横溝正史の「仮面劇場」を読んだ。
由利先生シリーズ第2弾だ。
瀬戸内海のまっただなかに木の葉のように浮かぶ一艘の小舟。だが、その上にしつらえた大きなガラスの柩の中には、一人の美少年が身動きもせず横たわっていた! 助け出された少年が盲聾唖の三重苦とわかった時、ひどく同情した富裕な未亡人が彼を引きとった。しかし、それが恐ろしい連続殺人事件の発端になろうとは……。無気味な背景に潜む見事なトリック。横溝正史の傑作本格推理、他2編収録。
目も耳も不自由、しゃべることもできない三重苦の「虹之助」は驚くほどの美少年。
あまりにも美しすぎて何やら不気味さまで感じられる虹之助の周りで、人がたくさん死んでゆく。
まず、海上を漂う小舟に花にうずもれガラスの棺に寝かされ、さらには自分の位牌を抱いて危ないところを発見されるという登場のしかたがすごい。
ものすごく悪意にあふれて残酷、しかし絵的には抜群に美しい一幕。
由利先生は彼を助けたものの、なんとなく彼をかわいそうなだけの青年と思えず、ずっと注目しているのだが、それでも起こる犯罪。
それもそのはず彼の美しい容姿には、極めて自分勝手で残酷な精神が宿っていたのだ。
そうそう、横溝先生は定期的にこのテーマを書いている。
超絶美形の人物が実は、という話。
前回の真珠郎も超絶美形だったし。(あ、あと名前が変。っていうのも共通している)
今回は、周りが頭から目も耳も聞こえない彼を「最初から物の数に入れていなかった」という心理的なトリック、というかひっかけがあった。
なんとなく、これはこうよね、という思いで人は動きがちだからな、反省。
さて、今回は舞台にオリーブで有名な小豆島が出てくる。
小豆島観光協会【公式】より引用させていただきました。
オリーブ越しに眺める海。いいとこだな、行きたいね~
なんとなく、瀬戸内海の中でも明るくおおらかなイメージがある小豆島。
獄門島とかと同じ海域にあると思えない。あれ、獄門島は日本海だったかな??
ちなみに後2編は「猫と蝋人形」と「白蝋少年」で
ものすごーくざっくりいうと、
猫と蝋人形はケチでやきもちやきのマッドサイエンティストの話。
白蝋少年は、やっぱり美青年で性格がまごうことなきクズの話。
なんとなく、由利先生シリーズの良さがわかってきて、特に相方役の美津木俊介が、なかなかどうして、ぼんくらじゃないのである。
通常、ちょっとぼんやりのワトスン役を想像するけど、この相方はなかなか目端は聞くし職業も「花形新聞記者」とある。イケてるやつなんである。
由利先生だって、金田一と似ているようで似ていない。
金田一は見てないふりしてちゃんと見ていることが多いけど、由利先生は結構「由利がそのことに気づけなかったといって無理はない」みたいな感じで犯人に裏をかかれがちな気がする。
・・・悪くない!っていうか新鮮!
というわけで、しばらく由利先生シリーズを読んでいく所存。