iCHi's diary~本は読みたし、はかどらず~

主に読書録。読み終えた本がこのまま砂のように忘却の彼方に忘れ去られるのが申し訳ないので、書き留める。要は忘れっぽい読者の読書日記。

「卍」「秘密」「吉野葛」「陰翳礼讃」

谷崎潤一郎青空文庫を立て続けに読了。

 

それにしても、谷崎潤一郎のタイトルを検索するとまあまあきわどいビデオとかヒットするのでじわっとくる。

 

 

卍

 

 

何年前だろうか、マジ卍という言葉が流行ったのは。

こちらの卍は、一文字のこの言葉がいわゆるよつどもえに絡まりあった男女関係を良く表している。

四人の男女(女2男2)が出てくるにも関わらず、なんと全員か一人の女性に執着をしてしまうのである。

一人は美しく我がままな女。

二人は一組の夫婦。

そして残りの一人は女の元彼(だがただのストーカー)

よくぞこんな関係を考え付いたと思う。

チョット引くヨネ・・・ここらへんが谷崎は変態なんじゃないか疑惑を・・・いや、文豪捕まえて・・・

 

 

 おや、こんなマンガが。この表紙があらわしているように卍では「シスター」な関係も出てきます。

 
「秘密」

 

秘密

秘密

 

 なんだかいろいろ面倒くさくなった男が、今まで違う場所に引き込んでだんだん女装を楽しみだすのだが、その女装した格好で昔の彼女をみつけ思わず、袂に逢引の手紙を入れてしまう。

 

彼女は驚くほどの秘密主義で、彼と会うときは必ず目隠しをして自分の家を絶対に明かさない。

 

男は、女装癖のことなどすっかり忘れて女にのめりこむが、

ある日どうしても知りたくなって数少ないヒントを頼りに彼女の家にたどり着いてしまう。

 

秘密が秘密でなくなったらすっかり冷めてしまう。みんなもわかるでしょ?みたいな話。

分かるような気もしなくもないけど、そもそも女装してるやつの言うことなんかに何のシンパシーも感じない。完全な偏見であるが。

いや、そもそもこの人その彼女との別れ方もひどいんだわ。いい感じに言ってるけど。

 

吉野葛

 

吉野葛

吉野葛

 

小説のようなエッセイのような、ほっこりするいい話だった。

そもそも小説のネタにと思っていた地方へ、旧友から誘われて旅に出る。

そこで、聞いた話は彼のもくろんでいた小説を作るのには足りないものだったが、それよりも一緒に行った旧友の母親探しの話が興味深い。

そして、話が彼の嫁とり物語になっていくあたりがほほえましくて、今でいうキュンです。だ。

この言葉も何年もつかわからんけど。

 

盛んに出てくる吉野は、なんて素敵にジャパネスクの吉野の君とので出会いの場でもある。

 

 

 ひゃー懐かしい!!!

 

 陰翳礼讃
陰翳礼讃

陰翳礼讃

 

 これもエッセイぽい話。文豪になってしまった俺感がすごい。

(私もしかして谷崎の事嫌いなのかしらん・・・突っ込みが止まらんのよね)

どこでもここでも明るくしてしまったら、日本の美は失われてしまうのだ!という力説。

漆器に入ったご飯は薄暗いところで見るのが一番美しい、とか。

トイレ(厠って書いてたけど)は清潔でキリっとするくらい寒い方がいいとか。

注文がすごいけど、彼が家を建てたとき建築家が 陰翳礼讃を読んでることを知ってひそかに心配してたらしい。

ホントにあんなに薄暗い家を建てられたらどうしよう・・・と。

 

ま、そんなもんだよ!古き良き時代は懐かしんどくくらいがよろしいようで。

 

それにしても、どうせ読むならまとめてダウンロードできるこういうの買ってもいいかも、と思った。安いし。

 

で、この写真に毎回つまづくのである。書いている文章とのイメージの乖離・・・

 

 

これが文ストだとこうなる!

