利目的の結婚とうそぶきつつも耕助に嫉妬している様子も見られる。
あとは、もうなんだかかわいそうすぎるんですよ。
そりゃね、ここまで殺人を積み重ねては「心を入れ替えて好きな人と結ばれ、幸せに暮らしました」ちゅーわけには行けませんわ。
終わり方も耽美で美しかった。耕作が死ななくて本当に良かった。
しかし最後犯人はあんなところで暮らす必要はあるのだろうか?
さっさと高跳びしてしまえばよくないか?と思っちゃった。なまじゆかりのある土地にとどまるから見つかるんじゃーん!
興奮してとりとめもないことを書いてしまったが、美しすぎて凄絶な印象を与える真珠郎という存在がとても興味深い、おススメ!
ピーターで映像化してたんですって(小声)
確かに彼の昔の写真を見ると性別というものは壁や仕切りではなくなだらかなもので、美しすぎるということはすべてを吹っ飛ばすことがよくわかる。
ただ真珠郎をした画像は見つけきれず。残念。↓三枚目の写真です。