 

 

いや、何も言いますまい。

「三体・暗黒森林」~なぜ人類は宇宙人と遭遇できないか~

いやいや、さてもさてもスケールのでかいものを読んだ!

さすが、三国志西遊記を産んだ国だわ。

 

三体Ⅱ 黒暗森林(上)

三体Ⅱ 黒暗森林(上)

 

人類に絶望した天体物理学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)が宇宙に向けて発信したメッセージは、三つの太陽を持つ異星文明・三体世界に届いた。新天地を求める三体文明は、千隻を超える侵略艦隊を組織し、地球へと送り出す。太陽系到達は四百数十年後。人類よりはるかに進んだ技術力を持つ三体艦隊との対決という未曾有の危機に直面した人類は、国連惑星防衛理事会(PDC)を設立し、防衛計画の柱となる宇宙軍を創設する。だが、人類のあらゆる活動は三体文明から送り込まれた極微スーパーコンピュータ・智子(ソフォン)に監視されていた! このままでは三体艦隊との“終末決戦”に敗北することは必定。絶望的な状況を打開するため、前代未聞の「面壁計画(ウォールフェイサー・プロジェクト)」が発動。人類の命運は、四人の面壁者に託される。そして、葉文潔から“宇宙社会学の公理”を託された羅輯(ルオ・ジー)の決断とは? 中国で三部作合計2100万部を突破。日本でも第一部だけで13万部を売り上げた超話題作〈三体〉の第二部、ついに刊行!

 

あらすじを書くのも大変なSF超大作であった。

なにせ、まず登場人物の名前を正しく読めている自信がない。なまじ漢字なだけに。

ちなみに、私はずっと主人公「羅輯」の名前を「がしゅう」と呼んでいた。

だって、kindleがそう読み上げるんだもん。(ホントはルオ・ジーなんだね。上のあらすじを見て知る。

 

そんな、ちょっとどうかと思うレベルの読者でさえも十分惹きつけるエンタメばっちりの本書。

前作の一部よりずっと(分厚くて引くけど)読みやすくて面白い!

 

前作でも主人公をすくった史強兄さんが、めっちゃいい感じの人になっててイメージ一新。出てくるキャラクターの中では一番好きだ。


前作では悪役の似合う名脇役「白竜」のようなイメージだったが、

今作ではワイルドだけど本質を見抜く賢さを秘めた信頼おける兄貴分という要素が加わって、今「渡辺謙」くらいに格上げ。ステキ。

チョイスが共感を得られてないことはなんとなくわかる。

ちなみに白竜さんがわからない人のための参考はこちら

 

【投票結果 1~38位】悪役がハマる俳優ランキング!日本で最も悪人が似合う俳優は誰? | みんなのランキング

 

 面壁者に選ばれた羅輯の「妄想の恋人」を練り上げるシーン、面白かったなぁ。

それから、たった一人で三体文明と地球の命運をかけた取引を行うシーン、そのあと史強兄さんに、なぜ、人類が地球外生命と出会うことがないのかという「暗黒森林理論」を語るんだけど、かっこいいいしめちゃくちゃ納得。

 

なるほどね~~~

 

なんとなく、宇宙人はいないんじゃなくて出会えないだけだという話は聞いたことあるけど、簡単に言うと「地球はまだ見つけられてないだけ」らしい。

なぜなら、出会って即つぶしあわなければ生き残れないからだ。


敵がたくさんの暗黒森林でどうすることが一番生存の確率が高いか、と考えればわかるはず、友好的な関係を結ぶ理由がないというのが暗黒森林理論。

 

これ、ぜひ読んでみてほしい。

説明しきれないけど、ちょっとした衝撃を受ける。

 

他にも、未来の地球(地上では生きられなくて地下に樹状の社会を作っている)の描写や宇宙船の様子(すべての部屋は同じつくりの球体でどこでも必要なディスプレイなどが呼び出せる)とかワクワクする要素もたくさん。

 

未来の生活ではあらゆるものに映像を映すことができ、広告が表示される。

っていうのは筒井康隆のこの小説を思い出した。

静寂を手に入れるために無音のレコードを大枚はたいて買わないといけない。ってやつです。

 

にぎやかな未来 (角川文庫)

にぎやかな未来 (角川文庫)

 

 

確かに近い将来、広告はより特定の個人向けにキュレーションされていくだろうし、Googleグラスみたいなもので視界全面なんらかの情報が表示されつたけることも想像にかたくない。

 

 

この本によると、コンタクトレンズがディスプレイになる未来ももうすぐそこらしい。

 

こちらの三体では、眼鏡をかけてる人など居なくなってしまうらしいけど。

 

第一部の暗くてどんよりした雰囲気が第二部では、ワクワクするような未来を見せてくれて楽しい。

三体文明の力は圧倒的なのだが、それでもなんか希望がありそうなそんな終わり方だった。

 

こうなるとどんだけ厚くても第三部が待ち遠しい。

 

さてさて。最後に超私事だがまたしても今回のブログの下書きを消してしまった。

いえね、前作の感想も何故か消しちゃって、ショックすぎて半月ほどブログを更新できなかったんですわ。

たいしたこと書いてないっちゃ、ないんすけどね。

どうせ、難しかったーってことを書いてるだけなんだけどさ、何故三体についてだけ…何故か下書き保存を失敗するんだろうか…

 

はっ!智子?智子の妨害なのね!!

 

智子は三体世界から送り込まれた超小型コンピューターなのだが、詳しくはぜひ本書を。

「痴人の愛」ダメでもいいダメにおぼれたいあなたに

今まで文豪のくくりで名前は存じ上げていたが、ほとんど読んだことなかった谷崎潤一郎

いやね、最近金田一耕助読了しちゃって読むものなくてノマドなんですわ。

いろいろ手を出してみてるんですが、情熱を見いだせるものがまだ見つかっていない。

 

こんな時は青空文庫で名作よむぞ。ということで選んだのがこれ。

 

 

痴人の愛

痴人の愛

 

生真面目なサラリーマンの河合譲治は、カフェで見初めた美少女ナオミを自分好みの女性に育て上げ妻にする。成熟するにつれて妖艶さを増すナオミの回りにはいつしか男友達が群がり、やがて譲治も魅惑的なナオミの肉体に翻弄され、身を滅ぼしていく。大正末期の性的に解放された風潮を背景に描く傑作。

 

この本に関しては、読んだことなくてもこういうイメージなんじゃなかろうか?

 

痴人の愛

痴人の愛

  • 発売日: 2015/09/21
  • メディア: Prime Video
 

 

うん。馬乗りになられているのが主人公の河合譲二氏。そして上のお嬢さんがナオミ。

マゾですかな・・・マゾ以外何者でもないでしょうなぁ。

 

びっくりするくらい、この体勢の表紙が並ぶのでみなさまも、お暇であればAmazonで検索してみてほしい。

 

自分好みの女性を育て上げそれを妻としたいという、しょうもない望みを持ったエリートサラリーマン河合は、数えで15のカフェで働いていたナオミに目をつけ引き取る。

 

数えで15ってたら、下手したら13歳ですよー?

 

今なら完全なる犯罪だが、当時もくだくだしく理由付けをしているところを見ると、人から指をさされる行為であることには間違いなさそう。

 

そして、支配し育てるつもりが、徐々に浪費家で異性にも生活にもだらしがないナオミに完全に支配されてしまう。

 

理想の女性として育てていたつもだったが、ナオミは譲二が思うほど賢くもないし美しくもない何より品がない。

 

何度も裏切られて、それでも、ナオミから離れられず家出したナオミをしのんで、いつの間にか作っていた「マイ・ナオミメモリー(足の指とかまで写真を撮りまくっている)」を泣きながら眺めたり、ナオミの服を背中に乗せてお馬さんごっこをしたり・・・だ。

正直気持ち悪いけど、ナオミはその気持ちの悪い愛され方を利用したのか、それとも彼女も譲二なしでは生きていけないのか二人は結局別れることなく自堕落な生活を続けることを選ぶのだ。

 

とにかく、あらすじだけだといろいろ突っ込みどころが多い内容。

自分のことを「痴人」と言ってる時点で自覚のある堕落であるところが見て取れる。

 

それにしても源氏物語光源氏も同じようなことしてたけども、俺好みに育てる、ってそんなに魅力的なのか?他人、特に子供に人権はないと考えている時点で人としてアウト。向き合えよ。

ちなみに私の脳内キャスティングでは河合譲二はずんの飯尾氏。めちゃくちゃ似合う。

 ナオミは若いころの木の実ナナとかかな。

エキゾティックな顔立ちでちょっぴり獅子鼻。

 

 いろいろ検索していたら、こんなページを見つけたので共有。

トーチweb 評判すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。

現在公開中の作品に「痴人の愛」や「押絵と旅する男」などが含まれています。

水木しげるの絵柄で名作文学って、痺れる~~

 

 

 

「透明人間は密室に潜む 」今年のこのミス国内第2位!

阿津川 辰海の「透明人間は密室に潜む」を読んだ。

 

初読みの作家さんだが、最近よく名前をみかけるなーと思っていた。

 

透明人間は密室に潜む

透明人間は密室に潜む

 

透明人間による不可能犯罪計画と、意外すぎる動機。裁判員裁判×アイドルオタクのアクロバティックな法廷ミステリ。録音された犯行現場の謎と、新米探偵のささやかな特技。クルーズ船内、脱出ゲームのイベントが進行する中での拉致監禁――。一編ずつ、異なった趣向、違った設定で作り上げられた、絢爛多彩、高密度の短編集。『紅蓮館の殺人』のスマッシュヒットで注目をあつめた新鋭が、本格ミステリの魅力と可能性に肉薄する。

今年の「このミステリーがすごい!」の国内第2位。

 

このミステリーがすごい! 2021年版

このミステリーがすごい! 2021年版

  • 発売日: 2020/12/04
  • メディア: Kindle
 

 4つの短編からなる本なのだが、とにかく表題作「透明人間は密室に潜む」

はそのまんま、透明人間がいる特殊設定世界でいかにロジカルに犯行を暴くかの話。

実際には、透明人間がいる、のではなく人体が透明化する病気が蔓延した世界。

 

私だったら透明人間なったら、誰からも見咎められないのをいいことに、ケーキ屋だのなんだの入り込んで無銭飲食する、ただで映画をみる、心ゆくまで立ち読みをするなど軽犯罪くらいしか思いつかない。男湯も女湯も見たくないしなぁ。

 

しかし、よくかんがえればわかることだが、透明なのは身体だけ。

 

好き放題できると思ったら大間違いで、服を着ていれば透明人間の利点などないから、まず全裸で移動しないといけない。

 

そして人体以外は透明化しないので体内の食べ物が徐々に消化されるながら出口に向かってに流れていく様子は丸わかり。

 

全てを消化して、全裸になってやっと見えない状態になるが、物理的に存在していることには変わりないので、車には轢かれる危険性もあり、人混みは危なくで歩けない。

というわけで、特殊設定でありながらもその病気が蔓延していること以外は極めて真っ当で、ファンタジー要素はないのだ。

(むしろ、犯罪を企ててでもいない限り透明は不便でしょうがないらしい) 

 

いや、しっかりしている!透明人間とか言い出してるくせに説得力があるというか。

 

それ以外の短編も、アイドルオタクばかりの陪審員とか、耳がものすごくいい新米探偵、そして、クルーズ船で行われる脱出ゲームなど、

内容的にはお笑い要素アイテムが集まっていて、コミカル路線になりがちなのに、なぜか全体的にまじめな語り口なので、これって笑っていいんだよね?と周りを見渡したくなるような話。

不思議な読後感なんだよあー

 というか、表紙のイメージが固すぎないかなー

もう少し砕けたPOPなイメージで売った方がいいんじゃないかなー

いや、ギャップも狙っているのかしら?

さすがこのミス2位!面白いのに少しもったいないと思ったのだった。

 

おこもり年末年始にみなさまもぜひ。

 

 

青空文庫があるじゃないか!これ読んどけの10冊 ~文豪(ストレイドッグス)編~ 

あっという間に寒くなって、師走。いよいよステイホームもう一度の雰囲気になってきた感もある。

こんな時は本を読もうぜ!

お財布が軽かったり、なんかピンとくる本が見るからないときは青空文庫があるじゃないか!

 

しかし、何せ膨大な青空文庫の本を前にどれから手をつけるか、悩んでしまうそこのあなた。そして私。

 

そんな時は、「とりあえず名作やしこれ読んどけ」をいくつかダウンロードしおいてはいかが?

 

今回は文豪ストレイドッグスに出てくる文豪の作品を10作選んでみた。

 

 

いざという時に読めるように何冊かスマホに入れとけば、どんなに待ち時間が長かろうと、本屋にすらいけなくなっても何とかなる!

 

まずは、文豪ストレイドッグスのキャラクター表を。

私も全く読んではいないマンガだけど、この表紙に騙されて読み始めたっていいと思う。

 

 

bungo-stray-dogs.jp

 

今回選んだ文豪たちはコチラ

 

  

 

 

 

夏目漱石 こころ

こころ

こころ

 

 高校の教科書にも載っている名作といえばこれ的な作品。

ただ、教科書は一部抜粋なので全文通してよむとイメージが変わること必至。
難しいイメージもあるけど、読みだすと止まらない。

先生、なぜ今さら!と悶えたくなる。そして、かすかに香るBL的な香り。

100年近く前の人々も心の動きは変わらないのだなぁ。

というか、むしろ今のようにネットですべてを検索できるようになり簡単に発信出来たり、気軽なつながりが持てない分、ものすごく自分の中でこねくり回してしまうというか・・・

繊細な生き物(おじさん)をめでたい方には特におすすめ。

私の感想はどうしても妻から目線になっちゃうので

「そんな自分のことばっかり!」

って思っちゃうけど。

 

 

 

 

 

谷崎潤一郎 秘密

秘密

秘密

 

 秘密に溺れる男。一度、捨てた女をもう一度捨てなおす話。いろんな意味で非道なんだけど、そこも突き詰めちゃうところがすごいのかしら。

 

わからないから、知りたい。つまり執着する。執着は愛ではないので秘密がなくなればあっさり捨ててしまうことができる。
この男はきっと自分と自分をまとう布切れしか愛せないのかもな。

 

とにかく、女装に目覚めるときの描写が秀逸。

全く想像だけで書いたん?あんたも女装したんちゃう?と思わず作者に問いたくなる。

 

 

 

 

 

中島敦 文字禍

 

文字禍

文字禍

 

 中島敦といえば山月記だけど、こちらもおすすめ。文字の霊などというものがあるのだろうか?から始まる。サクッっと読める1冊。
(そしてサクッと忘れた・・・確かどこかで、めちゃおすすめされていたんだけど)

 

同じ文字をずっと見ていると「あれ?なんかこれってなんだっけ?」

 という気分になるアレの話。(ゲシュタルト崩壊っていうらしいのだが、川原泉のマンガではよくでてくるけど、実際に通常の会話では出てこないよねー)

 

 

 

 

 

夢野久作 瓶詰地獄

瓶詰地獄

瓶詰地獄

 

 今はやりの「意味が変わると怖い話」みたいな話。

瓶詰の手紙って、ロマンティックな仕掛けがに見えるけれども確かに中身は地獄でした。

最初の手紙のつたない文章のかわいらしさに胸が痛む。

オ父サマ。オ母サマ。ボクタチ兄ダイハ、ナカヨク、タッシャニ、コノシマニ、クラシテイマス。ハヤク、タスケニ、キテクダサイ。 

 ・・・それにしても二人しかいない島でどうやってあんな文章力を身に着けたのだろう?

 

 

江戸川乱歩 押絵と旅する男

 

 
押絵と旅する男

押絵と旅する男

 

 いろんなところで引用されている本作。

江戸川乱歩といえば人間椅子とかD坂も有名だけど、「本人だけ幸せそうないかれた人」という設定はこの時代の文豪の十八番なのかしら。

この間読んだ京極夏彦の「魍魎の匣」はこれのオマージュ(だよね??)

 

 

 

 

国木田独歩 武蔵野

 

武蔵野

武蔵野

 

 明治時代の武蔵野は今でいう高野山くらいのいやもっとか?東京から行ける

自然が豊かな場所というイメージなのか?
美しい文章で武蔵野の様子がつづられる。落ち着いた人が落ち着いた場所で読むといい。私のようにミステリー好きにはこんなに目撃者もいないのにだれ一人死なないなんてと思ってしまうのでよろしくない。

 

 

太宰治 葉桜と魔笛

 

葉桜と魔笛

葉桜と魔笛

 

 口笛を魔笛と書く太宰治のセンス!

2020年語でいうところのキュンです。なストーリー

老女の昔語りというていで話は進みますが、上品な語りの中に死に行く妹への思いが詰まっていて、ウルっとなる。

以前ラジオドラマで聞いたことがあって、その時もいいわーって思ったけど、太宰治だったか。

 

 

 

宮沢賢治 [雨ニモマケズ

 

〔雨ニモマケズ〕

〔雨ニモマケズ〕

 

教育番組で何回も何回も流れているので、何気に暗唱できちゃう人が多いかも。

 

褒められもせず、苦にもされないのは無関心だからじゃないのよ。

 

だって、そういうものに私はなりたいって言ってるんだもんなー。

 

現代のSNSに巣食う承認欲求お化けどもに爪の垢を煎じてあげたらいいと思う。

いや、お前もな!って言われそうだけど。

 

 

泉鏡花 高野聖

高野聖

高野聖

 

 こちら、私は水木しげるの漫画版で読んだ。いや、一応原文も読んだ。でもなんというか高潔で流麗な文章という感じ。

水木訳の方は怪しい美女むっちり感とかコミカルな一面がわかりやすくてが出てておすすめ。

つまりは、水木しげるが好きだ。

 

ichieda.hatenablog.com

 

 芥川龍之介 藪の中

藪の中

藪の中

 

 事件はすべて藪の中に葬られた、という言い回しを生んだとかうまないとか。

どっちが先か知らないが、だれが本当のことを言っているのか?

正解のないリドルストーリー。

あっという間に読めるし、いろんな人間を信じられなくなるお年頃にぴたりとはまるのでは?

 おわりに

 文豪ストレイドッグスに出てくるキャラクターの作品で、なるべく30分程度で読めるもので読んだことのあるものを拾ってきた。

夏目漱石 こころだけは、1時間では読めないけど、青空文庫アクセスランキングぶっちぎり1位だったので、とりあえず入れておいた。

谷崎潤一郎は、 痴人の愛と迷った!ナオミ出てくるしね。

唯一、国木田独歩だけが未読だったので、頑張って読んでみた。

それにしても、実在の人物の写真とアニメのキャラの違いがヒドイ。

いや、太宰治とか芥川はかっこいいんだけどねぇ。

谷崎潤一郎とかは見る影もないというかなんというかもにょもにょ。
まあ、だまされて読んだらいい!こんなきっかけで読んだっていい!

 

「遠野物語」謎のオシラ様に萌える

女は40を過ぎると着物が着たくなるというが、本読みは40歳すぎると、古事記とか、万葉集とか、遠野物語とかを読みたくものである。

  

・・・堂々と書いてみたが嘘だ。しかも40を過ぎたのは結構前だ。

 

京極夏彦をまとめて読んだら、急に遠野物語を読みたくなって青空文庫を読んだ。

なんか、民俗学学びたい気分。

 

遠野物語

遠野物語

 

 

現在の岩手県遠野市は、以前は山にかこまれた山間隔絶の小天地だった。民間伝承の宝庫でもあった遠野郷で聞き集め、整理した数々の物語集。日本民俗学に多大な影響を与えた名作。

 

面白いのは、どこどこのだれだれが実際に体験した不思議な話の集積という形でつまり「会いに行ける怪異」をまとめただけなのだ。

これって、上品な実録犯罪ムック本的な?ここまでではないか。というか、一緒にすんなか。

 

実録戦後 タブー犯罪史 (コアムックシリーズ)

実録戦後 タブー犯罪史 (コアムックシリーズ)

  • 発売日: 2006/01/20
  • メディア: ムック
 

 

でも、基本的には一緒なんだよ。 

誰かの祖父の知り合いがとか、今あそこに住んでるだれだれの祖先とか、まるで近所の人のうわさ話のように不思議な話が語られる。

 

そしてやはり気になるのは有名なオシラ様。

なぜか最近オシラ様が気になってしょうがない。なぜ気になるのかは全く説明つかないが、オシラ様について簡単に説明すると、有名なところでは千と千尋の神隠しにも出てきたが、実際には東北地方の家の神で、もっと雑に説明すると木の棒に布をかぶせたものだ。

 

 

ja.wikipedia.org

 

その姿は、千と千尋オシラ様とは全く異なる。

正直、モノクロ写真で見た私はぞっとした。

千と千尋のほうは、白くてふわっとして赤いビキニのような褌をはいた巨体ですよ。一瞬巨乳?と思われる口ひげが生えたやつ。。。といいつつ、絶対伝わらない自信があるのでリンク張っとく。一番でっかい白いやつがオシラ様)

amzn.to

 

さて、オシラ様は、 遠野物語の中では「馬娘婚姻譚」として有名。

短いのでこちら「いちのせき市民活動センター」さんよりで引用させていただく。

 

遠野の昔話「オシラサマ伝説(馬娘婚姻譚)」

 

 昔ある処に貧しき百姓あり。妻はなくて美しき娘あり。また一匹の馬を養ふ。娘この馬を愛して夜になれば厩舎に行きて寝ね、つひに馬と夫婦になれり。

 ある夜父はこの馬を知りて、その次の日に娘には知らせず、馬を連れ出して桑の木につり下げて殺したり。その夜娘は馬のをらぬより父に尋ねてこの事を知り、驚き悲しみて桑の木の下に行き、死したる馬の首にすがり泣きゐたりしを、父はこれをにくみて斧をもちて後より馬の首を切り落せしに、たちまち娘はその首に乗りたるまま天に昇り去れり。オシラサマといふはこの時よりなりたる神なり。

                          (「岩手・遠野伝承園」館内看板より)

 

ムホッってかんじでしょ?

ただ、青空文庫版は文語体で書かれているためすんなりとはわかりにくい。

 

というわけで、すんなりと読めそうな水木しげる遠野物語もゲット。

水木しげるの遠野物語 (ビッグコミックススペシャル)

水木しげるの遠野物語 (ビッグコミックススペシャル)

 

 

 座敷童、河童、鬼……生活の中から人々の想像力が生み出した妖怪が、今動き始める。妖怪の原点である柳田國男氏の名著を水木しげる氏がコミック化。日本妖怪史上最強の黄金タッグが実現。妖怪の里遠野紀行も併録。

 

f:id:ichieda:20201114141247j:image

こんな感じ。口語訳以上、もはや、水木語訳。ちょいちょい、水木さん本人も出てきて楽しい。

 

というわけで、ここまで来たら普通の口語訳も読みたいんだけどどっちにするかなー

やはりここは京極夏彦版かな~

とはいえ、高校時代に井上ひさしもかなり読んだので懐かしいなぁ。

 

 

 

京極夏彦のえほん遠野物語第二期(全4巻セット)
 

こんな絵本がシリーズで出ていたことは知らなんだ。

これは図書館チェックだな。 

 

新釈 遠野物語 (新潮文庫)

新釈 遠野物語 (新潮文庫)

 

そして、井上ひさし版。

ああ、この表紙はたぶん安野光雅・・・好きすぎる。

 

というわけで、謎のオシラ様熱を発している私だ。

なぜこんなにオシラ様が知りたいのかが解明したらまたブログをアップする。

はず。たぶん。知らんけど。

 

 

結末を作らないリドルストーリー「追想五断章」」

米澤穂信の「追想五断章」を読んだ。

 

追想五断章 (集英社文庫)

追想五断章 (集英社文庫)

  • 作者:米澤 穂信
  • 発売日: 2012/04/20
  • メディア: 文庫
 

大学を休学し、伯父の古書店に居候する菅生芳光(すごう よしみつ)は、ある女性から、死んだ父親が書いた五つの「結末のない物語(リドルストーリー)」を探して欲しい、と依頼を受ける。調査を進めるうちに、故人が20年以上前の未解決事件「アントワープの銃声」の容疑者だったことがわかり――。五つの物語に秘められた真実とは? 青春去りし後の人間の光と陰を描き出す、米澤穂信の新境地。精緻きわまる大人の本格ミステリ

どのようにも受け取ることのできる終わり方というか、結末を読者にゆだねる物語をリドルストーリーというらしい。
正直、ストレスがかかるのでやめてほしい気もするが。

この小説はなんと5つの作中作がすべてリドルストーリで、どのようにも受け取れるその小説を探す古書店の青年の話。

 

その青年がまた辛気臭い事この上ないというか、単純な人には少し難しいというか、ちょっとひねってひねってひねり上げた作品というイメージだ。

 

だからと言って、面白くなかったわけではない。後半は一気に読み終えた。

 

父の死で学費を工面することができなくなった青年「芳光」は、大学を休学し叔父の古書店を手伝っている。

しかし、積極的に仕事を覚える気もなく、かといって復学の目途も立たず、常にタイムリミットがあるような焦りを抱えていて鬱々としている。

くらい。兎に角くらい。

 

当たり前のように大学受験というけれど、お金がなければ学ぶこともできないわけで、なまじ優秀な大学に入ってこれから、という時に休学しなくてはならなくなったら、そりゃ暗くなるわなぁ。

 

無軌道に犯罪を繰り返すよりよっぽどいいけども。

 

さて、芳光は「全く小説謎書きそうにない亡き父が書いたとされる小説」を探すよう、ある女性から頼まれ、一つ一つそれを見つけていくわけだが、その小説には仕掛けがある。

 

小説家は、結末だけを自宅の文箱に隠していたのだ。

 

結末の一文のみがわかっている小説を一つ一つたどりながら見つけていく古書探しのミステリー

 

誰かが殺されたり派手なアクションがあるわけでもないが最後まで結末がわからず(というか、正直読み終わってもいまいちわからず)面白い。

 

そう来たか、と思うはず。こんな謎の仕掛け方もあるのだなと。

 

そして、読み終わったとき本を閉じながら結局すっきりしなかったと私は思うのだ。

 

この作者の話はいつもそうだ、とも思う。面白かったんだけど最後に突き放されるというか。

なんというか、シンプルじゃないんだよな。そこがきっと人気の秘密だと思う。

 

読書の秋、チョイっとひねった話が読みたい方におすすめ。

 

 

買ったのは夏だが(ナツイチフェアで買った。そして買うときは勝手に死体を切断するミステリーだと思っていた)私もたいがい心が汚れているなぁ。